ゲームの「面白さ」と「楽しさ」は別なものと考える

旧来ゲーマーにとって「面白いゲーム」ではなかったはずのモバグリ・ソーシャルが大躍進。 面白くないのに何で人気なのか、「ゲームに疎い人々が新規性を面白く感じてるだけ」の話なのか。 「面白さ」の概念を大きく2つに分けてみたら自分の中ではとてもスッキリしたというお話。
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まつもと @matsumoth

続)深夜だし「ゲームの面白さ」に付いて語ってみる。いつもは考えをある程度まとめてから書くけど今日はロジックを後から考え直すことを前提に思いつくままにいろいろ書いてみる。まず「ゲームは面白ければいいんだ」の「面白い」って実は2つ、あるいはそれ以上の意味を含んでいると認識している

2011-12-06 04:07:58
まつもと @matsumoth

続)とりあえず2つとして話を進める。まず1つは「ゲーム性」と呼ばれるものについての面白さ。これは例えばソーシャルの農場ゲーやガラケーのクジ引きゲーに対し「あんなのはゲームじゃない」と考える際の基点でもある。やることが決まっていることを行うだけでとてもゲームとは呼べない、みたいな

2011-12-06 04:18:49
まつもと @matsumoth

続)もう1つは「演出」の面白さ。この絵が好みとか、ストーリーが良いとか、他人とのコミュニケーションとか、あるいは入力に対するレスポンスが速いだとか、クジ引きゲーは射幸心や収集欲を煽られるのでとても面白い、という人も多いはず。「娯楽性」あるいは「エンターテイメント性」と言ってもいい

2011-12-06 04:24:38
まつもと @matsumoth

続)この2つの「面白い」が混ざって語られると「クジ引いて当たりだったら勝利条件を満たすなんて面白さのかけらもない」「いやワクワクしてとても面白い」といった噛み合わない話になるのも道理で、遊ぶ側は面白ければいいとしても、作る側はこの2つは別な概念として考えるべきだと認識している

2011-12-06 04:36:22
まつもと @matsumoth

続)で、今のところ個人的に最もしっくりくる表現は「楽しい」で、恐らくもっと適切な表現があるとも思うけど、「ゲームの面白さ」と「ゲームの楽しさ」の違いとして考えると、先ほどの話も「面白さのかけらもない」「いやワクワクしてとても楽しい」となって、うん別に矛盾してないよね、となる

2011-12-06 04:44:29
まつもと @matsumoth

続)面白いと楽しいの違いがわからない。同じじゃないの?と思う人もいるだろうけど、一般に「友達とおしゃべりすることは楽しい」とは言っても「友達とおしゃべりすることは面白い」とは言わない。「○○さんがしゃべると面白い」などと言うはず。おしゃべりの「雰囲気」は「楽しさ」で表現されるよね

2011-12-06 04:52:34
まつもと @matsumoth

続)なのでゲーム性が優れていることを面白さ、エンターテイメント性が優れていることを楽しさ、と表現すると、旧来ゲームファンの「モバグリ・ソーシャルはゲーム性が低く面白くないのになぜ躍進してるのか」という問いには「モバグリ・ソーシャルのゲームは楽しいからだ」と答えられる。矛盾もしない

2011-12-06 05:02:26
まつもと @matsumoth

続)また別な例で言うと「グラフィックが綺麗になってもゲームが面白くなるわけではない、マシンの性能向上で石や駒が美麗になったとして囲碁将棋がどう面白くなるのだ」といった言説も、「ゲームの面白さが一緒であれば、より楽しい方がいい。だからグラフィックに力を入れるのだ」といった話になる

2011-12-06 05:11:26
まつもと @matsumoth

続)システム好きは「面白さ」を好み、表現好きは「楽しさ」を好むという話でもあり、旧来ゲーマーの不安は「面白さの喪失」であり、モバグリ・ソーシャルの強みは「楽しさの強調」であり、どっちも同じ「ゲームの面白さ」という枠組みで語ると対立するが、概念を2つに分けると非常にスッキリするのね

2011-12-06 05:25:29
まつもと @matsumoth

続)で、これらは結局「どっちも大事」という話ではあるのだけど、単純に「どっちも」で済む話ではない。この2つが大きく違うところはコストで、どういうことかというと「楽しさを増やすコストは一定だけど、面白さを増やすコストは可変」というもの。ピンと来た人は以降読まなくてもたぶん合ってます

2011-12-06 05:32:27
まつもと @matsumoth

続)「楽しさ」でいうと例えば絵を差し替えるコストというのは見積もりやすい。開発の序盤で差し替えても後半で差し替えても作業量はほとんど変わらない。いわゆるブラッシュアップとか仕上げに分類される作業は掛けたコストだけ効果が得られるのね。でも「面白さ」を増やすコストを見積もるのは困難

2011-12-06 05:46:02
まつもと @matsumoth

続)そして開発の後半になるにつれ「面白さ」に必要なコストはどんどん上がっていく。ちょっとした「面白さ」の変更が既に忘れられた別仕様とバッティングし、数珠つなぎ的に不具合の大連鎖を引き起しかねない。しかも変更したけど面白くなかった、なんてことになったら目も当てられない

2011-12-06 05:54:12
まつもと @matsumoth

続)改訂)なので作る側で「もうちょっと良くできないかなー」という場合、「楽しさ」と「面白さ」を混同していると良ろしくない。例えば「操作レスポンスを良くしよう」と「通貨を導入して買い物させよう」を同じ次元で「面白さの改善」と捉えてたら誰か止めたげてください。お偉いさんの指示なら泣く

2011-12-07 03:17:58
まつもと @matsumoth

続)楽しさのコストが見積もりやすく、面白さのコストがそうでないのであれば、楽しさに全力投資した方が当然コスト対効果は優れる。ではそうした場合に面白さをどう担保するかという問題に、大資本による堂々たる剽窃と使い回しという解を得た結果が昨今のソーシャルゲーム界の躍進とも解釈できる

2011-12-07 03:25:20
まつもと @matsumoth

続)コスト不明ないわゆる基礎研究に類する部分に大資本自らは注力せず、どこぞで有益な研究結果が発見されればフレームワーク化し、仕上げの部分に戦力を集中することでクオリティの高い商品が短い開発時間で得られることになる。そしてそれは面白さを求めないユーザーをターゲットにできればなお良い

2011-12-07 03:34:03