軍隊では声量より明確さ
NHK坂の上の雲、いまの人は軍隊を知らないから軍隊の会話は大声で怒鳴ってばかりだという偏見でつくってしまう。現在の自衛隊、警察、消防と同じで感情的になる場面はきわめて限られている。死と紙一重だから冷静にならなければできない仕事なんだよ。
2011-12-04 20:19:38いろいろ異論があるひとだが、これは正しい。帝国陸海軍が現存していた時代の戦争映画、『海軍』、『加藤隼戦闘隊』、『将軍と参謀と兵』……を観るとわかる。声を張り上げたりはしていない。むしろ、拍子抜けするぐらい、普通にしゃべっている。胴間声をあげるのは、戦後の映画なのである。
2011-12-08 23:51:19http://t.co/kwQILbkD きっと動員された殆どの人が殆ど生れて初めて怒鳴られて、凄く恐くて内容が頭に残らなかったんだろうなぁ、と想像する。そういう兵隊さんが復員して、映画を作ったり演劇をやったりして、凄く恐かった印象だけを再生したんではないか。
2011-12-12 21:48:09しかし、小説家としてつらいのは、陸海軍の将校に「私は」とか、普通にしゃべらせると、編集さんや校閲さんからヘンですと赤を入れられることなのだった。いや、当時の映画や文章をみると、「自分は」とか言ってるほうが少数派ですから。
2011-12-09 00:11:28もっとも、江戸時代を舞台にした映画で、お歯黒塗った人妻を出してるほうが少ないわけで、これはこれで幻想の昭和をやるしかないのかとも思っている。
2011-12-09 00:13:05ただ、旧軍のことは、どんどんわからなくなっていて、例をあげれば、室内無帽なのに挙手の礼をする映画やテレビドラマもフツーになっている。「礼式令」とか参考資料はまだあるはずなんだが。
2011-12-09 00:33:05思うに、軍隊は馬鹿声出すものというのは、江田島とか、市ヶ谷とか、あのへんの指揮官は声あげなきゃ部下に伝わらないだろうというので、無茶声出すよう訓練したのが一般化されたんじゃなかろうか。
2011-12-09 00:25:22旧軍の発声について呟いたら、いろいろリツイートされたりしているようなので補足。以下は、昭和十五年の軍隊内務書からの引用。
2011-12-12 18:35:51「軍隊に入って第一に感ずるのは、いかにも喧嘩でもしているかと思われるような大声で話していることである。大砲、機関銃が唸る戦場で働くことを考慮に入れると、軍人の言葉は簡単で明瞭でなければならぬ。従って平常から其の習慣を附ける必要がある。」
2011-12-12 18:38:07この文章だけみると、今の戦争や軍隊映画の大声を交わす式でいいじゃないかと思われるかもしれないが、さらに後段がある。
2011-12-12 18:39:11「口の中でもぐもぐする言葉、幽霊のように語尾の消える言葉、お姫様のように聴音機を要する言葉、馬鹿丁寧な言葉等皆落第である」。以上、新字新かなに直して引用。
2011-12-12 18:41:10このように、軍隊の発声というのは、大声というよりも明快であることを要求しているのであって、昨今の多くの映画やドラマのように、胴間声ではあるものの、それゆえに何を言ってるのかわからないというのとは、あきらかにちがうのだった。
2011-12-12 18:43:05もっとも……主観の問題もある。昭和前期の軍隊での発声は、一般社会に比べれば、怒鳴っているように聞こえたかもしれず、そうした感想が後世に伝わって、今日の映画やドラマの大声のやり取りになっているのかもしれない。
2011-12-12 18:46:05ただ、現在の日本語は、戦前と比べると、普通でもかなり大声かつ早口でしゃべるようになっているから、そこで声高にしゃべると、旧軍のものとは、だいぶちがうものになってしまうのだった。
2011-12-12 18:47:06ふむ、関心のあるひとが多いようだから、もう一つ引用してみよう。「陸軍礼式令」より「室外の敬礼」。新字新かなに直しているのは、前の呟き同様。
2011-12-12 22:22:19「挙手注目の敬礼は、姿勢を正し右手を挙げ(怪我、病気等で右手を使用出来ない者は左手)其の指を接して伸ばし、食指と中指とを帽の庇の右側(左手のときは左側)(庇のない帽は其の相当位置)に当て、掌を少しく外に向け肘を肩の方向で略々其の高さと同じにして頭を向け」……(引用続く)
2011-12-12 22:27:03北朝鮮のアナウンサーが出演しなくなったことが話題になっているけれど、あの押し殺したような抑揚は、戦争中の日本ニュースとか、ドイツの Wochenschau のアナウンサーの口調と共通するものがあるよね。民主化とアナウンサーの抑揚なんて議論ができそうな気がする。
2011-12-12 22:33:35