三コマ撮りの効果~『ペンギンの問題』は作画アニメに近づけるのか?~日本アニメ薀蓄

 旧題名【『ペンギンの問題』ってCG?から始まった日本アニメに関する薀蓄】
46
神谷純 @junkamiya

先日、ペン問のCGスタッフと話していて「ウチの奥さんは、今日のペン問はCGなの? アニメなの?って聞いてきて、もうどこから答えたらいいか分からないですよw」という話を聞いた。アニメに意識的に興味を持ていない方には、ペン問は普通に「アニメ」として観てもらえていることにホッとした。

2011-11-23 01:04:45
神谷純 @junkamiya

ただ、その時ちらっと考えた。「ではペン問を普通の『アニメ』と見せかけている要素はなんだ?」 セルシェードによる画質は大きいだろう。だが、それだけで『書き』っぽく見えるか? そうではないとハッキリ思う。セルシェードでもCGであることが明確な映像はいくらでもある。

2011-11-23 01:07:20
神谷純 @junkamiya

では何がそう見せるのか? 答えはこれだと思う。『3コマ撮影』。

2011-11-23 01:08:01
神谷純 @junkamiya

『3コマ撮影』とは、1枚の絵を3コマ分使うこと。まだ分かりにくいな。映画・アニメなどの映像は、1秒を24コマの連続した『画』で構成している。一秒の動きのために24枚の静止画が必要なのだ。

2011-11-23 01:10:41
神谷純 @junkamiya

日本のアニメーションの場合は、『1秒を24枚』ではなく、8枚で表現することがスタンダードになっている。1秒で8枚。つまり1枚の絵を3コマ分使うのだ。

2011-11-23 01:12:08
神谷純 @junkamiya

ではなぜ『3コマ撮り』が普及したか。当然ながら『省力化』のためだ。そのお陰で日本のアニメは週1回の放送をコンスタントにこなせるシステムを作ることが出来た。

2011-11-23 01:14:32
神谷純 @junkamiya

一方CGはというと、実は3コマ撮りにする『省力化』的意味合いは、さほど大きくはない。むしろあまり意味はない。

2011-11-23 01:15:47
神谷純 @junkamiya

だが、セルっぽい画風のCGでも、通常1秒24コマで作られた場合「CGである」ことが、『セル画風』よりも前に出る。

2011-11-23 01:17:20
神谷純 @junkamiya

この違いは何か? これは人間の脳の『補完システム』に起因する。

2011-11-23 01:18:28
神谷純 @junkamiya

人間の脳は『パターンによる認識』というのを常に行なっている。木の節目が人間の顔に見える……というのは、その典型的な例だ。

2011-11-23 01:19:23
神谷純 @junkamiya

この際、脳の働きとして「情報の少ないパターン」にかんしては、脳の中で補完して「脳の中にある情報に近い」パターンを弾き出し、認識させる。経った3つの黒い点が人間の顔に見えたりするのは、この『補完』に由来する。

2011-11-23 01:21:20
神谷純 @junkamiya

一方、人間の脳は『情報が多いもの』に対しては、『差異』を探すことで、『個々』を間違えないように働く。簡略化された似顔絵は『似てる!』と思い、精緻に描かれた似顔絵に限って『あんまり似てないかも』と思うのも、この辺りのことだ。

2011-11-23 01:23:19
神谷純 @junkamiya

さて、似顔絵でもそうであるように、『動き』に関しても同じことが言える。

2011-11-23 01:24:14
神谷純 @junkamiya

『動き』でも情報が少なければ補完して、それっぽく見てしまうし、情報が多いと『違う部分』を探して、『何か違う』と感じてしまう。

2011-11-23 01:25:28
神谷純 @junkamiya

日本のアニメは、基本3コマ撮りでやってきた。1秒24コマに対して実に3分の1の情報量だ。この結果、少ない原画・少ない動きでも、視聴者はむしろ「それっぽいもの」として鑑賞することが出来た。もっともこれは結果論である。

2011-11-23 01:27:46
神谷純 @junkamiya

一方、戦前のアニメーションなどは『グネグネしていて気持ち悪い』と言われる。1秒24枚で書いているにもかかわらずだ。

2011-11-23 01:29:46
神谷純 @junkamiya

人間を含む『動き』というのは、実は様々な要因によって発生する。『歩く』という一つをとっても『重心の移動』『目線による進行方向の随時修正』などを含む様々な情報が『一つの動きの流れ』を作っている。

2011-11-23 01:31:40
神谷純 @junkamiya

通常の日本のアニメーションの場合、それらの情報の大半はそぎ落とし、『足の移動』パターンのみで表現していることが多い。パターン化されていることによって、効率化し大量生産が可能になっている。

2011-11-23 01:32:55
神谷純 @junkamiya

だが、『歩きの情報』の何割かは抜け落ちてしまっている。だから、たとえば3コマ撮りのアニメーションを、そのまま1コマ撮りにしても、人間の脳は『差異』を探す方に動いてしまい、『リアルではない違うもの』として認識してしまう。

2011-11-23 01:34:52
神谷純 @junkamiya

CGの場合、1コマ撮影にすること自体の労力的苦労はないので、簡単に行えてしまうのだが、この時CGアニメーターがつけた動きが、1秒24枚の動きとしての情報を備えていれば、視聴者は『フルアニメーション』として認識するが、モーションキャプチャーでないと、そこは難しい。

2011-11-23 01:37:57
神谷純 @junkamiya

その結果、よく「CGっぽいね」といわれる『動きのポイントがゆるい』ムービーになる。

2011-11-23 01:38:45
神谷純 @junkamiya

そこまで考えると、3コマ撮りと言う手法は『省力化』という意味合い以上に、『動きの記号化による分解と再構成』を脳に促しやすい面白い発明なのだと、改めて気付かされた。

2011-11-23 01:41:00
神谷純 @junkamiya

『ペンギンの問題』は当初から「3Dソフトを、描きのアニメーションのツールとして使う」発想で作られた。その結果、描きのアニメと同じように3コマ撮りも採用したのだが、それが「ことさらアニメファンではない」多くの人には『普通のアニメ」に見えつつあるというのは、面白い帰結だ。

2011-11-23 01:43:25
オザ_カズ @oza__kazu

@junkamiya 今は無理矢理24コマを30フレームにしてるから時々コマ送りしてると…

2011-11-23 01:24:13
神谷純 @junkamiya

@jetinoue 実は、すべてCGアニメーターさんに丸投げなんですよ。絵コンテを元に打ち合わせをして、動きやしゃべりのタイミングは、すべてアニメーターさん任せです。チェックは上がったムービーで行います。

2011-11-23 01:45:49