セシウムイオンの生物濃縮について
食品を通したセシウムによる内部被ばくは、「水俣病」を連想させるところがあるようです。水俣病は、チッソ水俣工場からの有機水銀が食物連鎖によって濃縮されたことが原因です。高濃度に汚染された魚を食べた住民の脳組織に「脂溶性」の有機水銀が沈着し、神経障害を多発させました。
2012-02-06 09:15:33一方、放射性セシウムでは、有機水銀のような「生物濃縮」はほぼ起きません。セシウムは、カリウムに近い「アルカリ金属」です。体内に取り込まれると、カリウムと同じように全身の細胞へほぼ均等に分布し、尿に排泄されていきます。これは、福島県内で安楽死となった家畜の分析でも確認されています。
2012-02-06 09:19:41■筋肉のセシウム蓄積は血液の数十倍 警戒区域の牛を調査 2011年11月25日15時7分http://www.asahi.com/national/update/1125/TKY201111250281.html
東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内の警戒区域にいた牛の筋肉に蓄積した放射性セシウムの量は、血液中の放射性セシウム量の20~30倍という相関関係が見られることが、東北大や大阪医科大、山形大、新潟大などの調査でわかった。血液から体内の放射性物質の量を推定するなど、人に応用できる可能性があるという。
調査したのは東北大加齢医学研究所の福本学教授(病理学)らのグループ。警戒区域で野生化した家畜の殺処分が進められているが、8月下旬から11月半ばにかけて殺処分された牛のうち、47頭を所有者の同意のうえで解剖し、筋肉や内臓、血液に含まれる放射性物質を調べた。
その結果、血液から1キロあたり60ベクレルが検出された牛のももから1800ベクレルが測定されるなど、筋肉から血液の20~30倍の放射性セシウムを検出。肝臓などの臓器は10倍ほどで筋肉より低く、セシウムが蓄積すると見られていた甲状腺ではほとんど測定されなかった。
①最近、東大放射線科の中川恵一が書いた本に、水俣病を意識して、多くの人が内部被曝を怖がる伏線が水俣病にあると記述しているので、びっくりした。水俣病が専門の私でも、臓器特異性の異なる内部被曝とメチル水銀を重ねて考えたことはない。もともとありもしない「伏線」を勝手に敷くわけは?
2012-02-12 17:54:38②放射性物質は重金属と異なり、体外に排泄されるから大丈夫(間違い)と中川氏は言うのだが、メチル水銀も体外に排泄され、脳以外の生物学的半減期はセシウムがやや長い。脳内残存水銀の多くは無機化されるが、神経系への影響は残る。この点は、中川氏の思惑とは異なり、放射性物質に似ているな。
2012-02-12 17:55:21③中川氏の本は、このような「ためにする議論」が結構多い。相手が言ってもいないことを言ったことにして批判し自分を正当化する。そして、部分的に加害企業のことや行政施策を批判してみたり、原爆を忘れてはならないと書いてみたり、彼の使うレトリックの種類は勉強になった。
2012-02-12 17:56:27④これは、こういう方々の特徴であるが、中川恵一氏は、自分への保険のために、ところどころで、被曝は少ないほうがよい、などと主張する。そして全体を「心配しすぎるな」という論調で貫き、リスクの判断材料は「正しい知識」という。しかし、その正しい知識は、この本のどこを読んでも得られない。
2012-02-12 17:56:50⑤得られるわけはない。医師でさえ意見が分かれるのに、素人に「正しい知識」という言い方をすること自体おかしい。こういうときの「正しい知識」とは、放射線の危険性については、両方の意見があるということをきちんと伝えること。これを、インフォームド・コンセントと言う。
2012-02-12 17:57:09⑥裁判の証人をして感じたことは、自分自身の医学的根拠をきちんと蓄積・検討するだけでなく、自分に反論する側の主張や論理をしっかりとつかむことが重要。そういう意味では、中川恵一氏やそのお仲間の主張はしっかり把握しておくとよい。ツッコミどころ満載。予習にもなる。
2012-02-12 18:00:38中川恵一氏の「東大話法」について考察しています。 http://t.co/IIayh8KN @st7q そういう意味では、中川恵一氏やそのお仲間の主張はしっかり把握しておくとよい。ツッコミどころ満載。予習にもなる。
2012-02-12 20:02:57「ダミー論証」「藁人形論法(ストローマン)」と呼ばれる詭弁の方法ですね。http://t.co/R349CNZs RT @st7q: ③中川氏の本は、このような「ためにする議論」が結構多い。相手が言ってもいないことを言ったことにして批判し自分を正当化する。・・・
2012-02-12 20:18:38面白かったです。水俣病でも東大関係で似たような方がおられました。素人でもわかる論理的矛盾を気にされなかったりします。偉すぎるのかな?RT @anmintei 中川恵一氏の「東大話法」について考察しています。 http://t.co/lwT4dSsm @st7q そういう意味では…
2012-02-12 20:22:27すみません。どうしても見てみたかったのです。RT @ankoutohirame 買っちゃったの?中川の本を。ブックオフに出るまで待てなかったの?@st7q 東大放射線科の中川恵一が書いた本に、水俣病を意識して、多くの人が内部被曝を怖がる伏線が水俣病にあると記述している
2012-02-13 00:37:08生物濃縮は,PCBなど難溶性有機化合物が脂肪組織に取り込まれ,食物連鎖を通して6,7桁も濃度が上昇することが見つかって,大きな問題になった。それに比べるとセシウムはメカニズムが異なり,濃縮は2桁程度なので顕著ではない。とはいえ,チーム中川の説明はメカニズムを何も考えていない。
2012-02-06 09:47:17福島沿海でとれた魚類のセシウムイオンについては,昨夏に100倍程度になるものが見つかっていて,カリウムチャネルを通じて取り込まれるものと考えられている。これは能動輸送であって,濃度勾配と逆にイオンが移動する仕組み。ただしカリウムと全く同じ振る舞いをするわけでもない。
2012-02-06 09:51:17自分でも去年の3月時点では,セシウムイオンの挙動をアルカリ金属一般の属性から見て,雨水や地下水に溶けてどんどん移動しているだろうと思ったものだ。教科書通りだ。しかしセシウムはちがった。ある種の鉱物にはまり込んで取れなくなり,土壌にトラップされることが分かった。
2012-02-06 09:57:19ただし,セシウムイオンが水にきわめて溶けやすいことは紛れもない事実で,教科書が間違っているわけじゃない。一方で,化学の実験に通じたものであれば,特定のイオンをサイズで選り分ける分子ふるいを知っていて,アルカリ金属といえどもそれぞれに個性があることをよく認識してはいる。
2012-02-06 10:01:23生化学や分子生物学を学んだ人であれば,細胞膜はイオンを選択的に通すチャンネルを持っていて,細胞内には体液中よりも高い濃度でカリウムが取り込まれることを知っているはず。セシウムもそれによって濃縮されることになる。ただし係数が違い,排出挙動も異なるわけで同一視はできない。
2012-02-06 10:06:04教科書に書かれているような普遍的な事実がひっくり返ることはまずない。ただ,その上でもっと個別的な法則が成立するわけだな。一筋縄ではいかない。よく日常会話でも言うよね。「それは深いなあ!」って。
2012-02-06 10:11:43すみません。チーム中川さんのリツイートに失敗していたのに気が付きませんでした。私の一連のツイートは,今リツイートした彼らの説明について見解を述べたものです。
2012-02-06 10:16:32放射性セシウムは蓄積するかといえば、摂取量と排出量のバランスで決まる平衡量まで「たまる」。しかし、たまるかどうかじゃなく、被曝量は総摂取量に比例するということですよ
2012-02-06 10:23:46濃度の平衡は基本的に同じ濃度(浸透圧,活動度)になるということですが,それは違いますね。 RT @kikumaco 放射性セシウムは蓄積するかといえば、摂取量と排出量のバランスで決まる平衡量まで「たまる」。
2012-02-06 10:27:42もっとも生物の場合でもイオンの移動は可逆的なので,脂溶性物質の濃縮のような極度の濃縮にはならないのですが。 RT @kikumaco
2012-02-06 10:29:42能動輸送の効果も排出速度に含まれています “@konamih: 濃度の平衡は基本的に同じ濃度(浸透圧,活動度)になるということですが,それは違いますね。 RT @kikumaco 放射性セシウムは蓄積するかといえば、摂取量と排出量のバランスで決まる平衡量まで「たまる」。”
2012-02-06 10:30:04それを「化学平衡」というのは違和感がありますが,海水中よりも濃度が高くなることは確かですね。 RT @kikumaco 能動輸送の効果も排出速度に含まれています “@konamih: 濃度の平衡は基本的に同じ濃度(浸透圧,活動度)になるということですが,それは違いますね
2012-02-06 10:33:00