京都の大学で法律を教えているTAKASHIMA724氏の連ツイまとめ
- Arnold_S_Lee
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(1)本日は,ネット上の「名誉毀損」について,すこし考えてみます。そのきっかけは,近時,mogmemoさんというアカウントのツイートに関して,多くの意見が示されていることです。
2012-04-04 21:47:20(2)具体的には,次のtoteggerをご参照下さい。→http://t.co/Q3tDA5TK http://t.co/N7H9pKR8 http://t.co/6v1Mxp8k http://t.co/6iwMVMLM http://t.co/wuASLjqi
2012-04-04 21:47:37(3)このように意見は多いのですが,mogmemoさんが誰かをご本人自身が明らかにされないままアカウントを削除しておられます。mogmemoさんに@onodekitaさんから電話があったとの話も,mogmemoさんが述べておられるだけであり,事実の存否自体,確定されていません。
2012-04-04 21:49:08(4)仮にmogmemoさんが,示唆されている特定人であったとした場合,法的に微妙な問題が生じる可能性はあります。しかし,業務委託先との契約がどのようなものか,公務員であったか,活動資金に公金が含まれているかなど,事実自体に不明確な点がありますので,ここではコメントを控えます。
2012-04-04 21:50:10(5)私が驚いたのは,mogmemoさんの身元がいちおう明らかになった(あるいは特定人だと推定された)ことを前提としたうえ,その行動に意見を述べた人達に対し,「名誉毀損」や「人権侵害」等の批判がいくつか寄せられていることです。
2012-04-04 21:50:27(6)たとえば,@Hayakawayukioさん,@jun_makinoさん,@MasakiOshikawaさんの行為が,「人権侵害とか強迫に当たる」と述べるツイートがありますが,具体的にどの行為が人権侵害なのかは示されていません。→https://t.co/d5rmxppE
2012-04-04 21:50:49(7)また,youtubeの動画にリンクを張って意見を述べた@jun_makinoさんの行為が,名誉毀損等の不法行為になりうると述べるツイートもあります。→ https://t.co/KFzELlJC https://t.co/1mJ00puq
2012-04-04 21:51:35(8)さらに,@onodekitaさんについて「訴えられたら必ず負ける」と言いきっているブログすらあります。@ani2525さんについても,「人権侵害や名誉毀損で訴えられたら簡単に負ける」と言いきっておられます。→http://t.co/OvPzfb9W
2012-04-04 21:52:46(9)この2つの言明は,前提事実が明らかでないのに犯罪ないし加害者だと言いきっているのにほぼ等しいといえます。
2012-04-04 21:53:02(10)法律家としては,むしろこれらの主張にびっくりしています。責任があると主張する以上,少なくともその根拠を示す必要があるでしょう。根拠を示さずに名誉毀損だと主張することは,場合によっては,その主張自体が新たな名誉毀損となりうるからです。
2012-04-04 21:53:21(11)まず,具体的な行為を特定しないで人権侵害とか強迫(脅迫の間違い?)に当たると述べるのは問題外です。
2012-04-04 21:53:42(12)また,動画にリンクを張って意見を述べる行為が名誉毀損になるとすれば,表現の自由は極端に制限されてしまいます。そのため,そもそも意見の表明は,侮辱などに該当しない限り原則として違法ではないとされています。
2012-04-04 21:53:56(14)加えて,かりに名誉を毀損する行為があったとしても,それが公共の利害に関する事実であって、専ら公益を図る目的でなされた場合には,責任は生じません。民法709条に基づく民事上の名誉毀損と,刑法230条1項に基づく刑事上の名誉毀損の双方についてこのことは当てはまります。
2012-04-04 21:54:48(16)一般論として,社会的にひんしゅくを買う行為は隠れてなされることが多いと言えます。そしてこのような行為を明らかにすれば,行為者の社会的評価(=名誉)は低下します。もしこの場合に社会的評価が下がったからといって悪事を明らかにした者が責任を負うとすれば,悪事を暴けなくなります。
2012-04-04 21:55:36(17)したがって,名誉毀損は,「公共の利害+専ら公益目的の場合に責任なし」という枠組みとともに理解することが絶対に必要なのです。
2012-04-04 21:55:57(18)このように名誉毀損は,言論の自由,表現の自由と対立する場合が多いことに注意が必要です。名誉毀損をあまりに広く認めてしまうと,とりわけ政治家などの公人に対する,市民による言論の自由,表現の自由が侵害されます。この点で,「名誉毀損だ」との主張には慎重たるべきなのです。
2012-04-04 21:56:20(19)私見では,実際に今回の事件で,上記の方々につき,民事上,刑事上の名誉毀損に当たる事実の指摘は確認できないか,あるいは確認された事実からみて存在しないと評価できます。さらに「人権侵害」という非難については,法的に見て,どの条文に基づくどんな責任なのかも明かではありません。
2012-04-04 21:56:53(20)もう一つの問題は,親告罪の趣旨が理解されていないと思われることです。 すなわち,刑法230条に基づく名誉毀損罪は親告罪ですが,名誉を侵害されたと思う者がなんらアクションを起こさない間に,第三者が名誉毀損を主張するのは適切ではありません。その理由は次のとおりです。
2012-04-04 21:57:59(21)名誉毀損罪が親告罪とされている理由は,同罪の場合,本人の社会的評価を低下させる行為が対象になりますので,本人がこれを公にするのを望まない場合がある点に求められます。
2012-04-04 21:58:21(22)第三者が名誉毀損罪を主張することは,問題となる行為が社会的に見てひんしゅくを買うものであるとの主張を含みます。
2012-04-04 21:58:59(23)その指摘が事実であり,かつ本人ができるだけ事実を明らかにしたくないと思っている場合,この本人の利益を保護するために,告訴できるのは本人だけとされているのです。→http://t.co/s36qyoPh
2012-04-04 21:59:13(24)このように,親告罪の場合には告訴するかどうかは本人自身が決めることであり,無関係な第三者がこれに言及する行為自体が,親告罪の趣旨を理解しておられないことを表しています。
2012-04-04 21:59:55(25)なお,民事上の名誉毀損については,救済が必要だと指摘する意味はあると思いますが,そもそも本人以外には権利が帰属しませんので,やはり第三者が介入する必要性は低いといえます。
2012-04-04 22:00:13