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    もう一言。文化振興関連予算、美術館・博物館の設置数、その来館者数などの多寡だとか、その開館時間の長短だとか、そういった事を「文化」の問題と言い募る向きは、気付いているんだかいないんだか、論点が明後日の方角を向いている。では、ひとまず。
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    ニセの問題をでっち上げ、ニセの解決策を唱える。以上、「美術」の珍景の一つとして採集した次第である。
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    あるいはだ。条例改正を断行し、市中の商業施設一切に、トイレの設置・開放を禁じてはどうか。その街では、美術館にしかトイレがないのである。
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    そこでだ。逆に、月1回、それも3時間しか開けない美術館、というのはどうだろう。正倉院のひそみに倣い、年1回でも良いかも知れない。滅多にお目にかかれないお宝という有難さが、否が応にも高まろうという寸法である。正倉院なんてムダだ、と言い募る人は、そう言えば滅多にいない。
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    すると、どうなるか。シフト制が導入される。即ち人員が増える。あるいは、残業代が増える。これまた人件費増である。
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    会場スタッフに任せっぱなしにも出来ない。バックヤードには閉館時間まで、管理も学芸も勤務しなければならない。本庁は朝から動いている。市長や教育長にハンコを貰うのに朝イチしか時間が取れないとあれば(例えばですよ)、開館時間に合わせて午後出勤という訳には行かない。
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    それでは延ばすのではなく、ずらすとして、午後1時開館、午後9時閉館としよう。これまでの来館者層のコアとされる「主婦」は、ちょっと行きにくくなる。夕食の準備があるからである。じゃあ週末に、となると、彼女たちはそちらの方が忙しい。昼食の準備もしなければならないからだ。
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    長時間の照明が望ましくない日本画や木彫など、他館からの借用期間が制限される場合も多い。これまでなら30日間借用できるはずだった作品が、21時閉館という事なら目一杯で20日間、という事になる。開館延長のお陰で目玉作品の展示期間が短縮、という事にもなる。
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    受付スタッフ、警備員、会場監視員などの人件費、館内の照明や空調にかかる光熱費も、これに比例して1.6倍となる。館の規模にもよるだろうが、年に軽く数千万円は余計にかかるだろう。納税者の中には、かえって頭に来る向きもあるのではないか。
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    念の為、この人は開館時間を午後にずらすだけでも良いという意見だが、まずは延長する場合から。10時開館で17時に閉まる美術館の閉館時間は、都合7時間である。これを21時までに延ばすと、延長時間は4時間、開館時間は約1.6倍となる。
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    この人は、閉館時間を延長すれば「きちんと市民の方を向いた行政サービスの象徴的な役割を担う」とも言っているから、折角の夜間開館時に閑古鳥でも、別だん構わないと言うのか知れない。では、その「象徴」にかかるコストを考えてみよう。単純な算盤である。
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    展覧会の観覧料収入は、「本庁」(都道府県庁や市町村庁、「出先」に対する語)の財布に入る。次年度に使える金が増える訳でもない。そもそも博物館法は、博物館(もちろん美術館を含む)に収益事業を禁じている。
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    そもそも大半の公立美術館にとって、入館料収入など無くたって良いのである。そんなもの、年間の収入に占める比率は微々たるものでしかない。受益者負担、という建前あって徴収しているまでの事だ。
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    「コストも増えますが増収にもなるし」との事なんだが、果たして本当に来館者は増えるか。多くの館がそれを実施していない理由は、馬鹿か怠惰かその両方か。
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    「いまの美術館は学生と主婦しか来ない場所になっている」という思い切った断言も見えている。これまた本当であると仮定しても、それは開館時間が17時までに限られている為だろうか。
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    「いま普通のサラリーマンは、残業なしで帰れる人などほとんどいない」のが仮に本当だとして、篤実な紳士にも愛する妻子の待つ家にすぐには帰りたくない日があるとしよう。晩飯はいらないよ、とメールを打ったら、さてどこへ。美術館に足を向ける事など絶対にあるまい。仲間とまずビールではないか。
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    「納税者の大半はサラリーマン。5時までで終わる美術館になんて行けるわけがない。自分が行けない施設になぜお金を出さないといけないのか。これで納税者の理解を得られるはずがない」とアツい直言であった。市民は総じて美術館を作る事自体は大歓迎、と見ているのであれば、楽観的に過ぎまいか。
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    その人は、夜間開館さえすれば、「人が来て大阪が豊かになり関西全体の起爆剤になる」(引用、以下同)と殆ど断言してしまっていた。来館者や経済効果の多少を、殆ど開館時間の長短に直結させているのだ。
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    大阪市立近代美術館(仮称)は21時まで開館すべし、との意見を唱える人がいた。名指しはしない。どういう人かは、ちょっとググればお分かりだと思う。その御意見は、様々な点で大胆であると思われた。
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