Twitter大学 - わいたんべさんの漢方学概論

NHK夜なのに朝イチ 漢方スペシャル」の内容に耐えきれずギャースカ言っておりましたら、わいたんべさんの有り難い講義が始まりましたので、個人的な勉強用としてまとめました。
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Y Tambe @y_tambe

日本だと、小柴胡湯や大柴胡湯での間質性肺炎が90年代にかなり大きな問題になったことがありますね。

2012-02-25 21:26:48
Y Tambe @y_tambe

それよりも古い例としては、甘草の主成分であるグリチルレチンによる、偽アルドステロン症がアメリカで問題になったことがある。甘草は、漢方では最もよく使われる生薬だし、漢方上では副作用がない「上薬」という区分で扱われているのにも関わらず、そういう副作用があったという事例。

2012-02-25 21:31:19
Y Tambe @y_tambe

中葯の成立過程を考えると、西洋での薬の考え方とは、別の考え方で発展してきた薬なので、そこらへんは面白いのだけどなぁ。

2012-02-25 21:33:08
Y Tambe @y_tambe

そもそも「副作用と有害作用」の混同もあるのでややこしいけど。「漢方(中葯)では、主作用と副作用という概念が発展しなかった」ということと、「有害な作用がない」というのとは別物なんだよなぁ。

2012-02-25 21:35:04
Y Tambe @y_tambe

元々、ヨーロッパは薬用植物資源には乏しい地帯だったわけで。だから大航海時代にはスパイスと同様、熱帯地方の植物資源の探索が重要だった。これに対して、周辺地帯との交易がさかんで、環境も多様な中国ではさまざまな生薬が知られ、入手可能になっていった。

2012-02-25 21:39:32
Y Tambe @y_tambe

中葯においては、「ある生薬(仮にAとする)を与えたときに、ヒトのさまざまな状態(体温とか血圧とか、その他各部位での生体反応)がどう変化するか」が、理論の軸になる。

2012-02-25 21:42:36
Y Tambe @y_tambe

例えば、Aに「熱を下げ、血圧を下げる」作用があるなら、それを「熱が高く、血圧が高い病態」の人に投与すれば、その病態を元に戻すだろう、というのが、その最も単純な理論。

2012-02-25 21:44:45
Y Tambe @y_tambe

このとき、Aについて「熱を下げる」「血圧を下げる」etc etcのどの作用が「主」でどれが「副」か、というのはあまり考えない。これが「主作用と副作用という考え方が発達しなかった」ということ。

2012-02-25 21:46:43
Y Tambe @y_tambe

ただし、Aという一種類の生薬が及ぼす作用が、そっくりそのまま、ある病気の病態に適合することは非常にまれ。この問題を解決するため、「方剤」が発達する。A単独でぴったり合わない部分を、BやCという別の生薬の作用で、補強したり打ち消したりすることで、病状にあったものとする理論。

2012-02-25 21:50:02
Y Tambe @y_tambe

あ、あくまで一私論ということで。いろいろな解釈があると思うんですが、とりあえずこう考えると、非常に上手く説明可能だと思ってます。 RT @drug_discovery とりあえず、生体での作用を全部キャラクタライズして、適切な病状に当てはめていく、という感じですか。

2012-02-25 21:51:19
Y Tambe @y_tambe

おそらく、その完成には非常に多くの「人体実験」の積み重ねがあったろうと思われるけど、こうして中葯では様々な方剤が生み出された。その結果として「葛根湯の証」などのように、その方剤先にありきでの「証」という考え方が重要になってる。

2012-02-25 21:53:49
Y Tambe @y_tambe

で、漢方(中葯)において、もっとも大きな課題がなんだったかというと、それは「生薬」の確保。薬草なんかには生息地域や収穫時期が限られるものがある。それを解決し、どこでもいつでも使えるよう、乾燥などの加工技術(修治/炮製)が発達した。

2012-02-25 21:58:50
Y Tambe @y_tambe

ただ、それでも生薬については、含有される薬効成分の量のばらつきなど、品質の確保というのが重要な課題になってる…例えば近年でも、タケダやツムラなどが、薬草栽培や優良品種の育種に力を入れてきたのもその顕われ。

2012-02-25 22:01:42
Y Tambe @y_tambe

これに対して、ヨーロッパの場合、大航海時代に南方の薬用植物を入手できるようになったのと、ほぼ時を同じくして、化学が発展してきたため、薬用植物そのものでなく、成分を抽出して用いる方向に進んだ。この方法なら、含有量のばらつき等が問題にならないことが大きな利点になった。

2012-02-25 22:04:32
Y Tambe @y_tambe

「漢方(中葯)に副作用がない」とする考えには、もう一つ「方剤」の組み合わせ方というのがあって。実は、生薬の一つ一つについては、毒性の強い弱いという概念が存在する。「上薬/中薬/下薬」という分類がそれ。

2012-02-25 22:12:38
Y Tambe @y_tambe

実はこの辺りも、いろいろと解釈が分かれて、都合のよい解釈もまかりとおってる部分があるのだけど…まぁ基本的に「上薬」は有害作用が少なく、「下薬」はそれが強い。

2012-02-25 22:14:51
Y Tambe @y_tambe

「上薬は有害作用が少なく、不老長生につながる万能薬」的な解釈もあるけど、どっちかというと「有害作用も少ないが、劇的な薬理作用もない」的な解釈の方が妥当っぽい。

2012-02-25 22:16:19
Y Tambe @y_tambe

「上薬には有害作用がない」って言い方もあって、そこまで行くとアレなのだけど…まぁ「砂糖の毒性」みたいなものだと思えばいいかなぁ、と。人参とか甘草なんかが上薬に当たる。

2012-02-25 22:18:04
Y Tambe @y_tambe

これに対して、下薬は「薬理作用も劇的だが、有害作用も大きい」もの。中薬は両者の中間って感じ。

2012-02-25 22:19:00
Y Tambe @y_tambe

で、上・中・下薬(上・中・下品)を組み合わせて方剤を作るのだけど、このとき「君臣佐使」という考え方がある。基本的には、主な作用を司るものを「君」として、それを補佐する「臣」、調整する「佐」「使」の組み合わせ。  http://t.co/e2Zs3aCO

2012-02-25 22:22:14
Y Tambe @y_tambe

そうすることで、単品として使うのに比べると、特定の有害作用が出にくいように方剤が考案されてきたという経緯が、確かに存在する。…もちろん、それがすなわち「副作用(有害作用)が『ない』」ってことにはならないことが大事なのだけど。

2012-02-25 22:25:23
Y Tambe @y_tambe

@usg_ringo @necohime あ、ごっちゃにつぶやいてるけど、一応「漢方」と呼んだ場合は、日本のものです。もちろん元々は中国由来ですが、比較的古い時期の中国の文献に従い、日本独自の処方をごく一部に含みます。中医/中葯はその後も中国で進展した。ブランチしたものの関係。

2012-02-25 22:35:11
Y Tambe @y_tambe

あと、漢方(中葯)は「効き目がマイルド」と言われることがあり、先述のように当てはまる点もあるのだけど、意外と方剤による部分もあって…というか、傷寒論に出てくる、いわゆる「古方」のは金元医学のものより効き目も強いし、その分好ましくない作用も強めに出てくることがある。

2012-02-25 22:39:22
Y Tambe @y_tambe

で、日本で傷寒論を重視した「古方派」の吉益東洞が、その有害な反応を説明するために用いたのが「瞑眩」で、これがホメオパスなんかが用いる「好転反応」って言い訳に繋がったきらいがあるので、その意味ではなかなか難しいというか、ややこしいというか…

2012-02-25 22:43:15
Y Tambe @y_tambe

実際、そこらへんは説明しだすとややこしいですからねぇ…伝わりやすさを考えると、不正確でも「漢方」という言葉を使うことは多々あります(実際僕も括弧書きにしてたように) RT @usg_ringo @necohime 番組的には中医学と和漢を弁別しているようには思えませんでした。

2012-02-25 22:45:14