ガントレット・ウィズ・フューリー #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「ガントレット・ウィズ・フューリー」#2

2012-02-27 11:53:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:キョートの歴史あるバトルテンプル「ボンジャン・テンプル」は、ニンジャとなって破戒した一人のバトルボンズ、グノーケによって壊滅した。グノーケは殺戮の限りを尽くしたのち、テンプルが護る宝具、6フィートのボー(打擲棒)を奪い去った。) 1

2012-02-27 11:53:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(生き残った若いボンズ、カンツァイは、突然のマッポー的インシデントに打ちのめされる。だが運命はそこで止まらなかった。秘匿されていたマジックアイテム、鋼鉄のガントレットが、彼の前に姿を現したのだ。ガントレットを手にした彼は、逃走したグノーケを追ってアンダーガイオンに降りた。)2

2012-02-27 11:55:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(俗世で彼はアコライトと名乗り、ヤクザ事務所でインタビューを試みる。彼が捜すのはブーンズ洞という謎の男。ヤクザはザイバツニンジャを呼んで対抗するが、ニンジャは到着前に死んだ!殺ったのはニンジャスレイヤー!かくして、二人の戦闘者がヤクザ事務所で睨み合う!カラダニキヲツケテネ!)3

2012-02-27 11:55:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「単純な興味で訊くが、ボンズがヤクザ事務所に何をしに来た?」ニンジャスレイヤーは言った。アコライトはまっすぐに彼を見据え、凛として答える。「先日、我がテンプルが、破戒したボンズの手で滅ぼされました。名はグノーケ。それが仇です。私は彼の行方を追っています……そして情報を掴んだ」 4

2012-02-27 12:00:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは目の前の赤黒のニンジャに対し、あけすけに言った。彼は若く、しかもこれまでの人生の殆どをテンプルでの修行に費やして来た。ゆえに彼は「まず疑う事からかかるべし」という、マッポー社会におけるザ・モースト・ベーシック・メソッドを持たぬ。 5

2012-02-27 12:06:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかしそれは彼の愚鈍をけっして意味しない。彼は相手の意志を、ニューロンの奥底にある善悪を、相手の目から読み取ろうとする。アコライトは死体を投げ込みながら現れたこの赤黒の殺戮者の目を見据え、ジゴクめいたアトモスフィアの中に、魂の切実な緊張感とでも言うべきものを感じ取っていた。 6

2012-02-27 12:12:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼のまっすぐな凝視を前にすれば、人は、必要以上に物を話してしまったり、狼狽したりするものである。今回ニンジャスレイヤーが自らアコライトの事情へ踏み込んだのは、彼のその濁りの無さに、なにがしかを感じ取ったからに他ならない。「仇はニンジャだと言ったな」「そうです」 7

2012-02-27 12:21:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アコライトは言った。「グノーケはニンジャになったと言い、教えを侮辱すると、テンプルの人間をほぼ皆殺しに……突然の出来事でした」「ニンジャとはそういうものだ」ニンジャスレイヤーは言った。「ゆえに、生かしておかぬ」ストームビートルの無惨な死体を示す。「特にザイバツのニンジャはな」 8

2012-02-27 12:26:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエ……」傍観を強いられているヒゲヤクザが再々失禁した。ニンジャスレイヤーは無視し、「ヤクザ事務所に、そのグノーケとやらの情報が?破戒してヤクザ・バウンサーにでもなったか」「その可能性もあります」アコライトは頷く「ブーンズ洞という闇ブローカーを当たれと、私の仲間が」 9

2012-02-27 12:35:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その情報収集にヤクザ事務所か」「ハイ」アコライトは頷いた。「闇ブローカーならばこういった方々がご存じかと」「事務所はランダムに選んだのか」「ハイ」アコライトは頷いた。そしてヒゲヤクザを見た。「質問を続けます。ブーンズ洞をご存じですか?」「ハイ」ヒゲヤクザは震えながら頷いた。10

2012-02-27 12:40:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ドジャーン!スモトリが直径4メートル弱の銅鑼を杖で打ち鳴らすと、ステージの両脇から、太腿も露わなチャイナ風キモノを着た十数人のオイラン達が現れ、下品なラッパのファズ・トーンをBGMに、淫靡な踊りを踊り始めた。「アカチャン!」「ワーオー!」録音マイコ合いの手音声の的確な再生だ。12

2012-02-27 14:10:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

円形テーブルの一つには、ハンチング帽にトレンチコート姿の男と、スキンヘッドのボンズが同席している。ボンズはステージ上のボンノじみた光景に顔を向ける。あなたがニンジャ洞察力の持ち主であれば、彼がその光景を視界に収めながら、焦点を合わせずに済ませている事に気づくだろう。 13

2012-02-27 14:16:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お飲み物ドスエ」カクテルサービスマイコが二人のテーブルへ近づく。マイコは「飲み放題」とショドーされたタスキをかけている。ハンチング帽の男は……ニンジャスレイヤーは、一礼してミドリナムとウォッカのカクテルを受け取った。マイコは笑い、「キャー!おボンズ様もどうぞ」「結構です」14

2012-02-27 14:22:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ノン・アルコールのドリンクは」ニンジャスレイヤーがマイコに聞いた。「エー?この人ボンズだからですか?キャーキャー!ヤンバーイ!おボンズ様はカワイイー!」マイコは嬌声をあげ、ボンズの頭に触ろうとした。ニンジャスレイヤーは遮り、「それぐらいにしておけ。チャを」「ハーイウフフ!」15

2012-02-27 14:26:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マイコが踵を返すと、アコライトは小さくため息を吐いた。「こんな場所にいては、オヌシの功徳にダメージがありそうだな」ニンジャスレイヤーは言った。「いえ」アコライトは首を振った。「そういったシステムがあるわけでは。……単に私が至らぬのです。慣れなくて」「慣れんでもよかろう」 16

2012-02-27 14:31:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

周囲の席の酔客が、あきらかに場違いなアコライトへチラチラと視線を送る。ステージの下ではバンブー花火が一斉に焚かれ、黄緑色の炎の噴水がオイラン踊りを妖しく照らし出した。「感謝します」とアコライト。「いや」ニンジャスレイヤーは首を振る。「礼ならガンドー=サンに。彼の情報収集だ」 17

2012-02-27 14:39:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

無論、この二人がヤクザ事務所での邂逅の後に意気投合してオイラン遊びをしにやって来たなど、ありえない。彼らはニンジャスレイヤーの協力者である私立探偵タカギ・ガンドーの調べを通し、ブーンズ洞とのコンタクト手段を見出した。それがこの店、アンダーガイオン繁華街区の「大きく慕情」だ。18

2012-02-27 14:46:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ボンズというのは私のいたネオサイタマではあまり見かけぬものだ」ニンジャスレイヤーは言った。「バトルボンズとなれば、そういったテンプル自体が皆無……映画やテレビの世界だ」「そうでしょうね」アコライトは頷いた。「テンプルの修行僧が外の世界と直接関わる事は殆ど無いのです」 19

2012-02-27 15:03:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私は神は信じぬ。申し訳無いが」ニンジャスレイヤーは言った。「……だが、それゆえ信仰者の心理に一定の興味はある」「ええ」アコライトは気分を害する様子もなく、「バトルボンズはキョートでも神話的な存在であると思われています」チャが運ばれて来た。マイコはクスクス笑っていた。 20

2012-02-27 15:08:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この世はマッポー」ニンジャスレイヤーは言った。「世間において、ブッダへの恨み節は殆どアイサツに近いほどだが」「そうですね」アコライトは言った。「ブッダはオーディンやゼウスのような神性と混同されており、人々に利益を与え、運命を管理する存在であると誤解されてしまっています」 21

2012-02-27 15:39:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」「ブッダをあえて偶像めかせる事で、話をわかりやすくし、それによって人々の信仰を広く得ていった……そのツケであると、私のセンセイは仰っていました。それによって人々は、運命の苦難を受け止められず、安易にブッダを憎む事を始めてしまったと……憎しみはその人自身をも苦しめると」22

2012-02-27 15:44:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「憎しみはその者自身をも苦しめる」ニンジャスレイヤーは繰り返す。アコライトは彼の目を見返した。そして続けた。「ブッダはイモータルめいた運命操作を行う存在ではありません。善意の介入も悪意の介入も無い。権利も力も無いのです。物事はただ様々な営みが折り重なって、導き出される物」23

2012-02-27 15:53:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「神では無いと」ニンジャスレイヤーは言った。「では信仰とは?救いとは?」「禅問答めいていますね」アコライトは静かに言った。「正直わかりません。私も未熟者だからです。私は、自ら戦うことだと考えています。それこそ、ブッダやオーディンに運命を預けるのではなく、自ら戦うことだと」 24

2012-02-27 16:03:16