【ガエテの誘惑　完全版】　福間健二　tweet詩　fukuma10u

福間健二 @acasaazul

なにもつづかない。なにをやっても身が入らない。これは、ぼくのなかで、この世界の、なにが、なににコーギしてるのか。落ちて、すべって、すって、いたいと感じる。生きているからだ。生きている体と理由、自転車とペットボトルの水。これでガエテに行ける。（ガエテの誘惑１）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

二分後。倒れている。日本語。バランスがわるい。二本立て。雲とクモ。二篇の詩。死ねないのだ。へんな二人。起き上がって、勇気あり、セックスアピールあり。言う気なくても伝わっているから、つみとみつ、入れものは同じ。入ってしまえば、いい町ガエテ。（ガエテの誘惑２）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

書く。腐ったりんごからはじまった密室の大陸を遍歴する男。つまり、修業時代の書く男。いまはその死角に入り、冷たい風になぶられながら書く。ガエテにむかって微笑み、その微笑みで大陸を浸食しながら、まだふるえている彼女に働きかけるのだ。（ガエテの誘惑３）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

いい町、ガエテ。言いまちがえて。半分乾きかけの世界。つみとみつ。日本語の、悲しい遺産をけちらして、教育経験何十年といばるおっさんたちもぶっとばしたあとの、ある側面。彼女を利用するみなさんへ。手も顔もあそこも洗っちゃだめ。親密な会話のあとも。（ガエテの誘惑４）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

荒れ放題になっている庭。選択バサミと洗濯できない運命を拾って、あ、彼女は何を口にふくんだのか。永遠の苦しみをしまう家具のあいだによろめき出る、いつわりの魂たち。白くても、虹色に輝いても、最後は泥。魔法をかけられた廊下を歩くぼくから出るのは。（ガエテの誘惑５）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

彼女の、かわいい独走と無思慮な毒草による魔法。ひみつの、みひつの、こいのつみとみつ。全部舐めて、香りのいい湿原のむこう、ステージに立つ彼女のヌードを見るのはこれからだというところで、おはようございます。座席の人々が動きだした。着いたのだ。（ガエテの誘惑6）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

描写のかわりに病舎をおく。ひとりの老女がベッドに横たわり、ぼくが入ってくるのを見ている。逆だ。ぼくが老いて死にかけていて、若い彼女が来るのを待っている。ここはまだガエテではない。鍛えられた夢のなかの現実。法則に従わない彼女の脚を見つめる。（ガエテの誘惑７）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

正午、大きすぎる入れものに用はなかった。裸でも、裸でなくても、彼女の実体が感じられなくては。ガエテ。力を抜いてもらい、この身を入れた。泊まるところと昼めしを食べるところと夕方からの話し相手と長時間いられる安酒場を探す。雨でなければ楽しいよ。（ガエテの誘惑８）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

黒い水のなかの動物の目。小声で歌いだす赤い爪の老女。落ち着きたいのだろう。家族のない三日月と雲に隠れる男。さらに失うべきものを思い出させるとしても、歌の効果。安定感と静けさ。でも、講義いらん。抗議するとき。世界と自分、この結び目に。音楽で。（ガエテの誘惑９）　#fukuma10u

福間健二 @acasaazul

あがいてもがいてみがいてきがえて、ガエテの効用。カエデの紅葉。一泊して、絶対にきらいにならないものがあるとしたらこの人だという人に会った。なにが起きたのか？「おぼえてない。わたしたちがなめらかな手をしていたこと以外は」と彼女は言った。（ガエテの誘惑10）　#fukuma10u