ナイト・エニグマティック・ナイト #5

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より 「ナイト・エニグマティック・ナイト」♯5)

2011-10-29 21:30:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆重点◆親愛なる読者の皆さんへ、只今翻訳チームのTwitterクライアントが壊れたため、復旧を試みています。たいへんお世話になっております。もうしばらくお待ちください。◆重点◆

2011-10-29 21:47:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワンドフォー」「ハイク展示即売」「エキシビチョン」……漆を思わせる赤色に、白くかすれた極細ミンチョ体。真新しいPVCノボリが、古風なギャラリーの前ではためく。入口には黒スーツにサングラスをかけた厳しいSPが2人立ち、オープニングパーティーの入場客を会場内へと迎え入れていた。 2

2011-10-29 22:00:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

会場は1階建てで、広さは100畳ほど。広すぎず狭すぎず、キョート国民が愛する奥ゆかしいサイズだ。高い白壁にはショドーされたハイク作品が額に入れられ、数メートルおきに1つ並ぶ。中央部分には瀟洒なキョート風庭園が模され、白い砂利、赤い橋、傘、スシの盛られたチャブなどが並んでいる。 3

2011-10-29 22:05:54
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「素晴らしいハイクですね!」スーツを着たトリュフ豚めいた中年の男たちが、イダの周囲に群れ集っている「ハイスクールのハイク・コンペティションでも優勝だそうじゃないですか?いったいいつからハイクを始めたんですか?」。「そうですね、実際……」イダは勿体ぶって言う「2ヶ月くらいです」 4

2011-10-29 22:10:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「2ヶ月!」「ポエット!」「テンサイだ!」「ヤバイ!」周囲のトリュフ豚や、アメフト部の取り巻き学生たちが口々にイダを称賛する。イダはさも当然といった顔で、自分より20歳以上も上のカチグミサラリマンの一人に返した「それでアマシロ=サン、もうハイクはお買い求めになったんですか?」 5

2011-10-29 22:17:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エッ?!アッ!ハイ!もちろん、買うことに決めていますよ!あそこの角にあるやつ、あれがとてもいい!」アマシロは赤らんだ顔で、低脳なハイクをひとつ指差した。値段は100万円ほどだ。カチグミにとってはさほど大きな金額ではない。ここはイダ・グループに対する忠誠心を発揮する場なのだ。 6

2011-10-29 22:21:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それじゃあ皆さん、楽しい夜を過してくださいよ」イダがすっと手を上げると、取り巻きたちはすぐに散っていき、茶屋やスシチャブの周囲で新しいグループを作り始めた。ここは他業種のカチグミと親睦を深める、社交の場でもあるのだ。高校生からカチグミ重役まで、老若男女数十名がこの場にいる。 7

2011-10-29 22:26:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「坊ちゃん」SPの1人が近づきイダの耳元で囁く「ドクター・ハイクとかいう胡散臭い男がエントランスを通ろうとしていたので拘束しましたが」。「知らんな、何者だ?」とイダ。「身分素子をチェックしたところキョート国民です。数年前にアッパーのカチグミ企業をクビになり、アンダーにいます」 8

2011-10-29 22:30:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そいつが何だというんだ?」とイダ。「自分は大物で、金を払えばネオサイタマのハイク界に売り込むと言っていますが……」とSP。「イディオット!」イダは鼻で笑った「詐欺師か何かだろう。どこかで今日のプログラムを見て、スシを食いに来ただけだ。あわよくば金を騙し取ろうという腹だ」 9

2011-10-29 22:34:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私もそう思います」とSP「そもそも頭が狂っていると思います」。「じゃあ囲んで警棒で叩いておけよ、アンダーにも帰れない位な。僕は忙しいんだ」。SPはエントランスに向かう。くぐもった叫び声と打擲音が聞こえてきた。イダはネクタイを調え直し、彼を待つ女学生へと近づく「お待たせ!」 10

2011-10-29 22:39:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だいぶ私のことを待たせたわね」マイコチア部のソメヨだ。周囲に誰もいないのを確認すると、イダは健康的な笑みを浮かべてソメヨの耳元で囁いた「どうだい、すごい物だろう?僕のパワーは。この後、奥でファックしないかい?」。「いいわよ」とソメヨは逞しいイダの首に腕を回してキスをした。 11

2011-10-29 22:49:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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2011-10-29 22:51:04
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同時刻、アッパーガイオンの空。 13

2011-10-29 22:52:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一瞬だけコトダマ空間へとジャンプしていたレイジの意識は、アッパーの空へと戻り、薄気味悪い浮遊感を味わっていた。周囲にはヨモギ、万札、大トロ粉末、ハイクノート、クレジット素子……様々なものが猥雑に浮いていた。蜘蛛の糸は重みに耐えかね……切れたのだ。全てが自由落下を始める。 14

2011-10-29 22:58:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レイジのニューロンの中で、無数の記憶がソーマト・リコールした。自室で繰り広げられたサツバツの数々、ブッダパンクスのスカム禅問答、暗い部屋で暗黒ハイクを編む毎日、父親がカロウシした日のこと、あのモヒカンがやってきて母親が狂った日のこと……(((ふざけるな!ブッダめ!!))) 15

2011-10-29 23:02:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

落下速度が増す。逆さまの世界。頭上にカワラ屋根が接近する。レイジの胸に、コールタールのような闇が満ちる。それが編み上げられてハイクとなり、レイジの口から鴉の囁き声のように吐き出された。……次の瞬間、彼の体に黒い稲妻が落ちた。五重塔の上で、一人のニンジャがそれを偶然見ていた。 16

2011-10-29 23:11:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

CRAAAAAAAAAAAAASH!!!!凄まじい音を立ててハイク展示会場のカワラ屋根が破壊される!上空から降って来た男女の体が、白い砂利の上へと激しく叩きつけられた!遅れて舞い散る万札!「アイエエエエエ!?」「アイエエエエエエエエエ!?」ナムアミダブツ!会場はパニックに! 17

2011-10-29 23:18:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

仰向けで大の字に叩きつけられてから5秒後……レイジは突然、よろめきながら立ち上がった。サイバーパーカーはぼろぼろだ。周囲のざわめきが、リヴァーブめいて聞こえる。死んだのだろうか?と彼は不思議に思った。痛みをほとんど感じないからだ。あの高さから落下したのに。 18

2011-10-29 23:28:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

右手を見下ろした。手足が不自然に曲がった少女の死体があった。無慈悲なほど鋭くなった彼の耳は、LANケーブル伝いに心音停止を知り得たのだ。サイバーグラスも外れ素顔を晒したヨモギは、不思議と穏やかな顔をしていた。レイジのニューロンの奥がチリチリし、理由の解らぬ涙が頬を伝った。 19

2011-10-29 23:32:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

銃や警棒、サスマタなどを構えたSPたちがレイジの周囲を包囲していた。来客者たちは壁沿いへと避難しつつ、息を飲む。イダとSPの話す声がレイジの耳に聞こえた。「……おい、死んでるようだが、僕らに落ち度はないな?」「当然です坊ちゃん。どこかのアナーキストが飛び込んできたんです」 20

2011-10-29 23:39:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうだよな……ん?」イダはふと、立ち上がった軟弱そうな男の顔を見た。落下の衝撃で煤まみれだが、明らかにそれは同じ高校のフリーク、ナブナガに見えた。横で倒れている女も、フリークのヨモギではないか。見たところ、銃器の類は持っていないようだ。気が狂って投身自殺でも図ったか。 21

2011-10-29 23:44:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「…妙な動きがあったらすぐに撃てよ」「えっ、坊ちゃん何を?」余裕の笑みを浮かべたイダはSPに囁くと、カラテめいた構えを作ってナブナガ・レイジ包囲サークルの中へと入った。「皆さん!危険なアナーキストです!」イダが叫ぶ「ここは僕のカラテに任せてください!シュー!シュシュッ!」 22

2011-10-29 23:49:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

イダは後方にいるソメヨに爽やかな笑いを贈った。それからすぐに前を振り向き、アメフトじみたファイティングポーズで黒ずくめの闖入者へと近づいていく。ナムサン!だがレイジはぼんやりと立ち尽くしたままだ。「……おい、どうした?かかってこいよ!フリーク!」イダが小さく叫ぶ。 23

2011-10-29 23:55:26