チューブド・マグロ・ライフサイクル #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より 「チューブド・マグロ・ライフサイクル」#3

2012-03-28 22:00:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンダーガイオン。薄暗い場末の将棋バー。カウンターに掛けられた「マイコと将棋な」「勝つとは」「ほとんど違法行為」などのいかがわしい桃色ネオンサインが、部分漏電でバチバチと青白い火花を散らす。壁に這う無数のLANケーブルの奥には、とても大きな王将の駒が見える。 1

2012-03-28 22:08:44
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壁際に並んだ小さな将棋席の一つに、コートを着た二人の男。一人は私立探偵タカギ・ガンドー。もう一人はイチロー・モリタ。白いテーブルには盤面が刻まれ、ウィスキーグラスとナッツを置くための窪みもある。二人は将棋を打ちつつ、ザイバツとヨロシサン製薬の陰謀について情報交換を行っていた。 2

2012-03-28 22:16:23
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「風邪薬工場に偽装か……」小型端末に目を通すイチロー・モリタ。フロッピーから吸い出した機密情報がコピーされている。「正確には、風邪薬工場が主体で、その中に違法研究施設がある」私立探偵が付け加えた。破壊工作は難しい。風邪薬工場に被害が及べば、値上で割を食うのはアンダーの市民だ。 3

2012-03-28 22:23:20
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ガンドーにとっては災難続きだ。バイオ鹿計画の機密フロッピーを入手したばかりに、事務所を襲撃されることとなった。今ではザイバツ・シャドーギルドの刺客が、彼と依頼人イチロー・モリタを狙っているのだ。依頼人の目的はザイバツの破壊。そのためにまずは敵の本拠地と全貌を知ろうとしている。 4

2012-03-28 22:36:05
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「施設は呆れるほど縦長だ。第8階層からアッパーガイオンまで続いている」ガンドーは網膜ディスプレイのワイヤフレム映像を確認しながら言う「地表部分は山林。オーガニック・マツタケやメイプルの群生地だ。公文書上は別のオーガニック食品会社が所有しているが、実際はヨロシサン製薬の敷地だ」 5

2012-03-28 22:45:56
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イチロー・モリタも、情報端末で施設内の地図を調べる「不明エリアが多いが…」「完全解読前にフロッピーを奪われたからな。情報は完璧じゃない。で、だ。あんたが死んだマグロみたいに寝てる間に、俺は第8階層の施設入口を偵察してきた。鹿と下層市民がひっきりなしに送り込まれ…・出てこねえ」 6

2012-03-28 22:54:30
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「……ここに間違いなくニンジャがいる。潜入し、尋問し、殺す」イチロー・モリタは静かな怒りを篭めて言った「ガンドー=サン、礼を言う。ここから先はニンジャの世界だ」トークンを盤上に置くと、足早に出口へ。酒には少しも口をつけていない。一刻一秒も無駄にできぬような焦燥感を纏っていた。 7

2012-03-28 23:04:46
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「……ゲホッ、ゲホーッ!ブッダ!待てよ!無謀すぎやしねえか……!」センベイを口に運んでいたガンドーはむせ込み、ズバリウィスキーで流し込むと、イチロー・モリタの後を追った。しかしノーレンを潜って街路に出ると、彼の姿はもうどこかに消えていた。……まるでニンジャのように。 8

2012-03-28 23:17:37
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「ニィイイイーッ」代わりに一頭の野良鹿が擦り寄ってきた。ガンドーは慌てずセンベイを与える。鹿は本能的にセンベイを好む。かつてブッダが鹿にこの聖なる食品を与えたからだとも言われる。「暗黒メガコーポのせいで、お前らもいい迷惑だよな」私立探偵は鹿の頭を軽く撫でてから、雑踏に紛れた。 9

2012-03-28 23:28:53
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研究施設の薄暗い廊下を、マサムネとヨシチュニは忍び足で歩く。「ガイオン下層部の暴動発生率が低い理由を考えたことは……あるか?」とマサムネ。「いいえ」「あれを見ろ」とマサムネがガラス越しに指差す先には、ドリンク製造プラントが無人稼動している「下層用には無気力物質が入っている」 11

2012-03-28 23:43:33
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「聞いたこと、ないですよ」「鹿狩り車の中でも言ったろ?全てを疑えと。ブッダは死んだ。この世界は……暗黒メガコーポ経済に支配されているんだ…」マサムネは嫌世的な口調で吐き捨てる。「そんな……」ヨシチュニはポケットに仕舞った三本目のタノシイに無意識に手を伸ばし、はっと自制する。 12

2012-03-28 23:50:22
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(((待てよ、この人は正気なのか?妄想サイコパスなのでは?)))ヨシチュニは怯えていた。漠然とした不安感から逃れるため、彼はマサムネと行動を共にしたが、その結果得られたのは、より具体的で得体の知れない恐怖だったのだ。養殖トラック水槽から突如水揚げされたマグロのような心境だ。 13

2012-03-29 00:02:59
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彼が思案する間も、マサムネのリードは止まらない。施設内の構造を初めから知っていたかのように、監視を巧みに逃れながら先へ先へと進む。マサムネがLAN直結でセキュリティドアを開くたび、ヨシチュニは後戻り不能の不安感を募らせた。「あなたは何者なんです?ハッカー?アナーキスト?」 14

2012-03-29 00:14:47
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「俺が何者だったのか……まだ完全に思い出せない」マサムネは美容遺伝子手術の産物である青い瞳で、廊下の先の闇を睨む「何か、欠落したピースがある。今確かなことは……少し前まで、俺は確実にこのバイオ鹿研究施設にいた。そして爆発……そう、爆発事故が起こり、その混乱に乗じて脱走した」 15

2012-03-29 00:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バイオ鹿研究所?それは一体……アイエッ…!」ヨシチュニが言いかけた瞬間、マサムネは彼の口を手で抑え強引に引き寄せた!ナムアミダブツ!そしてサイバーロッカーの陰に身を隠すよう促す!突き当たりの十字路から、ガラガラという音が聞こえた。クローンヤクザたちが台車を押している音だ! 16

2012-03-29 00:34:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(親愛なる読者の皆さんへ:一昨日は夜間連載時に誤字や誤訳など数々のケジメ級インシデントが発生したため、昨日一日反省させましたのでごあんしんください)

2012-03-30 20:50:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バイオ鹿研究所?それは一体……アイエッ…!」ヨシチュニが言いかけた瞬間、マサムネは彼の口を手で抑え強引に引き寄せた!ナムアミダブツ!そしてサイバーロッカーの陰に身を隠すよう促す!すぐ先の十字路を横切る、ガラガラという音が聞こえた。クローンヤクザたちが台車を押している音だ! 16

2012-03-30 20:51:03
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台車の上には、マスタード色の大きな袋に詰め込まれたバイオハザード廃棄物が積み上げられていた。むろん、中身はマスタードでもケチャップでもない。不意にバランスが崩れ、袋のひとつが転げ落ちた。袋に穴が開き、そこから突き出したのは……血まみれの鹿の角と人間の手!ナ、ナムアミダブツ! 17

2012-03-30 20:57:16
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「「アッコラー!ザッケンナコラー!」」クローンヤクザたちが同時に悪態をつき、痰を吐く。崩れた袋を二人ががりで積み上げると、廊下を先へと進んでいった。「あ、あれは一体」ヨシチュニは失禁せざるを得なかった。「俺たちが辿ろうとしていた……末路だ…」マサムネが押し殺した声で囁く。 18

2012-03-30 21:03:39
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「先に急ぐぞ。お前を逃がしてやりたい」マサムネが言う。サイバーロッカーの陰から出る2人。「何で僕を助けてくれるんですか……アイエッ!」ヨシチュニが質問しかけたその瞬間、マサムネは彼の口を手で抑え強引に引き寄せた!ガラガラガラガラガラ!今度は逆方向から別のヤクザ台車が接近だ! 19

2012-03-30 21:09:54
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台車には冷凍マグロやイカが積み上げられていた。体にはマグロ&ドラゴン社の刻印とバーコード。不意にバランスが崩れ、イカのひとつが転げ落ちた。「「ダッテメッコラー!」」クローンヤクザが同時に悪態をつき、痰を吐く。崩れたイカを二人ががりで積み上げると、廊下を先へと進んでいった。 20

2012-03-30 21:14:04