ドゥームズデイ・ディヴァイス #3

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
3
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(「ああ……ああ、思い出すぜ、畜生」「だろ」「あの脱走も、へへへ、後先考えなかったンだもんな」マコはフジオを見返し、汗を拭った。強いて笑い、紙袋に手を突っ込んだ。中の銃を握った。「お前には参ったよ、急に現れやがってさ……」「おれも同感だよ」フジオは頷いた。そして立ち上がった。 )

2012-04-19 09:53:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(第二部「キョート殺伐都市」より:「ドゥームズデイ・ディヴァイス」 #3 )

2012-04-19 09:53:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マコが紙袋から拳銃を取り出し、天井へ向ける。「ウオオオーッ!」BLAM!BLAM!BLAM!「アイエエエエ狂人!?」「アイエエエエ!」「ナンデ!?銃撃ナンデ!?」「イヤーッ!」「グワーッ!?」巡回白服の鎖骨のあたりにフォークが深々と突き刺さった。フジオが投げたフォークだ。 1

2012-04-19 10:06:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

苦悶する巡回白服の手には、見立て通りサブマシンガン!「イヤーッ!」「グワーッ!」稲妻めいて飛びかかったフジオの蹴りが白服のアゴを割る!白服が取り落としたサブマシンガンをフジオはそのまま掴み、カウンターでショットガンを構えたバーテンダーの肩と腕を銃撃した。「グワーッ!」 2

2012-04-19 10:12:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウ、ウオオオー!ウオオオー!」マコがむやみやたらに引き金を引きまくる。花瓶や陶製マネキネコが爆ぜ、「接待」とショドーされた額縁が傾く。ビュッフェ横の店員が隠し持っていたオートマチック拳銃を構えようとしたが、フジオがその腕を捻じりあげ、さらに首筋に一撃入れて昏倒させた。 3

2012-04-19 10:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

店内に警報音が鳴り響き、客はテーブルや椅子を倒しながら逃げ惑う。フジオも天井めがけサブマシンガンを撃ち、「容赦せんぞ!」と叫んだ。「アイエエエ!」「アイエエエ!モウダメダー!」何人かが叫んで気を失い、あるいは床に座り込み失禁した。「畜生、よしッ、畜生」マコが駆け寄ってくる。 4

2012-04-19 11:10:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「使えるか」フジオはマコにショットガンを投げ渡した。マコは受け止め、「お前、本当にやりやがって……それにしてもお前……お前本当に……」ブルブルと首を振り、フジオを見た。「次はどうしよう?」「『どうしよう?』か」「あいや、まあ、後は適当に逃げろって事にはなってる……んだが……」 5

2012-04-19 11:41:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

悲鳴と喧騒の向こうから、御用!御用!というケビーシ・ガードのサイレン音が近づいてくる。窓ガラスの向こうでは野次馬めいた市民が店内の様子を伺おうとする。フジオは威嚇的に窓ガラスを銃撃し、割り砕いた。「アイエエエ!」逃げ惑う野次馬!入れ替わるようにガード達が現れ、盾を構え展開! 6

2012-04-19 11:46:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アッパーガイオンの治安とはああいうものだ。マコ=サン」フジオは厨房の奥へマコを促し、言った。「何かの幸運で乱射を成功させても、ケビーシ・ガードがすぐに到着し、君を殺す。その覚悟はあったか」「……しょうがねえよ」マコは苦く言った。フジオは先導して奥へ踏み込む。 7

2012-04-19 11:51:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエ……殺さないでェ……」逃げ遅れた厨房のスタッフが数人、自発的にドゲザし、頭の上で手を組んで震えている。「なぁ、どうするんだ」マコは再度訊いた。フジオは振り返らず答える「上だ。組織とやらに合流する。詳細は道すがら聞こう」「合流?」「そうだ。そして、それらを全て殺す」 8

2012-04-19 12:02:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だって?」「それしかなかろう。地上から逃げる事が無理なら、上だ。そして、君を捨て石にした組織が君を今後どう扱うか、可能性を検討する事自体が面倒だ。家族とやらも、心配なのだろう?」「だけど……」「君程度の末端の人間への報復を思いつかぬ程に潰してやればいい。それから逃げろ」 9

2012-04-19 12:17:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人は業務用エレベーターを待つ。「何でここまでしてくれる」マコは訊いた。「おかしいだろ」「おかしい?」フジオは首を傾げた「何が。おれ達は無敵のギャングで、ゲリラで、怒り狂った騎士、その絆は血縁よりも分かち難く、」「……一人の恥は残る全ての報復によって雪ぐ、か」マコは苦笑した。10

2012-04-19 12:46:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やっぱりおかしいぜ、そんな……昔のさ……」「そういう君も、そうやって暗誦できるじゃないか」二人はエレベーターに乗り込む。「そりゃ当たり前だろ」とマコ。「だけど」「おれには、どうという事は無い」フジオは遮った「おれは保身の男だ……思い出とリスクを計りにかけて、よしとした」 11

2012-04-19 12:59:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

液晶パネルの階数表示カンジ数字が変化し続ける。フジオはマコを見た。「まだ理由が欲しいか」「だってよォ……納得し切れねえさ……」「納得できない行いだから。理不尽だから、やるのさ」「え?」「こちらの話さ」フジオは目を閉じた。12

2012-04-19 13:08:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハァーッ……ハァーッ……まて、取引だ」ニンジャは折れていない方の腕を掲げ、後ずさった。後ろは無情にも壁だ。「ユーザー数」と書かれた折れ線グラフ図のポスターが貼られている。「俺は、き、貴様の事を言わぬ。よしなに取り計らう」メンポと頭巾の一部がはね飛び、頬骨が露出している。 14

2012-04-19 13:51:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お、俺がお前らに何をした?まだ何も……」「……」対する赤黒のニンジャは無言で一歩踏み出す。その後ろで声。「残念ながら、おあいこってやつだ」発言者は薄汚れたロングコートを着、マフラーで覆面した大柄なニンジャだ。机の上のUNIXデッキを立ってタイピングしながら、瀕死の敵を見る。15

2012-04-19 14:04:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はザイバツに何もしちゃいなかった。そこの男もそうだ。そっちが始めた」タイピングを続けながら、「ま、無意味なもんさ……そういう議論は。それに、悪いなァ……お前がザイバツ・ニンジャだから、ニンジャスレイヤーが襲って殺した。今日の『これ』を、そう思わせる必要があるんでな」16

2012-04-19 14:12:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「え……な……?」ニンジャは今まさにカイシャクの拳を構える目の前のニンジャスレイヤーと、その後ろの謎のニンジャ……ディテクティヴと名乗ったニンジャのことを、困惑をもって交互に見た。「ハイクを詠め。フロッガー=サン」「待ってくれ……」「イヤーッ!」「グワーッ!」 17

2012-04-19 14:21:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーの決断的な拳がフロッガーの顔面を破壊し、爆発四散せしめた。「サヨナラ!」……この出口無きサーバー施設に奴隷エンジニア達を拘束、違法栄養点滴によって酷使していたサディストの死である。エンジニア達は既にこの二者によって逃がされていた。 18

2012-04-19 14:25:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……どうだ」フジキドはガンドーを振り返った。ディテクティヴ……つまり死の淵からカラス・ニンジャの力を得て蘇ったガンドー……は、黙々とキーボードをヒットし続ける。幾何学模様がモニタ上を旋回し、やがてそれが線に、点に分解され、散った。そして「ワカリマセン」の文言が浮かんだ。 19

2012-04-19 14:30:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ。ゼン・ドライブが通ったぜ」ディテクティヴがニンジャスレイヤーを見た。ゼン・ドライブとは、UNIXコンピュータの限界処理能力を超える立て続けのコマンド入力によって、セキュリティシステムをダウンさせる力技だ。モニタから白煙が立ち上り、焦げ臭い臭いがした。 20

2012-04-19 14:33:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガイオン地表に等間隔で建つ五重塔のなかには、こうして表面を奥ゆかしく偽装した違法施設が紛れている。幽閉エンジニアの解放は実際善行であるが、残念ながら、それが今回の彼らの主目的ではない。ディテクティヴはもはや言うなりとなった半壊デッキのスロットに、用意したフロッピーを挿し込む。21

2012-04-19 14:40:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「確かに、他のザイバツ施設と比べてセキュリティが随分おざなりだぜ」ディテクティヴが言った。「情報は正確だ……ディプロマット=サンのこと、これで信じる気になったか」「もとより、疑ってはおらん」とニンジャスレイヤー。「彼ら自身に何のメリットも無い行いだ」「だろ」 22

2012-04-19 14:48:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「重点!」モーターチイサイが飛び出し、UNIXデッキの周囲を飛行する。「つなぐぜ」ディテクティヴがデッキとモーターチイサイを手際よくLAN直結した。「ヌンヌンヌンヌン……」モーターチイサイがシーク音を鳴らし、赤いライトを点滅させる。 23

2012-04-19 14:58:29