「タケヤみそ」さんによる、赤みそ、白みその違い

信州みその場合、原料は同じで熟成が進むと色が赤くなるそうです。また、合わせみそを美味しくするコツも!
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タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

先日は「米みそ」「麦みそ」「豆みそ」という(どちらかというと業界サイドに寄った)分類の話をしましたが、一般の方には「白みそ」「赤みそ」などの色による分類の方が親しみやすいのではないでしょうか。これからこの話をしたいと思います。

2012-03-28 11:42:17
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ところが、いまこの文章をご覧の皆さんが思い浮かべている「白みそ」や「赤みそ」がみんな同じかというと、実はそういうわけではない、という問題があります。各地で食べられてきたみそが違うため、ある地域で「白みそ」と呼ばれているものが、他の地域ではそう呼ばない、ということはよくあるのです。

2012-03-28 11:48:31
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

例えば、関西地区で「白みそ」と言えば、正月にお雑煮に使ったりする、麹をたくさん使った甘いみそのことです。一方、中部地区で「白みそ」と言うと、辛口の淡色みそ、いわゆる“信州みそ”に分類される商品を指します。名古屋では、タケヤみそもよく「白みそ」と呼ばれます。

2012-03-28 11:49:15
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

中部地区では、ご当地の豆こうじを使った色の濃いみそを「赤みそ」と呼ぶので、信州みそは比較対象上「白みそ」になるのでしょう。一方、関西では普段は信州みそなどを使っているので、それに対する比較で、お雑煮用などのみそを「白みそ」と呼ぶのだと思います。

2012-03-28 11:49:51
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

「地域によって『赤みそ』と『白みそ』の基準は違う」でお話を終わりにするわけにはいきませんね。これから信州で作るタイプのみそ(業界分類でいう「米みそ」)を例に、赤みそと白みその違いを説明します。なお、他のみそだと少々特殊な事情があったりしますが、基本原理は同じです。

2012-03-29 12:29:55
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

最初に言っておきたいのは、「赤みそ」も「白みそ」も原料は同じだということです。信州みそなら原料は大豆・米・食塩。そして、蒸煮した大豆と米こうじ、食塩を混合して仕込み、発酵・熟成させるという作り方も同じです。その意味では「同じもの」なのです。

2012-03-29 12:30:33
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

では、何が赤みそと白みそを分けているのでしょうか。一番大きな要素は、みその「熟成期間」です。熟成させる期間が長くなるにつれ、みその色は濃くなっていきます。したがって白みそは熟成期間が短く、色の濃い赤みそほど熟成期間が長いということになります。

2012-03-29 12:30:57
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

お買い上げになったみそを自宅に置いておいたら色が変わってしまったという経験はありませんか。これもまったく同じ現象が容器の中で起きた結果なのです。みその熟成は包装・出荷後も続いているので、容器の中で熟成が進んで「赤みそ」になってしまったわけですね。

2012-03-29 12:31:25
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

したがって、色が濃くなったみそを食べても、まったく問題はありません。弊社の社員は自社のみそを、ある数量まで無償で持ち帰れますが、赤いみそが好きな社員(実は信州では多数派)は持ち帰ったみそをすぐには食べず、わざわざ家で熟成させて赤くしてから食べているくらいです。

2012-03-29 12:31:54
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

「赤みそと白みその違いは、熟成期間によるもの」というお話をしましたが、熟成期間を変える以外にも、みそメーカーには「みその色を変えるための技法」があります。それをいくつかご紹介したいと思います。

2012-03-30 12:15:39
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

まず、原料の大豆の処理についてです。白みそを作りたい場合、まず大豆についている薄皮を取り除きます。この薄皮に着色を促進する成分が多く含まれているためです。薄皮を乾燥状態で取り除くのはなかなか難しいのですが、米を精白する要領で取り除きます。

2012-03-30 12:16:23
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

逆に赤みそを作りたい場合は、皮を残したまま蒸煮処理をします。廃棄物を少なくする、という観点からは、こちらの方が「環境にやさしい」と言えるかもしれませんね(ただし、大豆の皮は飼料等の用途で売れるケースもあります)。

2012-03-30 12:17:14
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

また、白みそを作る場合は「大豆を煮る」処理をするのに対し、赤みそを作る場合は「大豆を蒸す」ことが多いです。これが色に影響するのは、何となく直感的にイメージできるのではないでしょうか。

2012-03-30 12:17:34
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

ご想像通り、大豆を水煮すると着色成分の一部は水に溶け出し、煮汁は排水として処理されるので、大豆の色、ひいてはみその色は白くなります。一方、蒸す場合は大豆に蒸気を吹き付けるので、着色成分は大豆の中に残ったままになります。

2012-03-30 12:18:06
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

これは味にも関係があります。煮た場合は大豆の味が(良い味も雑味も)溶け出してしまうので、できあがったみその味は淡泊になります。蒸した場合は大豆の味がそのままみそへ移行します。「白みそはさっぱり、赤みそはコクがある」という特徴は、熟成期間だけでなく、ここにも起因しているのです。

2012-03-30 12:18:30
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

よく、みその味(辛口とか甘口とか)は塩分で決まると思われているようですが、実は食塩の量よりも、大豆と米の配合割合の方が大きな意味を持ちます。米の方がでんぷん(分解されて糖になる)の量が多いので、一般に米の使用量が多いほど、みその味は甘くなります。

2012-04-02 12:31:01
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

赤みその代表である仙台みそタイプでは、大豆10に対して米は5(大豆の半分)しか使いません。大豆のたんぱく質が多く、コクのある辛口になります。一方、白みそとして有名な、関西のお雑煮用のみそは大豆10に対して米を20(大豆の2倍)も使います。当然甘くなるわけです。

2012-04-02 12:32:08
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

先週から赤みそと白みその話をしていますが、何となく「赤みそは辛く、白みそは甘い」という印象はありませんか? これについては例外もたくさんあるのですが、ある程度は合っていると言えます。これは先日お話しした、熟成期間と関係しています。

2012-04-02 12:32:36
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

味のバランスを考えて、長期熟成によってコクが出てくる赤みそは麹の使用量を控えて辛口にします。一方、短期熟成の白みそは米(麹)の甘みを生かすべく、米の配合を高くするケースが多いのです。ただし、繰り返しますが例外は多いです。味のバランスはみその個性になってきますので。

2012-04-02 12:33:31
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

2月の寒いころに、みそを仕込む桶やタンクについてツイートしました。それに関連して「仕込んだみそは、熟成中にかき混ぜるのですか」というご質問を受けることもあります。このことと、昨日までの「赤みそ・白みそ」の話は、実は密接に関係しています。

2012-04-03 17:19:10
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

まず原則として、みそを「かき混ぜる」ということはありません。みその中の酵母菌などは、基本的に酸素のない環境下で発酵に寄与する活動をする(嫌気性菌)ので、酸素を入れてあげる必要はないのです。

2012-04-03 17:19:39
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

一方、いわゆる「天地がえし」という技法もあります。これは、みその入っている桶から空の桶にみそを移し替えることで、みそをひっくり返す手法です。詳細はこちら。http://t.co/HbNiOAJM

2012-04-03 17:20:32
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

これはあえて酵母菌を空気に触れさせることで、より発酵を旺盛にする手法なので、これで作ったみそは他にはないコクが出ます。そして同時に着色も進むという特徴があります。したがって、コクのある赤みそを作るためには「天地がえし」をした方がいいということになります。

2012-04-03 17:20:57
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

逆に、白いみそを作りたい場合は、天地がえしなどはせず、できるだけ静かな状態でみそを発酵・熟成させた方がいいということになります。このように、使う技法によっても、赤みそと白みその違いは出てくるのです。

2012-04-03 17:21:15
タケヤみそ 株式会社竹屋 @miso_takeya

白みそ、赤みそときたら、次は「合わせみそ」ということになります。よくテレビなどで「どんなみそを使っていますか」という質問に「合わせみそ」と答える場面が放映されますが、実は合わせみそ(調合みそ)の出荷シェアは1割以下。そんなに合わせみそを使っている人が多いとは思えないのです。

2012-04-04 18:57:27