アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第1部「ネオサイタマ炎上」より 「アトロシティ・イン・ネオサイタマシティ」 #3

2012-01-16 21:40:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ポンツクポンツクオーオオーギュワンギュワワーン、オーオンオーオンギュワンギュワワーン……ボトルネック奏法めいた電子シタールの音と電子マイコ音声のコーラスが、非人間的なデジ木魚のビートに乗って流れる。立ち込めるミステリアスな煙。ザゼンめいたアトモスフィアがひしひしと感じられた。 1

2012-01-16 21:48:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ここは薄汚い雑居ビルの2階にある、ケンリュウ・ハッカードージョー。この階は完全に彼らのものであり、だだっ広い灰色の空間には、百枚のタタミが敷き詰められている。手前にはチャブが10個並び、それぞれ4台のUNIXが東西南北を向いて並ぶ。床には足の踏み場も無いほどのLANケーブル。 2

2012-01-16 21:59:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドージョー内は薄暗く、UNIXから漏れる緑色の電子光と、壁際に立つ燭台のロウソク群が、神秘的な光の調和を生む。サイバーグラスをかけた黄色装束のハッカーたちが20人ほどチャブの前に座り、修行僧めいて黙々とキーを叩く。彼らのタイピング速度はかなり速い。皆優秀なハッカーなのだろう。 3

2012-01-16 22:07:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

奥では数名がザゼン。その後ろの壁に掛けられるのは「ケンリュウ」「完全なコンタクトだ」などと書かれたショドー、難解なキーボード配置図、人体解剖図など。大型UNIXサーバーやメインフレームが立ち並び、その抑揚の無い定期的な非人間的動作音はそのまま、ハッカー達の息遣いのようだった。 4

2012-01-16 22:16:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

このドージョーは、ペケロッパ・カルトのような危険思想を持つ邪教徒に比べれば遥かに無害で、一般的なものだ。彼らは実際違法行為を行うわけではないため、マッポも無闇に取り締まれない。殺人方法を学んでいるからといって、全てのカラテ・ドージョーを潰せるだろうか?要はそういうことなのだ。 5

2012-01-16 22:27:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「…と、このように、我々のハッカー・ドージョーでは非暴力主義を貫き、主にザゼンかハッキングを行っておるのです」白く長い髭を生やした師範ソダワ・ケンリュウは、ヤマヒロに対する施設紹介をほぼ終えるところだった「というわけでフリーランスヤクザの方に用心棒を願えれば、たいへん心強い」 6

2012-01-16 22:36:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソダワ=サン、あんたは運がいいぜ」年代物の武者鎧を着たヤマヒロは、煙草を口元に運び火をつける。独楽のようにゆっくりと前後左右に揺れるチャブハッカー達を見下ろしながら、こいつはチョロい仕事だと内心ほくそ笑んだ「任せてくれよ。俺のカラテは20段に近い。元プロパーだから顔も利く」 7

2012-01-16 22:45:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「まずは、一週間分前払いで報酬をもらう」ヤクザはケジメされた四本指の右手を差し出す。ソダワ・ケンリュウは眉根を微かに吊り上げると、輪ゴムで巻かれた薄汚い定額紙幣の札束を差し出した。この街で生き残るには、強者の庇護下に入る他ないのだ。しかも提示金額は高くなく実際人道的といえる。 8

2012-01-16 23:05:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

金を懐に入れながら、ヤマヒロは鼻で小さく笑う。一週間後にでも、ツテに頼んでスモトリ崩れか何かを2~3人このドージョーに殴り込ませればいい。そこへ自分が駆けつけ、一芝居打ち、腕を捻って退散させるのだ。以降は週あたりの金額が倍になる……グレーターヤクザらしい長期的経営展望である。 9

2012-01-16 23:14:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さて、帰る前に……ここのセキュリティ体制を聞いておこうか。俺が四六時中いれるワケじゃねえ。だが一度仕事を受けた身だ。あんたにもしもの事があっちゃならねえだろ」ヤマヒロが狡猾な質問をする。これは後々スモトリを送り込むための布石でもあるのだ「……安心しな、コンサル料は無料だ」 10

2012-01-16 23:21:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「かなり堅牢です」と長い白髭をしごきながらソダワ・ケンリュウ「ヤマヒロ=サンも見たでしょうが、入口は1つしかありません。しかもパスワード入力式のキーボード、網膜認証、ハンコ・スキャニングの3段構えで対応しています。どれかに問題があれば、殺人的な電流を流すことができます」 11

2012-01-16 23:27:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ふうむ」ヤマヒロは短い顎鬚を掻きながら、少々厄介なセキュリティだな、と値踏みしていた。「何か問題点が?」とソダワ。「シミュレーションしていた。相手がダイナマイトでドアを破壊したり、クレーン車で2階に突撃してきたらどうするかを。俺はそういう過酷な世界に身を置いていたからな」 12

2012-01-16 23:36:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ソダワはサツバツとした暴力的光景を思い浮かべ、思わず身震いした。「俺ァ、ツチノコ・ストリートで生きてきた。あそこに比べたら、ここはまるでニルヴァーナだな」ヤマヒロの言葉の半分はハッタリだ。だがそれを息を吐くように澱みなく行うのがプロフェッショナルのヤクザなのである。 13

2012-01-16 23:43:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

これはもう一押ししておくべきだなとヤマヒロは考え、勿体振りながら次の煙草をくわえた。「フゥーッ。まあ、そう心配しなさんな。仮にだぜ、セキュリティを突破し、誰かが侵入してきたとしよう。だが俺のカラ」「イヤーッ!」防弾フスマが突如破壊され姿を現す3人のニンジャ!ナムアミダブツ! 14

2012-01-16 23:54:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエエ!」悲鳴を上げるソダワ!チャブ前に座るハッカーたちは薬物と瞑想トリップのために反応が薄く、未だUNIXモニタを見つめてキーを叩き続けている!「ニンジャ!ニンジャナンデ!?」キーボード配置図の前で肉体鍛錬を行っていたハッカーが混乱してドージョー内を走り回った! 15

2012-01-17 00:00:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」グリーンエレファントがスリケンを投擲!「アバーッ!」体を45度に傾け同じ場所をグルグル走っていたハッカーが即死!「アイエーエエエ!」恐慌状態に陥ったチャブハッカーが、チャブ上で狂ったように飛び跳ねる!「イヤーッ!」ガスバーナがスリケン投擲!「アバーッ!」即死! 15

2012-01-17 00:06:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「殺したらハッキングできなくなるだろ?」2人の後ろから、おずおずと非ニンジャのタロが言う。「るせえなァ、兄ちゃん」ジロが気だるそうに後ろを振り返った「俺らのやることにセッキョー垂れないでよ。そろそろ殺すよ?」コワイ!弟が見せたその冷酷な目に、タロは思わず失禁しそうになった。 16

2012-01-17 00:15:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

響き渡る悲鳴!ニンジャ達はさらに5人ほど、射的ゲームを楽しむようにハッカーをスリケン惨殺!ナムサン!何たる非人道行為か!このジゴクめいた光景を後ろから見ながら、タロは恐怖に震えていた。これは本当に弟たちなのか?彼らはあの夜死んで、何か恐ろしい別のものに入れ替わったのでは?! 17

2012-01-17 00:23:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よし、ガスバーナ、もういい。殺しすぎると、ハッキングができなくなるからなァ」グリーンエレファントが制止した。しぶしぶ従う弟ニンジャ。グリーンエレファントは大股で闊歩しながら、血に餓えた猛獣の目でドージョー内を睥睨する「おい、一番偉いのは誰だ!?そこの鎧着てる野郎かァ!?」 18

2012-01-17 00:28:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエッ!」ヤマヒロは蛇に睨まれたカエルのように身を強張らせた。「……セ、センセイ、殺って下さい」同じく恐怖で身動きできないソダワが、押し殺した声で小さく耳打ちする「……殺人カラテでお願いします!」 19

2012-01-17 00:31:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「あんたがハッカー=センセイか?それとももしかして用心棒?」グリーンエレファントが鋭い目でヤマヒロに近づいてくる。「カラテ……殺人カラテをお願いします…!2倍……10倍払います!仇を……!」耳元で悲痛なソダワの声!愛しい門下生が何名も殺されたが、ソダワに戦闘能力は無いのだ! 20

2012-01-17 00:39:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……恐れ入りました。私とこの隣の爺さんが、ドージョーのボスです。何でもします。命ばかりは」ヤマヒロは突然ドゲザした。その顔は、恐怖と屈辱で赤子のように歪んでいた。彼はソウカイ・シンジケートが追っ手を差し向けてきたと考えたのだ。「センセイ!?約束が!?」ソダワは困惑する。 21

2012-01-17 00:46:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワオ!何だこいつ!ドゲザしやがったよ!」サブロはヤマヒロの兜を踏みつけながら笑う「殺しちゃおうか?」「やめとけ、ガスバーナ」ジロは懐からフロッピーディスク付預金手帳を取りだす「おい、爺さん!ここのハッカー全員使って、俺たちの預金通帳をカネで満タンにするんだ!今すぐやれ!」 22

2012-01-17 00:52:57
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