「父になる/ならない」の二項対立から「自動的に父になってしまう」ことへの対応へ｜宇野常寛『リトル・ピープルの時代』

宇野常寛 @wakusei2nd

なんか拙著「リトル・ピープルの時代」について、今日デタラメな要約が拡散されたようだけど、どうしたもんだろうか。驚くべきことにその人のツイートでは、僕は実際に書いたこととほぼ真逆の主張をしたことになっている！　批判としては無視していいものだと思うけど本の内容が誤って広がるのは困る。

宇野常寛 @wakusei2nd

問題のデタラメ要約ツイートはこれ RT :宇野常寛の最大の弱点は「父になる」（決断主義）「父にならない」（セカイ系）の二項対立で考えていて、「父にされてしまう」という受動的主体生成の問題をつかんでいないことだと、「リトルピープルの時代」を授業で再読していてわかった。

宇野常寛 @wakusei2nd

問題ツイート続き RT 宇野氏が「父にされてしまう」（略）という受動的主体生成の問題を軽視していることは、彼の第一部での村上春樹の読解からもわかるし、また例のあとがきの最後の一行からもわかる。彼は父になることは、「父になると決断する」ことだと考えている。

宇野常寛 @wakusei2nd

本を読んでくれた人は気づいていると思うけれど、このツイートはそもそもの僕の主張の要約がおかしい（というか真逆！）。リトル・ピープルの時代』で僕が主張したのはまさに「父になる/ならない」の二稿対立批判と、「父にされてしまう」という問題意識の導入です。以下、証拠に抜き出しますね。

宇野常寛 @wakusei2nd

《私見ではこの問題については発想の転換が必要だ。リトル・ピープルの時代、不可避のコミットメントとその責任を引き受けざるを得ないという点において、私たちは誰もが（男性であっても女性であっても）誤った、矮小な父である。「父」になることは達成ではない。（続く）　

宇野常寛 @wakusei2nd

私たちは否応なく「父」にされてしまうのであり、あとはこの不可避の条件にいかに対応するか、という問題だけが残されている。父性の回復は、既に自動的に達成されたものであり、それはもはや想像力の仕事ではない。》　リトル・ピープルの時代　P136

宇野常寛 @wakusei2nd

《春樹のデタッチメントが事実上「デタッチメントという名のコミットメント」だったように、私たちは自動的にコミットメントしてしまうのであり、「父になれない」のでも「父になる」のでもなく、ただそこに存在するだけで「父として機能してしまう」のだ。》P137

宇野常寛 @wakusei2nd

《正義なき時代にときに正義を執行せざるを得ない私たちは誰もが仮面ライダーのようなものだ。私たちは父になる／ならないのではなく、自動的に父として機能してしまう。（続く）

宇野常寛 @wakusei2nd

私たちはみなそれぞれの（小さな）正義を掲げており、あとはゲームの結果それが承認されるかどうか、という問題だけが残されているのだ。》P260

宇野常寛 @wakusei2nd

まだまだありますが（繰り返しの多い本なのでｗ）、今はこの辺にしておきます。ご覧の通り、「父になる/ならない」の二項対立批判→「自動的に父になることへの対応」は僕のデビューしたときからのモチーフです。それは「リトル・ピープルの時代」でも一章からあとがきまで一貫しています。

宇野常寛 @wakusei2nd

自分で解説するのはカッコ悪いけれど「父になる」という「決断」（春樹の言う父との「和解」）なんか「父である」ことには必要ない/関係ないというのがあのあとがきです。１、２章の論旨の再確認ですね。

宇野常寛 @wakusei2nd

ちなみに問題のツイートは東浩紀氏によるものです。東氏は何万人もフォロアーがおり、問題のツイートも何十人もが引用しています。引用＝同意というわけでもないでしょうが、そもそもの僕の主張の要約の部分が激しく間違っているので、誤解する人も多く出ると思います。

宇野常寛 @wakusei2nd

あと、これはお願いです。東氏のツイートを読んだみなさんは、ぜひ、実際に「リトル・ピープルの時代」を手に取って読んでください。図書館でも、立ち読みでも構いません。東氏の宇野批判はそのまま僕自身の主張で、いかに氏のツイートの内容（の前提となる本の内容理解）デタラメかわかると思います。

宇野常寛 @wakusei2nd

そしてフォロアーのみなさん、この件について意見をお寄せください。僕はさすがにまったく東氏の要約したような内容を主張してはおらず、むしろ氏が宇野批判として展開したことこそを（500Pも使って）強力に主張していたと思うのですが、間違っているでしょうか？

宇野常寛 @wakusei2nd

その通りです。 RT @kenchan5: 宇野さんは消費活動を例に「今は誰もが父になってしまう時代」であることを明示してなかったか。それを踏まえての平成ライダー論等の本旨の展開だったような。それは父になることに対しての受動的な選択を意識してのことではないのか。

宇野常寛 @wakusei2nd

とりあえず、この件は読者の皆さんが僕の本を読んでもらって（立ち読みでも、図書館でもいいです）、「東氏の要約した宇野の主張」がどれくらい妥当か判断してもらうのが一番かと。

宇野常寛 @wakusei2nd

ですよね。むしろこの問題では東氏に近い見解を示した本のはずなのにｗ　 RT @hikari109:まったく間違ってないと思います。東氏のツイートを読んで、ぼくも「妙なことを言ってるな・・・」と気になってました。どうしてあんなにくどく書いてあることを読み違えるのか・・・・・・謎。

宇野常寛 @wakusei2nd

ちなみに僕は「父になる/ならない」の二項対立から「父にされてしまう」という受動的主体の問題を重視すべきだと主張した結果、今出ている「新潮」の対談で千葉雅也氏に「それは結果責任だけを問うことにならないか」と批判されているくらいなのだけどなあ。

宇野常寛 @wakusei2nd

ですよねー。 RT @gima0721z: @wakusei2nd 僕はリトリピープルの時代は、不可避に「父」にされてしまう「時代到来」の考察。「父になる/ならない」の二項対立の時代の終焉（ゼロ年代の想像力の『ページの真ん中に引いた線の左と右』）と読みましたよ。（後略）

宇野常寛 @wakusei2nd

一応、このページに関連インタビューや書評を集約しています。→リトル・ピープルの時代: 宇野 常寛 | PLANETS／第二次惑星開発委員会　http://t.co/DFheIfci　もちろん、絶対に本書を読んで確かめてから判断して欲しいけれど、参考まで。

宇野常寛 @wakusei2nd

エゴサーチするとそういう人も多いようですね、さすがに。 しかし今度ばかりはほんとうに誤爆じゃなかろうか。。。RT @mori2166: @wakusei2nd東氏の批判はつまり宇野氏の主張そのものという事で引用しました。

宇野常寛 @wakusei2nd

僕も初見で思いました。 RT @holden1023: 「誰もが小さな父になることを受け入れざるを得ない時代」について論じている本なのに“「父にされてしまう」という受動的主体生成の問題をつかんでいないことが弱点”という東氏のツイートには「なんか変だな？」という違和感がありました。

みーちゃん @depression_cats

@wakusei2nd 僕はリトリピープルの時代は、不可避に「父」にされてしまう「時代到来」の考察。「父になる/ならない」の二項対立の時代の終焉（ゼロ年代の想像力の『ページの真ん中に引いた線の左と右』）と読みましたよ。加えて「それを選択せざるをえない自分」を肯定する」事と同義だと

宇野常寛 @wakusei2nd

今、RTした　@gima0721zさんのツイートのように、「ゼロ想」は二項対立（セカイ系と決断主義）の解消（第三の道）を考える本。「リトピー」は既にその二項対立が無効化したあとに発生する問題を注視して書いた本です。

宇野常寛 @wakusei2nd

七万人の前で言及してもらった、という解釈もできますがｗ　さすがに内容要約がおかしすぎるので。 RT @ito_youkado: @wakusei2nd 「良書の要約というものはすべて愚劣なものだ。　モンテーニュ」でいいような気もしますなー。