正月の漫画のナウシカ:2010-2022
■ リアルタイムで進行している現実の出来事やスポーツの試合、決まった時間で流れていく映像作品の類はおのずと「実況」を生むけれども、個々人が個々人のペースで読み進めていく小説とか漫画でも、「あたまから順に、えんえんと書いていく」かたちでの感想の述べ方も「ある」のじゃないかと思う。自分ひとりが読むことだって、リアルタイムで進行している現実の出来事なのだから。
■ 毎年、帰省している正月は、実家に置いてある宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』(徳間書店)をはじめから終わりまでぜんぶ読み返すことにしている。いつから始めたかも思い出せない、年に一度の恒例行事。2010年からは、読みながら感想をツイートするという誰に頼まれたのでもない行為をしており、それでつぶやいてきたこれまでの分を一本に統合するとどんなものになるのかという興味から、自分でまとめてみた。
最初、2012年までの3年分をひとつにしたときには、いかにもスカスカしていた。それから毎年追加していくうちにどうなったか。
繰り返しが多くなった。
いちおう「去年までとは別のことが言えたら言おう」というつもりがないわけではないものの、去年までにつぶやいた分はとっくにおぼえていられない量になっている(ツイートしている最中にこのまとめを確認するようなおそろしいことはしていない)。
加えて、こちらのほうが深刻だが、同じ人間が同じ漫画を読む以上、何回めの再読であっても触れずにいられない場面や台詞がある。たくさんある。あるどころか、増えている。
「風の谷の私が 王蟲の染めてくれた土鬼の服を着て トルメキアの船で出かけるのよ」、「お前が私の死か…」、「ヒヒヒ…スゲエ」。あるいは、「オジルというイヤな奴」、「焼きしめたパン」、「ルンペン剣士」。風の谷を発つナウシカが城を見下ろす。ページの上を無数の人馬が縦横に疾駆するサパタの戦闘シーン。清浄の地へ行って帰るルートの不可思議さ。
こういった自分にとっての名場面・名台詞は、読むたびに何度でも、何かしら言ってしまう。これらに「何か言う」ことがすなわち「読み返す」ことなので、これはどうしようもない。
結果として、多弁なわりに多様ではない、たいへん長いけれどたいして深くはないまとめになっている。この漫画への理解が向上したとか、実のある話にはほぼなっていないが、そもそも、そういうことを目指しているわけでもなかったのは上述の通り。
それでも、同じ人間が同じ漫画を繰り返し読むうちに、「つぶやく感想を持つところとまだ持たないところがある」とか、「同じところへの感想でも、前とは変わる場合とほとんど変わらずリピートしている場合がある」とかいったことがだんだん見えてくる。自分がひとつの作品を受け取るのを繰り返すにつれ、その受け取り方にムラができていく過程――たいていは無自覚のまま起きるのだろう変化の様子――を、こうやってまとめることにより、ちょっとだけでも写し取れているようで、それは予期していなかった意外な収穫と言えば言えるのかもしれない、と、後付けでいま思った。そのほか思ったことは、その都度ぜんぶ、書き込んである。
■ 実際にツイートしているときは、上下2巻にまとまった豪華装幀版で読んでいますが、以下のまとめでは通常版の単行本(アニメージュコミックスワイド判)全7巻の巻数で区切りを入れてあります。
(通常版の第1巻、第2巻…という区切りを、豪華版では第1章、第2章…というふうに反映している)
実家から現在住んでいる部屋に戻ってきたいま、手元にはその7巻本しかないけれども、自分がした引用を見るに、豪華版では通常版と文字遣い(漢字/かな)が少しだけ変わっていたり、章ごとに表紙ページをつけた余波なのか、通常版では本を開いたときに左側に配置されていたページが豪華版だと右側に移って、以降しばらくページの左右が入れ替わったまま続いていくなど、微妙な異同がある模様。
もっとも、豪華版と通常版をいっしょにめくって見比べるのは、実家といまの部屋が同じ場所にない以上、わたしにはできない相談なので、異同だと思っていることの多くがただの勘違いかもしれません。対照表などどこかにないものだろうか。
(個人的には、通常版を揃えている人があらたに豪華版を買う意義はそんなにないと思います)
■ コロナ禍のため帰省しなかった2021年と2022年は、通常版単行本で読みました。
――2018/01/07+2019/01/19+2022/12/25 記
(説明)13年分のツイートを漫画の進行に沿って並べています。
2010年がこの色
2011年がこの色
2012年がこの色
2013年がこの色
2014年がこの色
2015年がこの色
2016年がこの色
2017年がこの色
2018年がこの色
2019年がこの色
2020年がこの色
2021年がこの色
2022年に書いたのがこの色
年を追うごとにツイートが増えていくので「やあね」と思う。そして、もはやわたしの目には色の区別がつかない。
あけまして
プレ初夢は怪談だった。自作の怖い話を自分で怖がる。おお、ちゃんとオチがあって怖い、と感心したのをおぼえている。内容は忘れた。
2010-01-01 07:39:07小島信夫『美濃』すごすぎる。《「元老院か猿か!」これが愉快にならずにいられようか。いかなる元老院も猿であり、いかなる猿も元老院である。そしてこの猿が元老院である以上は、何か経験談をきかせてもらいにこないわけには行かない。そういう顔をするだけにしたって、同じようなものだ。》p114
2010-01-01 10:29:15いきなりナウシカと関係ないが、小島信夫『美濃』はむちゃくちゃ面白いのでおすすめです。
去年は夕方スタートで、晩ごはんのあと寝てしまうという体たらく。日付が変わっても読み終わらなかった。 http://ow.ly/3wHwT
2011-01-01 08:54:46元日なので漫画版『風の谷のナウシカ』を読んでるんだけど、去年( http://t.co/KEiGSAl7 )とおととし( http://t.co/r6EG9wVY )のを見たらもうそこに感想があった。
2012-01-01 10:33:43(それらをまとめたのがこれです)