福島原発事故で全米で14000人死亡?論文を一緒に読んでみましょう

Twやネットで話題の論文をライブで解説してみました。実際に論文の表やデータをみると事故前も死亡者数の変動が大きかったり、放射能が低かったり、放射線汚染に比例した死亡動向(例えば西海岸>東海岸)がなさそうなことがわかります。
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森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

①最近、Twで見かけるアメリカの疫学データで福島原発事故の影響で米国で14000人死亡したという論文を読みました。http://t.co/odI87LyF 著者が述べているようにこの論文はあくまでpreliminary (予備的な試験)に過ぎず、2010年と2011年の同時期

2012-01-03 08:22:11
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

② とトータルの前後比較をしている研究です。先行研究でチェルノブイリ事故が起こった1986年がその前の年に比べて米国の乳児死亡率が3.1%上昇したという先行研究があり、福島事故後も前年と比べて米国で1.8%上昇したというものです。以下、順に図をみていきましょう。

2012-01-03 08:41:47
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

③ まず、Table 1ですが、これは全米各地で人工放射性同位元素が検出された割合を示しています。お馴染みのヨウ素131、セシウム137・134のほか、要素132、133、バリウム140、セシウム136、コバルト60、テリウム129・129mも調べています。このデータのリソースは

2012-01-03 08:44:22
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

④ http://t.co/O1z02gM8 にあります。ヨウ素131が3月22日や29日に事故前の平時(2ピコキュリー/リットル=0.076ベクレル/L)より最大で50~200倍前後のデータが観察されています。 ベクレル換算だと最大で数ベクレル~15ベクレル/L程度です。

2012-01-03 08:54:30
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑤ Table 1の出典http://t.co/O1z02gM8をみるとエアフィルタで3月にテルル132まで検されていますが、いずれも微量で4月に入ってからはほとんど検出されていないことがわかります。

2012-01-03 09:10:40
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑥ 次にTable2では、2010年と2011年で、第12週(3月21日)~第25週(4月17日)と、その14週前の第50週~年が明けて~第10週の全死亡数を比較しています。ここで、年の最後の第52週というと一昨日のデータなので2011年でなく2010年と2009年のデータを比較

2012-01-03 09:13:54
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑦ してるのかなと思いましたがそこはよくわかりませんでした。さてこのデータを見ると、全米122都市の全死亡数は、福島事故後の第12~第25週で前年の同時期の比較で平均『+4.46%』増えているのに対して、第50~第11週の同時期の比較で平均『+2.34%』だったという結果でした。

2012-01-03 09:27:58
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑧ 次にTable 3では乳児死亡数が福島事故後の第12~第25週で前年の同時期の比較で平均『+1.80%』増えているのに対して、第50~第11週の同時期の比較で平均『-8.37%』だったという結果でした。実際の表を週毎とにみると±数十の範囲内で変化しているのがわかります。

2012-01-03 09:31:07
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑨ Table 4では代表的な都市ごとに2010年と2011年の総死亡数と、第12~25週とその前14週との比較をしています。この表ではヒューストン(フロリダ州)の+21%が最も大きく、次いでフィラデルフィアの+9%が続きますがサンディエゴ(西海岸で映画トップガンの舞台)は-5%

2012-01-03 09:36:58
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑩ と減少しています。次にTable5で同じ8都市で乳児死亡数を比較しており、ここではフィラデルフィアが一番高くて+14%、サンアントニオでは-20%で、8都市平均で-2.89%減少している(14週前の平均は-1.51%)という結果でした。実際の数値をみるとデータの取り方で

2012-01-03 09:45:34
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑪ たとえば全都市か一つの都市か8都市平均かで変化率が大きく変わることがわかります。放射線の影響であれば偏西風の影響で西海岸の都市により大きな影響が出るはずですが今回の研究でははっきりしていません。最後の考察にはこの研究のリミテーション(限界)が考察されていて、

2012-01-03 09:49:19
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑫ 元データは全死亡の25~35%のサンプルしか反映されていないことや、比較データの年末のクリスマス時期は死亡数がとても少ない傾向が元々あるなどが書かれています。最後の付録に、チェルノブイリ事故で米国の牛乳から検出されたセシウムとヨウ素131が出ていて、ヨウ素131で

2012-01-03 09:56:31
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑬ 最大3Bq/L, セシウム137で1.6Bq/L検出されたと書かれています(※ピコキュリーは馴染みのあるベクレルに換算しました。)私が見た別のデータでも4月に西海岸で牛乳は最大数ベクレルのレベルでした。付録のテーブル2ではチェルノブイリ事故時の1986年と前年を比較した図

2012-01-03 10:07:17
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑭ が出ていて、1986年4月26日に事故が起こって米国で放射線が検出された5月~8月と、その前の1月~4月の平均を比較しています。この図からは一様に増加する傾向が出ていますが、データの取り方は今回の論文とほぼ同じです。以上、Twやネットで米国で死者が14000人増加した!という

2012-01-03 10:11:12
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑮ 論文を見てみました。強調しておきたいのですが、私は決してこの論文を否定しているわけではなく、私の原発事故での放射線の影響に対する考えはバンダジェフスキーの日本語wiki 作成や普段Twしているとおりです。ただ疫学論文というのはこういうものだということを論文の表を見て実感して

2012-01-03 10:14:16
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

⑯ いただきたいと思いました。もちろんこの論文の仮説は、もしかしたら真実かもしれません。ただ、実際のデータをみると放射線量は少なく、地域差もないようであり、ちょっとPending かな、というのが私の感想です。以上です。お付き合いいただき、ありがとうございました(^^)/

2012-01-03 10:18:40
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

@Todaidon みなさま、「原発事故で米国人14000人死亡?」⑨のTwで、ヒューストン(フロリダ州)は間違いで、テキサス州でした。ヒューストンはテキサス州の南東部にあります。^^; すみません、訂正します。o(_ _)o

2012-01-03 20:17:48
Joss Fat @jossfat

1) 第50週〜11週(年をまたぐ) 2)12週〜25週を2011年と前年で比較。1)の年度間比較は自然増を反映し、2)は事故影響を反映するだろうという論理。対象期間の狭さと26-49週がどうなってるかの言及は無しですね。 RT @Todaidon: ⑦ よくわかりませんでした。

2012-01-03 15:10:44
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

@jossfat そうですね。この疫学論文で、たとえば過去10年間の同じ時期の死亡者数の変化率を一覧にすれば、著者らの主張が妥当かどうかの傾向がつかめたと思います。それをせずに事故前後の1年前との比較をしていることがpreliminary という位置づけだと思います。

2012-01-03 20:10:14
Lady CRÜEL/#artRAVE @Ellisholic

「トップガン」の舞台って(笑)RT @togetter_jp: Todaidonさんの「福島原発事故で全米で14000人死亡?論文を一緒に読んでみましょう」がきてるみたいっ。内容が気になるね! http://t.co/klDHOVX8

2012-01-03 17:39:40
prometheus @prometheus2054

原発事故じゃなくてBPのオイル流出事故による海洋汚染が影響じゃないか?さすがにこれは言いがかりだと思う。まあ米国は難癖をつけて侵略戦争するテロ国家ですからね RT @Todaidon 「原発事故で米国人14000人死亡?」⑨のTwで、ヒューストン(フロリダ州)は間違いでテキサス州

2012-01-03 20:38:02
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

@prometheus2054 疫学研究の中には、大量のデータから宝石のようなエビデンスを出すものもあるのですが、論文の中には一過性に消えていくものもあり、移り変わりが激しい分野という印象です。ただこの論文にはアメリカでの放射線検査もまとめてあり、その意味では有用です。

2012-01-03 21:01:13
森本卓哉 Takuya MORIMOTO @Todaidon

米国の疫学論文について、私のTwのほかに、①積極的評価http://t.co/Q20bKDBc ②否定的評価 http://t.co/qsPv4sPH を見つけたので補記します。私はどちらでもなくお寿司の松竹梅コースでいうと梅という程度です。本来は3者に上下関係はないですが^^;

2012-01-04 10:46:47