神奈川県議会代表質問(2012年2月20日)「地域主権実現に対する取り組みについて」抜粋。

2012年2月20日の神奈川県議会本会議代表質問、長友よしひろ議員(民主党、相模原市緑区選出)の質問のうち、「地域主権実現に対する取り組みについて」の部分を文字起こししたものです。原典はインターネット中継録画(http://www.kanagawa-pref.stream.jfit.co.jp/vod_play.php?CNTID=13406&PREVPAGE=%CC%E1%A4%EB)です(Internet Explorerでご覧ください)。カッコ・改行・区切り線は私が付け加えました。  (参考トゥギャり)「神奈川県議会、2011年12月7日本会議一般質問、大都市制度についての黒岩祐治知事の答弁。」http://togetter.com/li/226840 「横浜市と横浜市民における大都市制度・都構想・特別自治市・道州制に関する一考察」http://togetter.com/li/238001
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長友よしひろ議員

 まず、地域主権実現に対する取り組みについてです。地域主権改革とは、地域のことは地域に住む住民が責任を持って決めることのできる、活気に満ちた地域社会を作ることであります。また、国が地方に優越する上下の関係から対等なパートナーシップの関係へと転換し、明治以来の中央集権体質から脱却し、この国のありかたを大きく転換するものであります。これまで神奈川県では他の自治体から一歩先んじる形で地域主権の実現に向けて取り組みをし、国に対しても、各自治体の自治性・自立性を高めるための地方自治法の抜本改正や地方自治基本法の制定を提案するなど、さまざまな提案・提言を行なってきたと認識しております。


 現在国は、地域主権戦略大綱や出先機関の原則廃止に向けてのアクションプラン等に基づいて地域主権改革を進めているところであります。この中で、昨年5月と8月にはいわゆる第1次及び第2次一括法が公布され、今まで国が法令で定めていた施設などの設置管理の基準を地方自治体が条例で定めることになったほか、県から市町村へ新たな項目の権限移譲が行なわれることとなりました。本県においても順次条例整備が進められており、第1次及び第2次一括法に関連してこの定例会にもいくつかの条例案が上程されているところです。これらを踏まえ以下何点か質問をいたします。


 最初に、今後の取り組みと考えかたについてです。このたび県では、平成24年度から26年度までを期間とするあらたな地域主権実現のための指針(仮称)を策定することになりました。その策定の方向(案)では、自らの地域のことは自らの意思で決定し、その財源・権限と責任をも自ら持つという地域主権型社会を目指すと述べられています。そこで、策定しているこの時期にあらためて知事に質問です。策定の趣旨と、今後の地域主権社会の実現に向けた県の取り組みを伺います。また、地域主権型社会の実現のためには道州制や大都市制度など行政体制のありかたのひとつの大きな課題であるとさまざまな場面で論じられています。事実、承知のように神奈川県においては道州制導入に向けた議論喚起を行なうだけではなく、道州制を推進させる法案の提案などを含め、政府や政党など各方面へ働きかけを行なってきた経緯があります。しかしながらこれまでの知事の発言は、行政体制のありかたについて現状維持と受け止める発言であったと認識をしています。改めて所見を伺いたいと思います。


 さらに、大阪府と大阪市における「大阪都構想」や横浜市等が表明し研究している「特別自治市構想」の議論の最大の発端はいわゆる「二重行政」と言われています。知事は、議会での答弁や報道機関等へのアンケートなどに対する回答で「県と政令指定都市と二重行政はない」との見解を示されていますが、横浜・川崎・相模原市の県内3政令指定都市の市長は、総じて「解決すべき県との二重行政はある」との見解を示しています。解決すべき二重行政について、あたらめて併せて見解を伺いたいと思います。


 次に、自治基本条例についてです。県の地域主権実現のための基本方針に基づく取り組みの主な成果のひとつに、平成21年3月に施行された「神奈川県自治基本条例」の制定があげられています。自治基本条例は、全国一律の政策ではなく、それぞれの地方自治体が住民の意志に基づいた地域にあった政策を進めていくことを可能とし、県民が主体となった県政運営を行なうための基本ルールとされています。同条例前文には明確に、主体的・自立的な県政運営の確立と県民意志に基づいた政策実現が示され、目的において、県民主体の県政の確立が位置づけられています。そして、新たな地域主権実現のための指針策定の方向(案)においても住民自治の拡充の観点、県民参加による県政運営の推進などが指針として示され、県民主体の県政の確立が取り組み方向で示されています。つまり、当たり前かもしれませんが、こうしたことからも、神奈川県自治基本条例の考え方と地域主権実現の方向性は同一のものであります。そこで知事に質問です。


 自治基本条例に対する知事の御所見を伺い、また、知事の考える住民自治というものはどのようなもので、条例に規定されているがいまだ制度化に多くの課題があり進捗が見られない「住民投票制度」県民投票についての見解と今後の取り組みについてを併せて伺いたいと思います。


 次に、地方自治法改正に関連してです。先に述べたいわゆる一括法のような包括的な議論を受けて、さまざまな分野で地域主権実現に向けた取り組みや法改正が検討実施されております。その大きな分野として、地方自治法や地方税法が挙げられます。そのひとつで、政府における「地域の自主性自立性を高める地方税制度研究会」で議論が交わされてきました、地方自治体の独自判断で政策減税を実施できる「地域決定型地方税制特例措置」通称「わがまち特例」が今通常国会で議論され成立される見込みであると言われています。まずは、固定資産税に関する特例措置2件からのスタートのことでありますが、全国一律の特例措置でなければ政策目的を達成することが困難である特段の事情がない限り、この「わがまち特例」が原則となっていくということが示されています。このことから、国が定める地方税の数々の特例の中から順次拡大拡充されることが予想されます。地方の裁量自由度が上がる点、地域の実情に見合った対策が講じられる点など、歓迎されるべきことと認識をしています。そこで知事に質問です。


 「わがまち特例」に対する所見と、今後の拡大拡充に向けた考え方を示していただきたいと思います。また一方で地方自治法改正に向けて検討されてきた項目のうち、地方税の賦課徴収等を住民の請求の対象とする制度については、全国知事会等からの反対などにより見送られたと聞いています。参政権のひとつに言うまでもなく住民の直接請求があり、条例の制定や改廃を地方公共団体の長に請求することができるわけでありますが、今後も地方税の賦課徴収等に関するものは対象から除かれていくことになります。住民自治の観点からも、住民の直接請求権の拡充は目指すべき方向であるのではないかと考えますが、併せて所見を伺いたいと思います。以上です。

黒岩知事

 長友議員のご質問に順次お答えしてまいります。地域主権実現に対する取り組みについて何点かお尋ねがありました。まず指針の策定の趣旨と今後の取り組みについてであります。私は「地域のことは地域で決められる社会」への転換を目指した取り組みが不可欠であると考えており、そうした考え方や方向性を整理し、県民の皆さんや市町村に示していくために、地域主権実現のための新たな指針を策定することといたしました。この指針では、県民参加による県政運営の推進など、住民自治の拡充や市町村の行財政基盤の強化に向けた支援など、団体自治の拡充を図ることに加えて地域主権の実践とも言うべき神奈川モデル構築の取り組みを位置づけたいと考えております。そこで、今月6日に開催した地方分権フォーラムでは、神奈川モデルのひとつである医療のグランドデザインを取り上げ、患者が納得できる医療を実現するためには地域の病院と住民が一体となって、現在の中央集権的な医療制度を地域主権に根ざした医療に変えていくことが必要であり、そうしたモデルをこの神奈川で作り上げていきたい、と訴えたところであります。今後ともこうした神奈川モデルを周知する取り組みを拡大することにより、地域主権型社会の実現に向けて、県民がその意義と効果を実感できるよう取り組んでまいります。


 次に、地方行政制度のありかたについてであります。国が全国一律の規制を定めて地方行政に関与する中央集権型の行政システムはもはや限界であります。そのため、今後の地方行政制度のありかたについて、道州制や大都市制度に関する議論、また広域連携の実績などを踏まえ、検討を進めていくことが必要であると考えています。


 次に、二重行政についてであります。本県としては、全国に先駆けて市町村への権限移譲に取り組むとともに、県の施策・事業の見直しを通じて、市町村との役割分担が適切になるよう、見直してまいりました。そのため現時点で県と市町村の間で二重行政について大きな課題があるとは、承知しておりません。これまでも県内の3つの政令指定都市の市長とは日頃から緊密な連携をとって率直に意見を交わしており、仮に二重行政と言われるものについてその弊害が指摘されるようであれば、県市間で話し合ってひとつひとつ解決していくものと考えております。


 次に、自治基本条例についてであります。この条例は、地域主権型社会の実現を目指し、県民主体の県政を行うための基本的なルールを明示しており、重要なものであると考えております。