ＮＨＫスペシャル「調査報告：原発マネー　～３兆円は地域をどう変えたのか～」書き起こし・ほぼ完全版

とし @toshihiro36

<ナレーション>　原発事故で住民８０００人が避難を余儀なくされている福島県楢葉町。町の様子を確認にやってきた草野孝町長です。「あれが第二」町内にある東京電力福島第二原子力発電所です。事故が起きた福島第一原発、そこから１５キロのところに第二原発はあります。

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<ナレーション>　福島県は国と東京電力に対して、この第二原発も廃炉にするよう求めています。原発事故による放射線の影響で、警戒区域に指定された楢葉町。それでも草野町長は「原発が必要ない」とは言えないといいます。

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草野町長：　今までも原子力の依存度が１００％でここまでやってきた町だから…東電があったからこれだけ町も発展してきたわけだから・・・

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<ナレーション>　史上最悪のレベルとなった福島第一原発の事故。全国の自治体は原発にどう向き合おうとしているのか。　ＮＨＫは原発や関連施設がある全国４４の自治体を対象にアンケート調査を行いました。今後原発をどうするか尋ねたところ、脱原発を進めると答えた自治体は８つで、

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<ナレーション>　脱原発は勧めない、今は判断できないとした自治体が多数を占めました。その多くが「原発によって国や電力会社からもたらされる金がないと困る」と回答しています。交付金・寄付金・核燃料税・・・その全体像や使われ方は、これまで明らかになっていませんでした。

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<ナレーション>　私たちはこの金を“原発マネー”と呼び、取材を始めました。　いったいどれだけの金がもたらされてきたのか？今回の調査で自治体がこれまで受け取った原発マネーは総額３兆円を超えることがわかりました。

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<ナレーション>　全国の自治体で最も多い３０００億円を受け取っていた新潟県・柏崎市。地域振興の名目で次々に作られた公共施設。毎年、多額の金が国から入るしくみが出来上がっていたといいます。

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元・柏崎市長：　金を右から左に自由にできた。人には言えないが、喜びだ。

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<ナレーション>　原子力施設が集中し、電力業界から多くの寄付金を受けてきた青森県。取材を進めると、原子力施設がない自治体にも多額の寄付金が配られていたことがわかってきました。その目的は何なのか。

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元・青森県幹部：　根強い反対を抑えるために寄与するように運用しようと。“メリットがあるよ”というのを目に見えるようにやらざるを得なかった。

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<ナレーション>　私たちの電気料金から徴収され、国や電力会社が地元につぎ込んできた原発マネー。巨額の金は何をもたらしたのか。その知られざる実態に迫ります。

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<ナレーション>　福島県いわき市。町の一角に楢葉町役場の仮庁舎があります。１月、町は新年度予算の編成に追われていました。財政担当者は頭を悩ませていました。原発の運転を条件に自治体に支払われる原発マネー。福島第二原発が止まっているため、町の収入が急激に減る恐れが出てきたのです。

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財政担当者：　あったものがなくなるので、これはつらいですね。

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<ナレーション>　震災前の楢葉町の歳入です。５９億円のうち東京電力が収める核燃料税などの税金が１６億円。そして、国からの交付金が９億円。原発マネーが全体の４３％を占めていました。原発が止まったことで、来年度すでに２億円減ることが決まっています。

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<ナレーション>　さらに廃炉になれば原発がもたらす財源がすべてなくなってしまう恐れがあるのです。

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草野町長：　我々もこんな災害を受けて、今まで交付金を受けていたのを止められたら…一般財源はカラ交付金はゼロとなったら、どういう財源で…自主財源はカラっぽなんだもんな。これはダメあれはダメだと言われたら、どういう方法で復興財源にあてろっていうんだ。

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<ナレーション>　今、楢葉町の住民は町から離れた仮設住宅（福島県・会津美里町）で避難生活を強いられています。どれだけの住民が町に戻ってきてくれるのか。草野町長は不安を募らせています。原発事故の前、町では３人に１人が原発関連の仕事についていました。住民たちの気持ちも揺れています。

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住民（女性）：　それなりに潤っていたので…そんなすぐ簡単に廃炉にして…という考えはありますけど。仕事している人もいっぱいいたので…うん。

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住民（男性）：　子供がって考えるとこっち（避難先）に残りたい人が覆い多いですよね。そういうのを考えると、こっち（避難先）にいた方がいいのかな…

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草野町長：　若い世代はそうでしょうな…

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<ナレーション>　先月、草野町長は楢葉町の中心部を視察しました。４月にも行われる警戒区域の見直しで、将来住民が戻れる可能性が出てきたのです。

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草野町長：　毎日毎日、ここはにぎやかだったの。人いっぱいだったな、２時ごろ。　カラスの声しか聞こえない。

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<ナレーション>　かつては原発で働く人たちでにぎわった町。住民がいなくなったことで町民税など原発以外からの収入もほとんどなくなっています。