なぜ米国の医療保険はオワコンで、日本の医療保険は絶賛されているのか、の解説。

医療保険の仕組みの簡単な解説。これを読めば何でも民営化すれば安くなる!なんて恥ずかしい事言わないですみますよ。
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高須賀とき @takasuka_toki

これからどうして米国の医療保険がオワコンで、日本の医療保険が世界から絶賛されているのか、について書きます。

2011-11-15 23:36:35
高須賀とき @takasuka_toki

初めに保険というものの仕組みから説明します。保険は、基本的に確率学に基づいて加入者にやさしい仕組みを提供するようにできています。例えば心筋梗塞の治療に100万円かかるとします。これ、普通の人には軽々と払える金額ではありませんよね?

2011-11-15 23:38:28
ズイショ @zuiji_zuisho

そうだそうだRT @takasuka_toki: 初めに保険というものの仕組みから説明します。保険は、基本的に確率学に基づいて加入者にやさしい仕組みを提供するようにできています。例えば心筋梗塞の治療に100万円かかるとします。これ、普通の人には軽々と払える金額ではありませんよね?

2011-11-15 23:53:53
高須賀とき @takasuka_toki

ではどうすれば普通の人も心筋梗塞の治療費を簡単に払えるようになるでしょうか?答えはみんなでお金を予め出しあっておく、です。例えば1000人集めて全員が一万円、医療保険というプールに貯金しておきます。こうしておけば貯蓄が出来ていますので、誰かが病気になったら、ここからお金が出せます

2011-11-15 23:44:14
高須賀とき @takasuka_toki

病気というのは全員が全ての種類のものにかかるものではなく、何らかのめぐり合わせが生じた結果、突然かかるものです。保険という仕組は誰かの不幸を自己責任という風な形で押しつけるのではなく、このように基本的には助け合いの精神で成り立っています

2011-11-15 23:48:24
高須賀とき @takasuka_toki

では次に保険料の制定方法について述べます。勿論少な過ぎも多すぎもしない額を加入者から集めなくてはいけないのです。さてどうすれば適正な額を決めることが出来るでしょう?ここで使われる手法が確率です。例えば心筋梗塞の発症率が10%、治療費は100万円、加入者が1000万人だとします。

2011-11-15 23:52:41
高須賀とき @takasuka_toki

この時心筋梗塞にかかると思われる人は加入者の10%、つまり100万人です。という事は貯蓄しておかなくてはならない治療費は100万円×100万人分=一億円となります。これを加入者分で割ると一人あたり10万円となります。つまり10万円払っておけばいつ心筋梗塞にかかっても安心なわけです

2011-11-15 23:58:08
高須賀とき @takasuka_toki

これだけだと心筋梗塞しかカバーしないわけですが、こんな感じで全ての加入者の数分、全ての病気についてそれぞれのかかる費用を確率で掛けあわせておけば、一年間の医療費を算出することが出来る、という事はなんとなくわかっていただけたと思います。

2011-11-16 00:01:21
高須賀とき @takasuka_toki

ここから算出された金額から、保険を運営していただくお役人さんのお給料を上乗せして、保険料が決定します(実際の所はこれだと高すぎるので税金からいくらかお金が投入されて保険料はもう少し安くなります)一見こう書くと単純な保険の仕組みですが民営化などして参入業者が増えると一気に破綻します

2011-11-16 00:10:40
高須賀とき @takasuka_toki

何故か?それはこのような単純な仕組みで成立している最大の要因が、大数の法則という確率の法則が成り立つ元で計算されているからです。大数の法則とは一言で述べると統計的確率(試行を繰り返して求めた確率)は、真の確率に近づくということ、なんですけどこれだと難しいので簡単に書き直します

2011-11-16 00:14:00
高須賀とき @takasuka_toki

例えばサイコロを六回振って一が一回出る確率は理論上は六分の一・・・ですけど、実際はそうならない事の方が多いわけです(ある時は一が2回出るときもあるし、0回の時もあるわけです)しかしサイコロを振る回数を100000万回にすると、確率は限りなく六分の一に近づきます。

2011-11-16 00:19:09
高須賀とき @takasuka_toki

このように試行回数を増やすと理論上の可能性が現実の事象に限りなく近づく事を大数の法則、といいます。保険の場合加入者が例えば10人しかいないと、心筋梗塞が起こる可能性が10%なら理論上は1人しか罹患しませんけど、実際の所2人になる事もありえますし、下手すると3人の事もあるわけです。

2011-11-16 00:22:32
高須賀とき @takasuka_toki

しかし保険加入者の数を増やしてしまえば(日本だと全国民の127,450,460人)、理論値と現実の数がほとんどズレなく求める事が可能なわけです。さて仮に、民間企業がこの医療保険産業に入るのに規制がかからないとどうなるでしょう?言うまでもなくどんどん保険加入者の母数が割れて行きます

2011-11-16 00:31:33
高須賀とき @takasuka_toki

で、これが進行しまくった結果、ある時を境に大数の法則が破綻します。そうすると今の米国のように、医療費が跳ね上がっちゃう、というわけです。よくお役所は無駄が多く、民間化すれば何でも安くなると勘違いしている人がいますけど、規制する事で値段を抑えられる事業も確かに存在するのです。

2011-11-16 00:37:12
高須賀とき @takasuka_toki

よく役人の給料は高すぎで民営化すれば〇〇円の無駄をカット出来ると言っている事業者がいますけど、簡単に騙されちゃ駄目ですよ。耳に心地よい言葉の裏に拝金主義が隠れている。それが市場原理という弱肉強食の世界でよくあることなのですから・・・・

2011-11-16 00:40:47
高須賀とき @takasuka_toki

またこれは憶測なのですけど混合診療を認めない理由は恐らく測定外の事象を役人が嫌っているからだと思います。例えばある治療のしようのない病気に効く治療法が突然出されたとします。今まで治療できなかった患者さんがこれに一気に飛びつくわけですが、これは予算制定段階ではありえない事なわけです

2011-11-16 00:45:02
高須賀とき @takasuka_toki

大数の法則に基づいて計算された保険料の裁量の範囲で医療が仮に済まなかった場合、前年度の予算を組んだ人が当然の事ながら大バッシングされるわけです。誰だって出世に傷がつくような事は避けたいでしょう。それが万に一つでも生じうる位なら混合診療の可能性を排除する、って所じゃないでしょうか?

2011-11-16 00:51:20
高須賀とき @takasuka_toki

ま、お役所仕事も無駄なばっかりじゃないという事がわかってもらえれば、僕はそれで満足です。お読みいただきありがとうございました。

2011-11-16 00:54:29
高須賀とき @takasuka_toki

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2011-11-16 00:56:23