SPEEDIが初期の避難に使えなかったわけ Flying Zebraさんのつぶやき

シミュレーションがどういう限界を持ったものかって事は、世間の人は余りイメージ持ってないよね。だから、いまだになんであれを使わなかったんだっていう批判がきえない。たぶん、だれか責任者を見つけ出して血祭りにしなきゃ収まらないって感じなんだろうな。 でも、実際には、放射能拡散の初期の避難に使うことは、技術的に不可能なことだった。 まあ、少し時間が経ってからの遣り様は、今から振り返るともう少し何かできたかも知れないけど、少なくとも最初のころは誰が悪いでもなくしょうがなかったとおもうんだなあ。
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Flying Zebra @f_zebra

国会事故調で班目氏がSPEEDIの結果を避難計画に利用することに否定的なコメントをしています。事故以来気象学の人たちの間では散々議論されてきたことですが、一般には未だ誤解も多く残っているようなので少し説明しておきます。

2012-02-16 19:14:10
Flying Zebra @f_zebra

まず、シミュレーションというのは一般的に不確実性の高いものですが、特に気象シミュレーションは実測された気象データから大気の動きを計算することはそれなりの精度でできても、未来の風向きを予測するような場合は非常に不確実性の高いものになります。

2012-02-16 19:14:50
Flying Zebra @f_zebra

事故の後、海外から色々な「放射性物質拡散予測」のコンター図が出ていましたが、全て実際に取得された(つまり事故後の)データを基に計算したものであり、実際に拡散する前に出すことは当然ながら不可能です。もちろん事後であっても活用の方法はありますが、それについては後ほど。

2012-02-16 19:15:25
Flying Zebra @f_zebra

原子炉で放射性物質の封じ込めに失敗し、放射性物質が外部に放出される、あるいは既にされたことが報告されると、当局は非常に短い時間で避難エリアを決定し、通知する必要があります。チェルノブイリの教訓からも初動が非常に重要であり、決定の遅れは許されません。

2012-02-16 19:16:02
Flying Zebra @f_zebra

未来の風向きを精度良く予測するのはそもそも困難ですが、仮にたまたま直近の計算結果が手元にあり、利用できる状態だったとして当局がそれを使うことができるでしょうか。先に述べた通り、未来の予測については不確実性が高く、全く逆に風が吹く可能性を捨てきれません。

2012-02-16 19:16:38
Flying Zebra @f_zebra

不確実な予想に基づいて避難の範囲と避難方向を指示し、結果的に風が逆に吹いて避難者の被曝を増やしてしまった場合、その責任は誰が取るのでしょうか。被曝してしまった人が、「まあ予測が外れたのなら仕方ない」と納得するでしょうか。あるいは、責任者が処罰されれば納得するでしょうか。

2012-02-16 19:17:16
Flying Zebra @f_zebra

法的に責任を問われることがないとしても、行政職員にそのような責任を負わせることはできません。結局、緊急時には同心円状に避難エリアを設定し、最短時間でエリア外に出られる方向に避難することになります。この方法であれば、事前に計画を立てておくのも容易です。

2012-02-16 19:18:06
Flying Zebra @f_zebra

では、気象シミュレーションは何の使い道もないのでしょうか。もちろんそんなことはありません。放射性プルームが形成された「後」の動きについては比較的高精度に予測できますし、降雨データと合わせると降下物の分布も予測できます。

2012-02-16 19:40:07
Flying Zebra @f_zebra

そして、これらの予測は各地のモニタリングポストによる空間線量率の計測結果で確認することが可能です。飯舘村や福島市の一部など線量率が高い場所を避難区域に含めることは、3月中に可能だったはずです。これを5月末まで遅らせたのは言い逃れようのない不作為だったと思います。

2012-02-16 19:40:41
Flying Zebra @f_zebra

データの公開方法については、何度か言っている通り闇雲に出せばよいというものではないと思います。中途半端なデータを出せば混乱を招くだけで却って危険を増してしまう恐れもあります。個人が正しく理解しないままパニックの中で自己判断して行動すればリスクを増やしてしまう可能性が高いでしょう。

2012-02-16 19:41:44
Flying Zebra @f_zebra

私が最初に見た拡散予測のコンター図はドイツが出したもので、大手新聞社のサイトに掲載されたものだったと思います。図中に英語で説明があり、実際の放出量は不明とした上で相対的な量を示した図であることは容易に読み取れましたが、掲載した新聞からして誤解していることが明らかでした。

2012-02-16 19:45:44
Flying Zebra @f_zebra

コンター図の色のイメージだけから、「こんなに汚染されている」「東京も危ない」といった誤解が蔓延しました。ついでに、「政府はこの事実を隠蔽している」といった陰謀論まで堂々と語られ、大手新聞社の報道も似たような理解レベルだったように記憶しています。

2012-02-16 19:46:27
Flying Zebra @f_zebra

コンター図という、分かりやすい表現ですら、あるいは分かりやすいために尚更、十分な説明なしに発表されると正しい情報が伝わらないという一例です。一方で、いつまでも公表を遅らせていると今回のように外国から説明なしに公開され、結局間違った情報が広まってしまいます。

2012-02-16 19:46:59