ダークネス・ゲイシャガール・スクランブル エピソード2
永江は目を覚ますと日曜日の習慣に従い、大家である博麗霊夢の部屋へと上がり込んだのだった。 大家の部屋は永江と同じ間取りの四畳半だったが居心地が良く、住人達はパチンコに引き寄せられるナードの如く狭い部屋で会合するのが常で、永江と不良大学生によって占拠された状態にあった。
2011-11-03 05:13:01「酔ってたのさ」 パツキンバイトガール、霧雨魔理沙がニヤニヤと笑った。 「さもなきゃテレビの見過ぎか、だな」 四畳半に相応しい小さなテレビには、ニチアサ恒例のアニメ特撮番組のラッシュアワーが繰り広げられていた。ビートルめいたニンジャが、敵ニンジャにカイシャクを決めていた。
2011-11-03 05:16:06「どうせ永江さん、酔ってたんでしょう?」 長寿人気アニメ『ふたりは秘封倶楽部』のオープニングで霊夢は容赦なくテレビを消した。 「一体どこにボランティアで人助けする物好きな連中がいるのよ。面倒くさいし、お金もかかるし、危ないし――もし本当にいたとしたら金持ちの道楽よ。たぶんね」
2011-11-03 05:18:40「はぁ。それだけお金があるなら働かないで一日中ゴロゴロしときますけどね、私なら」 永江はそう言って炬燵机の上に置かれていた新聞紙を広げた。三面には『変質者、御用』――たびたび婦女子を狙った犯罪を繰り返していたヤクザが、荒縄でぐるぐる巻きにされてケジメされた顛末が記されていた。
2011-11-03 05:21:50日曜日の午後だというのに、やることもなく部屋でぐったりしている。もう少し生活に若さがなければこのまま干からびていってしまうのではないだろうかという若干の焦りはあるものの、今日も永江は平常運行であった。ヒモノめいた生活は女子力も奪っていく。ナムサン!
2011-11-03 05:24:53勉強の息抜きと称してやってきた地子も、部屋掃除をしてからはクローン・ヤクザを操作して銃弾をばら撒いている。lol。しかも持ち主である永江よりも断然上手くなってる。lol。マッポーめいたゲームを嗜むのも、現代日本が歪んでいる証拠なのだろうか。女子高生とは一体――。
2011-11-03 05:26:22「変質者が増えてるらしいよ」地子は画面から目を離さずに永江へと言う。クローン・ヤクザを操作しながら会話など、女子高生にとってはたやすいが、マルチタスクがめっきりできなくなった永江にとっては、自衰えを見せ付けられているようで、スルメマインドの持ち主でなければ耐えられなかっただろう。
2011-11-03 05:29:05「永江さんはそういうのに巻き込まれたことあるの?」 「ありますよ、えっへん」 「変質者に会ったってのは胸張るところじゃなくない?っていうか、あるんだ。へえ」 「最後はちびっ子にボコられてました」 「え、なにそれこわい」ゴウランガ!事実を話したというのにドン引き!
2011-11-03 05:30:14しかし、ドレスにマントのちびっ子カラテ使いと、懐中時計を持ったゲイシャ・メイド。アキバ・シティならまだしも、日本中どこにでもあるようなこの町では明らかに異質! そのことを正直に話せば、永江の神経すら疑われるだろう。地子はスゴイ・リアリズムに被れた女であるから、鼻で笑うだろう。
2011-11-03 05:32:43永江はタツジンめいた女子力を発揮し、その未来を回避することに成功した。一方その頃――身長は小学生で止まったゆえに140cm。鉄道料金は子供料金以外使ったことがないと豪語する御歳23歳のレミリア・スカーレット(彼氏居ない暦年齢)は、新聞紙を広げて鼻を鳴らした。低下する女子力!
2011-11-03 05:36:43御歳21歳、喫茶店の店長を任された瞬間趣味へ全力疾走して23歳児と取っ組み合いの喧嘩を繰り広げた女傑、十六夜咲夜(源氏名)に紅茶を淹れさせつつ、レミリアは足を机に乗せた。 「“奴ら”はまだ動かないの?」 分厚いウキヨ・オイラン本から目を離さぬ三人目の四天王。オソロシイ!
2011-11-03 05:40:36「ライフロータスガンダーラと、ムーンライトナイツのこと?」三人目の四天王、パチュリー・ノーレッジ(本名八里恵理子)は、ブンガク作品めいた婉曲さでため息を吐いた。レミリアのヤクザめいた所行に手を貸すのも、結構疲れるものなのだ。
2011-11-03 05:43:50「私たち、麻薬ダメ絶対カンパニーに加えたその二つ。マクドとスタバとヨドバシぐらいしかないどこにでもある郊外都市だけど、代々ここでシノギを取ってきた身としては新参共の跋扈を許すわけにはいかない」レミリアが仏舎利のような音を立てて机を叩く。「治安を守るのも大事なシノギを守るためだ」
2011-11-03 05:49:51「昨日助けた女性はどうも見覚えがある気が。うちの魔理沙の知り合いに」咲夜が小首を傾げて記憶を走馬灯しているが、上手く出てこなかったらしい。「とにかくだ。奴らが動く前にこの町の覇権がどこにあるかを知らしめなければ!」マッポーめいた表情のレミリア。しかし、彼女の悪行はスゴイ・ヤバイ。
2011-11-03 05:54:10小学生の通学路にエロ本を仕掛け、またあるときは万引きに手を染める中学生を説得し、またあるときはゲーセンでカツアゲをしている高校生からカツアゲをする。噛んだガムは道路に設置。ジーザス、まさにバッドレディ! そして彼女は仕掛けたエロ本を回収されてからライフロータスガンダーラを憎んだ。
2011-11-03 05:57:58しかしムーンライトナイツとの確執はそれなど比較にならない。まさにマリアナ。レミリアが終生のライバルを認定した蓬莱山輝夜は、ことあるごとにテッポウダマを送り込む。それによって最愛の妹は「お姉ちゃんキモいね」と言って遊んでくれなくなってしまったのだ……。去来するスゴイ・カナシミ。
2011-11-03 06:01:40