数学ガール『乱択アルゴリズム』からorionと学問の出会い
数学ガールの乱択アルゴリズムをしっかり読みました。数学的内容もさることながら、学問に取り組む姿勢などにかなり教えられるところがありました。以下つらつらと書きます。
2012-02-29 19:48:30べき乗を扱った部分で2^nの数の大きさについて書かれた部分で2^34は171億にもなるということ。これはよく言われる話では、「新聞紙を半分に折り曲げていくと26回で富士山を超える」などの話でべき乗級数の大きさはよく知られている。
2012-02-29 19:53:41ところで、現在の宇宙論では「多元宇宙論」と呼ばれる考え方があって、「今こうしてツイートしている僕」がいる世界と「めんどくさくなってツイートしなくなった僕」が別の宇宙に枝分かれして、その無限の積み重ねで宇宙は無限に存在するという考え方である。
2012-02-29 19:55:37この理論が本当に正しいかは僕にはわからない。しかし、別の宇宙が存在するかは置いておくとしても、「今の僕と違う僕になった可能性」は無限に存在することは明らかである。選択するということはそういうこと。
2012-02-29 19:58:29つまり、34回の選択を経ただけで、171億の「今とは違う僕の可能性」の屍の上に現在の僕があるわけだ。その確たる事実の上に立つと「一つの選択肢」というものの重みがのしかかってくる。「選択しなかった僕」をその都度殺していくことで僕という存在が形作られている。
2012-02-29 20:01:23一方で、ある選択をして、よくない結果になったとしても、それは無限(本当に無限の量なのだ)の中のたった一つの結果でしかない。今よりももっともっともっともっと悲惨な結果になっていたであろう結果も無限に存在するのだ。そう思うと気が楽になるし、自分が愛おしくなる。
2012-02-29 20:03:48茂木先生の言葉を借りるならば、この人生の「一回性」を愛でながら、かみしめながら生きていかなければならないのだなと再確認。以下本文を引用します。
2012-02-29 20:05:17P195 『《枝分かれ》が34段あったなら、171億7986万9184通りに分かれる。34回の枝分かれを過ぎれば、全人類を一人ずつに分けることが出来る。(続く)
2012-02-29 20:07:28(続き)たった34会の枝分かれが171億7986万9184種類の結果を生むのなら、過去から無数の枝分かれを経てきた僕達の現在は、いったいどれだけの可能性の一つなんだろう。』
2012-02-29 20:08:41僕は高校生のときに「数学は暗記だ」と思っていた。いかに例題の解き方を覚え、それを適応するかの問題で、覚えた「引き出しの量」によって数学の力(点数)が決まると感じていた。そのことは今でも大きくは変わっていない。
2012-02-29 20:11:26しかし、大学で塾講師、現在教師の日々を経て、この僕が感じていることを表す言葉が「数学は暗記だ」ではどうも伝わらないようだということがわかった。やはり「暗記だ」というと「解き方を覚える」のではなく「結果を覚える」(例えば公式丸暗記)ことをイメージしてしまう生徒が多いようだ。
2012-02-29 20:13:43長い間、僕はこのことをうまく伝えられずにいた。例えば、「点○○からf(x)に接線が2本引けるときのaの値を求めなさい」という問題のとき、ノータイムで接点を(t,f(t))と置けなければならない。つまりこれは、このような問題のときは、こう置くと「暗記」していないといけない。
2012-02-29 20:17:19そしてこのときの接線は y=f'(t)(x-t)+f(t) となるのだが、暗記というと、この「y=f'(t)(x-t)+f(t)」の式を呪文のように覚えてしまうのだ。。しかし僕が言いたいのは呪文のように暗記するのではなく、この式の表す「意味を覚えて」欲しいのだ。
2012-02-29 20:20:04このことについて非常にいい表現が数学ガールのなかでされていた。僕もこれからこの言い回しを使わせてもらおうと思う。以下引用。
2012-02-29 20:22:02P323 『「こういう練習は暗記とは違うよね。式変形を一字一句覚えているわけじゃなくて、論理の流れを覚えているんだ」「はい、ストーリーを覚えているわけですね」』
2012-02-29 20:23:27この「ストーリーを覚えている」という抜群の言い回し。僕が暗記と表現してしまっていたものは「ストーリーの暗記」だったのだ。やはり数学は言語で数式は物語だったのだ。
2012-02-29 20:24:59映画を見て、非常に気に入った場合、まず必ずストーリーを覚えている。ストーリーを覚え、何度も何度も見なおしたり思い出したりしている内に、セリフまで覚えてしまうということはよくあることだ。数学も全く同じなのだ。
2012-02-29 20:26:49ストーリーを覚えて、それから何度も何度も練習する過程を経た後に「y=f'(t)(x-t)+f(t)」という式の形そのものを「覚えてしまって」もそれは「y=f'(t)(x-t)+f(t)」を呪文のように暗記したのとはまるで意味が違う。
2012-02-29 20:28:06西きょうじ氏の読書についての講演(http://t.co/X320IGXY)で西氏は「言葉というものは全て借りものである。しかし、その言葉が自分の内側から出てきたとき、それは自分の言葉(オリジナル)となる」とおっしゃった。
2012-02-29 20:30:41数式もそれと全く同じなのである。全ての数式は「チャートの例題」からの借り物であっても、その式が自分の解答のストーリーの中から生まれた数式であれば、それは「自分の言葉」なのである。その「自分の言葉」を増やすことが勉強することなのだ。
2012-02-29 20:32:51このことを表す言葉として「ストーリーを覚える」というものほど優れたを僕は知らなかった。この言葉に出会えただけで僕は数学ガールを読んだ甲斐があった。
2012-02-29 20:35:06作者の結城浩氏ははやり言葉を大切にしてらっしゃる。それは、間に挟まれる素敵な数々の引用からもわかる。今回の「ロビンソン・クルーソー」からの引用も素敵だった。本編の中にもミルカさんが小林秀雄の言葉を引用し、「僕」が素早く「あ、小林秀雄?」と応じるところとかにやけてしまった。
2012-02-29 20:38:14僕と学問(主に科学)との出会いは、そこにあるものが「そこにあるもの」から「誰かが発見したもの」に変わったときであった。それからものの見方が全て変わった(ように思う)
2012-02-29 20:43:03「電子は原子の周りを回っています」と中学生のときに習った。「ふうん」と思った。そのときはそれが「そこにあるもの」だった。あたかも「原子の周りを回っている電子が目の前にある」かのように受け止めた。もしくは神様が「電子は原子の周りを回っています」と書いた紙を誰かが見つけたかのように。
2012-02-29 20:45:52