斎藤清二先生による「『あ!萌え』の構造」 その1

斎藤清二先生 @SaitoSeiji による連続ツイート、「『あ!萌え』の構造」のまとめ、その1です。 その2 http://togetter.com/li/318636
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斎藤清二 @SaitoSeiji

世の中には色々と深刻なことが多いし、考え出したらきりがない。そうこうしているうちに月日は過ぎてしまう。せっかくの連休なので、深刻な話題を離れて、以前から時々考えたり部分的に公開したりしてきたテーマについて連続ツイートしてみたい。タイトルは「『あ!萌え』の構造」である(笑)。

2012-04-28 20:19:49
斎藤清二 @SaitoSeiji

①人間というものはどうして「何かに魅惑される(being fascinated)」ようにできているのだろう?まあ、それを説明できたからといって、どうなるというものでもない。しかし何でも説明したくなるのも人間のさがというものだし、人間はしっくりくる説明に魅惑されるものでもある。

2012-04-28 20:23:00
斎藤清二 @SaitoSeiji

②もちろん「魅惑される」という言葉で扱おうとする現象を外延設定(扱う範囲を決めること)しておくのは大切だが、けっこう難しい作業だ。ここで扱いたいものは、もちろん特定の対象に限定されるものではないので、かなり広範(欲張ればあらゆる対象)にあてはまるような外延を設定したい。

2012-04-28 20:24:49
斎藤清二 @SaitoSeiji

③異性を対象とする場合の「恋愛」という現象は典型例として当然含まれるが「一目惚れ」とか「憧れ」とか「胸キュン」などもっと広範な現象を含む。もちろん対象は異性でなくてもいっこうにかまわず、同性でも、中性でも、両性でも、無性でも良いし、そもそも人間でなくとも良い(続)

2012-04-28 20:27:17
斎藤清二 @SaitoSeiji

④(承前)人間でない例としては、キティちゃんとか、リラックマとかが挙げられるだろう。もちろん生物でなくても良い(お月さまとか、古九谷の壺とか、ハイヒールとか)。あるものの全体でもよいし、部分でも良い(アキレス腱とか、鎖骨とか、目頭とか)。もちろん個体を越えた共通性でもよい。

2012-04-28 20:30:41
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤さらに形がないもの(思考や概念など)でも良い。特定の思考(知)に惹かれる態度を愛知(フィロソフィア=哲学)と呼び、この場合の「愛(フィリア)」も上記の外延に入る。しかし「愛」という言葉は意外と扱いにくい。「ペドフィリア」なんて言葉になると、いっぺんに怪しげになってしまう。

2012-04-28 20:34:44
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥結局のところ「魅惑される」という現象をなんと呼ぶか?という疑問について、なかなか一つの言葉で表すのは難しい。「関心」というのはなかなかいい線行っていると思うのだが、ちょっと迫力に乏しい。「志向性」だと、概念としてはほぼ完璧だが、何のことかさっぱり分からなくなる。

2012-04-28 20:41:43
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑦「フェチ」なんてのは、意表をついているが、けっこう今までの条件を満たす有効な概念(言葉)ではないかと思う。例えば「哲学者とは『思考フェチ』である」とか「外科医とは『手術フェチ』である」というような表現ができるかもしれない(もちろん腹をたてる人も多いと思うが)。

2012-04-28 20:44:01
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑧ところで、最近「萌え」という概念が流布しているのだそうで、これはなかなか微妙な感情を含む「魅惑される」という現象をかなり良い感じで表現しているのではないかと思うし、思考実験の素材の現象としては、かなり扱いやすいかなと思うわけなのである(「今更何を!」とあきれる人ご容赦w)。

2012-04-28 20:48:51
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑨・・で、「萌え」と名づけられている現象を考察の対象にしたいわけなのだが、当然のことながら、「萌え」という現象は、萌えを感じる「主体」と、萌えの「対象」と、おそらく「萌えそのもの(今のところ正体不明)」からなる認識構造として描写できるだろう(←本当かよ?)。

2012-04-28 20:52:21
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑩ここで、現象のイメージを具体的にする目的で萌えの対象を例示したい。ここでは仮に「眼鏡をかけた美少女」であるとする(うーむ。具体例を挙げると、急にこっぱずかしくなるが、これこそが「萌え」の本態を具現しているのであろう)。

2012-04-28 20:55:46
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑪・・で、この場合の主体であるが、同じ対象に「萌え」を感じない人も当然いるわけであるから、「萌え現象」が主体の個別性に関連していることは確かである。それは当然なのだが、この主体の問題はちょっとしばらく置いておいて、先に萌えの「対象」について考察してみたい。

2012-04-28 20:59:42
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑫「萌えの対象」を考えるとき非常におもしろいのは、この「対象」は、一見物理的実在のように見えるが、実はそうではないだろうということである。(続)

2012-04-28 21:09:40
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑬例えばある主体が「眼鏡をかけたフカキョン」という現実の人間(?)と、「眼鏡をかけたフカキョンのテレビ映像」と、「眼鏡をかけた美少女が登場するアニメ画像あるいはイラスト」と「眼鏡をかけた美少女フィギュア」に対して、ほとんど同じような「萌え」を感じるのは珍しいことではないだろう。

2012-04-28 21:11:27
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑭もし、物質的実在が「萌え」の対象であるとすれば、血や肉やタンパク質などの生体物質、液晶パネル、紙とインク、粘土やプラスチック(?)などが、どれも同じ「萌え」の対象となっているということになるのだが、断じてそんな説明はナンセンスである(←今更何をと思う人、ご容赦)

2012-04-28 21:13:25
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑮だから、少なくとも「萌え」の対象は、物理的実在ではないし、物質的実在が「萌え」をアフォードしているとは考えられない。タンパク質や紙やインクやプラスチックなどの物質にその「萌え」を付与するような「何か」を「萌えの本態」と呼べるのだろう。・・ここで一端小休止します。

2012-04-28 21:19:34
ゆば Yuba @yubafu

@SaitoSeiji 物質萌えというのもあり得ます!物質系の研究者なら物質萌えのはず。あ、それも物質の"属性"に対する萌えですね

2012-04-28 21:24:05
斎藤清二 @SaitoSeiji

@yubafu コメントありがとうございます。なるほど、確かに「物質萌え」はあり得ますね。おっしゃるとおり、物質そのものと、「物質性=物質を物質たらしめている一段階抽象度の高い何か」とを区別することは、考察を進めて行くためには重要なポイントですね。

2012-04-28 21:38:39
斎藤清二 @SaitoSeiji

NHKスペシャル「新型うつ」を見ていたら、非常に中途半端な気分になってしまった。おまけに今日は仕事がちっとも進まなかったので、気分転換に昨日の連続ツイートを再開したい。タイトルは「『あ!萌え』の構造:その2」である。

2012-04-29 22:40:42
斎藤清二 @SaitoSeiji

①さてそもそも、私にとって興味があるのは、「人間というものは、どうして『何かに魅惑される(being fascinated)』ようにできているのだろう?」ということなのであるが、この「どうして?」というのは、また別の形で表現することもできる。

2012-04-29 22:42:57
斎藤清二 @SaitoSeiji

②それは、以下のような二つの疑問のセットとして、最も適切に表現されるだろう。 1)「私が魅惑される○○とは何か?」 (対象への問い) 2)「○○に魅惑されるこの『私』とは何か?」(主体への問い) (とりあえず○○には何を代入しても可)

2012-04-29 22:45:12
斎藤清二 @SaitoSeiji

③これらは極めて実存的な問いであり、ここで初めて萌えの対象だけではなく「萌えの主体」が問われることになる。しかし、ここでやっぱり疑問が生ずる。私が○○に魅惑されている時、私は○○がとても好きだし、○○によって至福を感じる。なぜ私はそこで、わざわざさらに問いを立てる必要があるのか?

2012-04-29 22:47:31
斎藤清二 @SaitoSeiji

④「私は○○がとても好きだ」という現象は、誰からもそれについてけちをつけられるいわれはない! まずそのことを確認しておく必要がある。つまり「私が○○に魅惑されている」ということは「説明しなければ価値を剥奪されてしまう」ようなことではないはずのだ。

2012-04-29 22:49:52
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑤しかし、どうもそれだけでは済まないようなのだ。多くの場合、私達は、そこから一歩先に踏み出したくなる。さきほど挙げたような疑問が自然に湧いてくるのだ(別に湧いてこない人がいてもそれはそれでよいが)。しかし通常、この疑問について熟考することには困難が伴う。

2012-04-29 22:55:18
斎藤清二 @SaitoSeiji

⑥本題に入る前に妨害要因のいくつかを明らかにして、前もって防止する方法を考えておきたいと思う。このような考察を表明するとすぐに次のような言説が投げ掛けられる。 「○○なんて、結局はただの△△に過ぎないのさ」 「○○が好きだなんて、お前は単なる■■に過ぎないのさ」

2012-04-29 23:01:12
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