高橋源一郎さんの「世界一素敵な学校」

サドベリー・バリー校のHP(生徒のインタビューの動画有り) http://www.sudval.com/ ボストン交響楽団オーボエ奏者 若尾圭介氏のblogから http://wkboston.exblog.jp/7695124/
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高橋源一郎 @takagengen

「午前0時の小説ラジオ」今夜の予告編①・今晩は。ひさしぶりに「小説ラジオ」をやります。今年になって一回目。間隔が開いてしまうので、毎回、説明しなきゃなりません。一つのテーマを決めての連続ツイートです。ツイートしたい、と心から思えるようなものを決めるまで時間がかかってしまいました。

2012-01-16 21:16:47
高橋源一郎 @takagengen

「午前0時の小説ラジオ」・今夜の予告編②・今夜は、「教育」についてです。最近、ある学校のことを知り、深い衝撃を受けました。その学校は、ぼくにとって、見たことも聞いたこともない「教育」をしていました。ほんとに、驚いたのです。

2012-01-16 21:18:34
高橋源一郎 @takagengen

「午前0時の小説ラジオ」③・たぶん「教育」に詳しい人なら知っているだろう、その学校は「世界一素敵な学校」と呼ばれています。そこでは、いわゆる「学校教育」らしいことはなにひとつされていない。でも、それ以上の学校は存在しないようにぼくには思えたのでした。では、後ほど、午前0時に。

2012-01-16 21:21:18
高橋源一郎 @takagengen

午前0時の小説ラジオ・「世界一素敵な学校」1・そんな学校は他にもある。日本にも、世界中のあちらこちちにも。ぼくたちの多くがそのことを知らないのは、たぶん、社会が知らせないようにしているから。なぜなら、そんな「ありえない」ことが可能なら、困ってしまう人たちがたくさんいるはずだから。

2012-01-17 00:00:05
高橋源一郎 @takagengen

学校②ぼくは、この(これらの)学校を知り、その「教育」内容を知るにつれ、深い関心を抱いた。その理由の一つは、ぼくには、これから「教育」に向う5歳と7歳の子どもがあるからであり、もう一つは、大学で、学生たちを「教育」しようとしているからだ。

2012-01-17 00:01:53
高橋源一郎 @takagengen

学校③その学校は、アメリカ・マサチューセッツ州にあるサドベリー・バリー校。ここでは4歳から19歳までの「子ども」たちを受け入れている。日本でいうなら、「幼稚園年中」組以上から高校(もしくは大学1年)程度までだ。写真で見ると、この上なく美しい風景の中に、「校舎」がたたずんでいる。

2012-01-17 00:04:31
高橋源一郎 @takagengen

学校④この学校には、カリキュラムがない。試験がないから、採点はないし、通知表もない。学年もクラスもない。いわゆる「教室」もない。当然のことだけれど、卒業証書もない。後で詳しくいうことになるかもしれないが、「先生」も「生徒」も存在しない。あるのは、子どもたちの「完全な自由」だけだ。

2012-01-17 00:06:27
高橋源一郎 @takagengen

学校⑤この学校では、たとえば「問題児」が歓迎される。彼・女が、問題を起こすのは、「闘い」を放棄していないと考えるからだ。その子に、反抗するだけの元気があることは、とても素晴らしいことだからだ。

2012-01-17 00:08:04
高橋源一郎 @takagengen

学校⑥いちばん驚くのは、この学校では、「読み」「書き」の「授業」さえないことだ。だから、8歳になっても9歳になっても、字が読めない子さえイル。なのに、だ。この学校では重視されてはいないことだけれど、最終的に、ここを卒業した子たちの「学力」は、ふつうの学校より高い。

2012-01-17 00:09:58
高橋源一郎 @takagengen

学校⑦通常の「教育」を一切しないこの学校に対して(それなのに、たいていの子どもは希望の大学に進学する)、そんな「奇跡」のようなことがあるはずがないと、「現実主義者」たちは批判してきた。けれども、最後に音をあげるのだ。なぜだかわからないが、ここではなにもかもうまくいってしまうから。

2012-01-17 00:12:15
高橋源一郎 @takagengen

学校⑧「教育」はしない。けれども、子どもたちがなにかをしたい、と思った時のための「完全な準備」が、ここにはある。その「準備」は、カリキュラムに従って、「教育」を与えるだけの学校より、遥かに困難だ。実例をあげてみよう。

2012-01-17 00:14:08
高橋源一郎 @takagengen

学校⑨この学校には、決まった「授業」はなにもない。だから、子どもたちはずっと、好きなことをする。ずっと釣りをしたり、ずっとゲームをしたり。でも、おとなたちはなにもいわない。ただじっと待つのである。ある日、9歳から12歳の子どもたち12人が、ひとりの「おとな」のところにやってきた。

2012-01-17 00:15:40
高橋源一郎 @takagengen

学校⑩「足し算、引き算、掛け算、割り算、算数ならその他なんでも教えてくれと頼んできたのだ」「本当はやる気ないんじゃないの?」「いや、本気だよ。算数をマスターしたいんだよ」。というわけで、いままで算数を習ったことのない子どもたちと「おとな」は「協定」を結ぶのである。

2012-01-17 00:17:33
高橋源一郎 @takagengen

学校⑪その「協定」の中身は、☆時間を守ること。☆約束の時間に5分でも遅れたら、その日の「授業」はなし。☆それが2回続いたら、その「授業」は永遠に中止。その「協定」を守ることを誓って、「勉強」が開始される。その集まりを、ここでは「クラス」と呼ぶのである。

2012-01-17 00:19:14
高橋源一郎 @takagengen

学校⑫さて、その結果はというと、通常6年かかる、算数の全教程が、二十四週、週2回30分ずつ、トータル24時間で終了してしまう。これがいつものペースだ。そして、子どもたちは一度も約束を破らない。彼・女たちを教えた「おとな」は、こういうのである。

2012-01-17 00:21:13
高橋源一郎 @takagengen

学校⑬「教科それ自体は、そんなに難しくないんです。では何が算数を難しく、ほとんど不可能にしているかというと、嫌で嫌で仕方ない子どもたちの頭に、無理やり教科を詰め込んでいく、あのやり方のせいです。…毎日毎日、何年もの間ずっと、少しずつハンマーでたたき込んでいけば…」

2012-01-17 00:23:51
高橋源一郎 @takagengen

学校⑭「さしもの子どもたちもいずれ覚えるだろう、というあの教え方です。うまく行くわけがない。だから見てごらんないさ。このくにの六年生の大半は、数学的な意味で文盲です。結局、わたしたちがなすべきこと、それは、子どもたちが求めたとき、求めるものをあたえることなのです…」

2012-01-17 00:25:48
高橋源一郎 @takagengen

学校⑮「そうすれば、まあ、二十時間かそこらで、彼・女たちは、きっとモノにしてしまいます」。繰り返しいうが、通常6年かかる算数の全教程を教えるのに、この学校では、二十時間かそこら以上かかったことは、いままでも一度もないのだ。

2012-01-17 00:27:11
高橋源一郎 @takagengen

学校⑯「読み」「書き」に関する話はもっと面白い。これは、自分の子どもをここに預けた、この学校の主催者の告白。「学校のほかの子どもたちと同様、娘が読むのを教えてくれと頼んでくるまで、あるいはまた自分で読めるようになるまで、わたしたちは待ったのです。待って、待って、待ったのです」

2012-01-17 00:29:21
高橋源一郎 @takagengen

学校⑰「ところが彼女は6歳になっても読まないのです。それも良しとしなければならないでしょう。世間並みなのですから。が、彼女は7歳になっても読み始めません。こうなると、親としてはやはり心配です。とくに、おじいちゃん、おばあちゃん、叔父さん、叔母さんたちが不安の表情を浮かべます」

2012-01-17 00:31:44
高橋源一郎 @takagengen

学校⑱「ついに8歳にして読まず。こうなると、もはや一家、仲間うちのスキャンダルです。わたしたち夫婦は、まるで非行パパと非行ママ。「それでよく、学校やってられるわね」というわけです。娘が8歳になっても読めないのに対策もとらないで、よく学校をやってますなんていってられるわね、」

2012-01-17 00:33:47
高橋源一郎 @takagengen

学校⑲「そんなのまともな学校じゃないわよ、非難の言葉を浴びせかけてくるのです。でも、サドベリー・バレー校ではだれもそんなことを気にしちゃいません。確かに、8歳になる友だちの大半は読めるようになっています。でも、まだ読めない子も何人かいるのです。そんなこと娘は気にもかけていません」

2012-01-17 00:36:17
高橋源一郎 @takagengen

学校⑳「元気一杯幸せに、毎日を過ごしているのです。娘が「読みたい、読もう」と決心したのは9歳のときでした。どんな理由でそう判断したのか、わたしにはわかりませんし、娘本人も覚えていません。まもなく、9歳と6カ月で、彼女は完璧に読めるようになりました。なんでも読めるのです」

2012-01-17 00:38:18
高橋源一郎 @takagengen

学校21・「もはや彼女はだれの「心配の種」でもなくなったのです。もちろん、もともと、「問題児」でもなんでもなかったのですが」

2012-01-17 00:39:07
高橋源一郎 @takagengen

学校22・いったい、「学校」とはなんだろうか。動物たちは、子どもを「学校」にやらなくても、きちんと子どもたちは成長して、成体になる。そして、人類もまた、誕生して以来、ほとんどの期間を、「学校」なしで過ごし、なんの問題もなかったのだ。

2012-01-17 00:41:00