QB0さんの語るイランとイスラム教

イランとイスラム教の歴史や背景について、QB0さんが語ります。
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キュゥべえ @QB0

イスラエルとイランが、なかなか緊迫した状態になっているみたいだね。そのことについてなんだけれど、少しまた真面目な話しをしてしまうけれどいいかい? 

2012-03-06 22:02:23
キュゥべえ @QB0

最初に断っておくけれど、今回は主にイランの話になるよ。というのも、中東といっても抱えてる問題や歴史もそれぞれだからね。その中でも、とくにイランという国はもともとかなりややこしい背景を持っている国なんだ。そのあたりのことについて、まず説明させてもらうよ。

2012-03-06 22:05:18
キュゥべえ @QB0

キミたちは「イスラム教」、あるいは「イスラム」という言葉を聞いたことがあると思うんだけれど、これはもともと現在のサウジアラビアのメッカ、及びメディナという都市を中心にして、預言者ムハンマドによって起こった宗教だとされている。その中心となっていたのは「アラブ人」という人々だった。

2012-03-06 22:08:23
キュゥべえ @QB0

一方で、イランはムハンマドが生きていた時代には、当時ササン朝ペルシアという国があった。ペルシアという名前はキミたちも世界史で習ったと思うけれど、古代から中央アジアを中心に大きな勢力を持っていた大帝国だったんだ。その代表的な帝国の一つが、そのササン朝ペルシアさ。

2012-03-06 22:11:15
キュゥべえ @QB0

ところが、ササン朝ペルシアもこの時代には、東ローマ帝国との衝突や、国内の政治の混乱のせいで徐々に衰退していたんだ。一方、あくまでアラビア半島の一部に勢力を持っていただけのアラブ人は、ムハンマドのもとでイスラムが布教されていくとともに、ものすごい勢いで勢力を拡大していくことになる。

2012-03-06 22:14:24
キュゥべえ @QB0

ムハンマドの代理人、あるいはイスラム教徒の指導者をイスラムのスンニ派では「カリフ」と呼ぶんだけれど、その二代目のカリフであるオマル(ウマル)の時代には、アラブ人とササン朝ペルシアとの間で「ニハーヴェンドの戦い」と呼ばれる激戦が起こり、これにササン朝ペルシアは敗北してしまうんだ。

2012-03-06 22:19:28
キュゥべえ @QB0

これによってペルシアはイスラムの影響下に置かれることになるんだけれど、こういった事情からもわかるように、アラブ人とペルシア人(あるいはイラン人)はもともとまったく別の歴史と宗教をもっていた民族だったといえるんだ。

2012-03-06 22:22:20
キュゥべえ @QB0

それが、イスラム教にもある変化をもたらすことになる。さっきボクは「スンニ派」といったんだけれど、イスラムには大きく分けて「スンニ派」と「シーア派」という大きな教派がある。といっても、スンニ派の方がイスラム全体では圧倒的に多数なんだけれど、シーア派とイランはとても関係が深いんだ。

2012-03-06 22:24:51
キュゥべえ @QB0

このスンニ派とシーア派が、そもそもどこで分かれたかといえば、ムハンマドの後継者(正統な代理人)は誰なのかという問題がそもそもの発端だったんだ。スンニ派はほとんどイスラム王朝の歴史といってもいいんだけれど、歴代のカリフやその後に起きたウマイヤ朝などを正統なものとした。

2012-03-06 22:27:39
キュゥべえ @QB0

一方でシーア派はムハンマドの甥であり、娘婿でもあったアリー(スンニ派では四代目のカリフ)と、その一族こそが正統な継承者であると考えた人々だった。そして、そのシーア派をもっとも支持したのが、イランとその周辺地域の人々だったんだよ。これにはもちろんそれなりの理由があるんだけれど。

2012-03-06 22:30:07
のり㌠ @taiga0518ba

スンナ派じゃなかった? RT @QB0: 一方でシーア派はムハンマドの甥であり、娘婿でもあったアリー(スンニ派では四代目のカリフ)と、その一族こそが正統な継承者であると考えた人々だった。そして、そのシーア派をもっとも支持したのが、イランとその周辺地域の人々だったんだよ。これには

2012-03-06 22:34:03
キュゥべえ @QB0

大きな理由としては、もともとイラン人とアラブ人の文化や人種が異なっていたこと、そしてシーア派がムハンマドの後継者としたアリーの子孫の中に、ササン朝ペルシアの皇帝の子孫を妻とした人物がいたからという話もあるんだけれど、どちらにしてもかなり民族的な意識が強かったみたいだね。

2012-03-06 22:34:52
キュゥべえ @QB0

その結果、イランとその周辺の地域は、イスラムの歴史を通してもシーア派の重要な拠点として、そしてまたペルシアの文化や学問、文化を継承した地域としても、様々な局面で関わることになる。いってしまえば、それがイランという国の特殊性でもあるんだ。

2012-03-06 22:36:54
キュゥべえ @QB0

ちょっと長くなってしまったんだけれど、これは「イスラム」といっても、それぞれの地域ごとにはこういった異なる歴史や、それぞれの文化、そして民族意識や、イスラムの受け取り方の違いがあることを覚えておいて欲しいんだ。それはこれからの話でも重要になってくるからね。

2012-03-06 22:38:33
蓮麻 @_Hasuma

@QB0 イスラームに関しては、この国では西欧の影響を受けすぎてか、「未開」であるだの、「土人」であるだのとレッテルが貼られるために、なかなか理解されませんで、こういうことをツイートしてくれるのはありがたいです。(俺はムスリムではありませんが、イスラームに興味があるので。)

2012-03-06 22:41:51
キュゥべえ @QB0

今Fateシリーズで「アサシン」として出てきているハサンは、シーア派から後世に分かれたイスマイール派の、そのさらに分派であるニザール派という宗派の伝説がモデルになっているみたいだね。さて、ここで少し休憩にしようか。近、現代のイランのことはまた後で話すよ。

2012-03-06 22:45:08
キュゥべえ @QB0

そろそろ続きをはじめようと思うんだけれど、いいかい? さっきのところで、シーア派がイランの中で主流派になったことや、イランがもともと独自の文化をもっていたことを説明したと思うんだけれど、そういったこともあって後にイランにはシーア派のイスラム王朝が誕生することになるんだ。

2012-03-06 23:18:38
キュゥべえ @QB0

シーア派のイスラム王朝というと少しわかり難いんだけれど、これに対してスンニ派のイスラムの王朝でとくに歴史上有名なのはオスマン・トルコ帝国じゃないかな。もちろん、オスマン・トルコには他の宗教の民族もいたんだけれど、イランのシーア派王朝がそれと併存していたのは重要な部分だよ。

2012-03-06 23:21:41
ゆねこ。 @SHINKO_PG

話の筋に全く関係ないが、オスマン・トルコという呼称は誤りだと記憶している。でも、何故だったっけ…。 RT @QB0: シーア派のイスラム王朝というと少しわかり難いんだけれど、これに対してスンニ派のイスラムの王朝でとくに歴史上有名なのはオスマン・トルコ帝国じゃないかな…

2012-03-06 23:23:50
キュゥべえ @QB0

話は、ここから近代のことになるよ。十八世紀にイランを治めていたのはガージャール朝という王朝だった。ところが、この王朝はあまり強力な国家とはいえなかった上に、十九世紀になるとヨーロッパ諸国の侵出の前に振り回されることになってしまったんだ。

2012-03-06 23:24:20
キュゥべえ @QB0

また、世界史の話になってしまうんだけれど、十九世紀のヨーロッパは英国が「3C政策」、ロシアが「南下政策」、そして統一されたドイツが「3B政策」という、それぞれ勢力を拡大するための政策を持っていた。そして、ちょうどそれらがぶつかる場所がイランとその周辺の地域になってしまったんだ。

2012-03-06 23:26:50
キュゥべえ @QB0

イランはもちろん、当時の非ヨーロッパ圏の中ではそれなりに強い国ではあったんだけれど、もちろん西洋の列強と渡り合えるはずもない。そのため、ときには英国に、ときにはロシアとたえず交渉を繰り返していくしかなかった。

2012-03-06 23:28:49
キュゥべえ @QB0

この時期のイランの考え方も、また様々で一部にはイスラム教の聖職者がいて、また一部には欧州の学問や文化に強い影響を受けた若者たちもあった。だけど、立場としては欧州におされ続けていたことに対して少なからずイランの人々が不満を持っていたのは確かだろう。その結果ついに大きな事件が起こる。

2012-03-06 23:31:27
キュゥべえ @QB0

それが、イラン最後の王朝になったパフラヴィー朝初代皇帝レザー・シャーによるクーデターだったんだ。レザー・シャーはもともと軍人だったんだけれど、強大な権力を掌握して一気にイランを改革してしまおうとしたんだよ。実際、これに対する当時のイラン人の期待は大きかったみたいだね。

2012-03-06 23:34:02
キュゥべえ @QB0

実際、レザー・シャーの改革はかなり上手くいったみたいだよ。途中に第二次世界大戦を挟んだものの、二代目の皇帝であるパフラヴィー2世の治世にもそれは継続して、イランは一気に近代化の道を突き進んでいくことになった。

2012-03-06 23:36:14