ＮＨＫスペシャル「コンピューター革命　最強×最速の頭脳誕生」書き起こし　#nhk

とし @toshihiro36

<ナレーション>　神戸港に浮かぶ人工島を走るポートライナー。去年ちょっと変わった名前の駅が誕生しました。（アナウンス「京コンピュータ前でございます」）　世界一の計算能力を誇る、スーパーコンピュータ「京」。熾烈な開発競争を制し、日本から８年ぶりに生まれた史上最速のコンピュータです。

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<ナレーション>　１秒間に１兆の１万倍、１京回という爆発的な計算能力。「京」はこの世に存在するあらゆるデータを呑み込み、しらみつぶしに計算します。そこから人類のさまざまな夢をかなえる方法を探りだします。

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<ナレーション>　画期的な抗がん剤の開発…これまで３年かかっていた計算をわずか１日でこなす「京」の登場で、夢の新薬が期待されています。人体の詳細なデータを入力してコンピュータ上に作りだした心臓。あらゆる治療を事前に試して、助ける方法を見つけます。突然死のリスクも予測できます。

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<ナレーション>　コンピュータ王国アメリカも負けていません。人間のように考え、言葉も理解できる最強頭脳が誕生しました。病気の症状をコンピュータに説明すると、過去の膨大な症例からたちどころに病名を診断、治療法も教えてくれます。バーチャル名医の登場です。

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<ナレーション>　２１世紀に入り、幾何級数的なスピードで進化を続けるコンピュータ。それは１７世紀ガリレオの大発明、天体望遠鏡にもたとえられます。天体望遠鏡が数万光年先に輝く星々、つまり過去の映像を映し出すものだとしたら…スーパーコンピュータは未来を見せてくれる望遠鏡です。

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<ナレーション>　未来の望遠鏡、コンピュータ。最強そして最速の頭脳誕生は、私たちに何をもたらすのでしょうか。バラ色の未来か、それとも・・・。

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<ナレーション>　日本で誕生した最強の頭脳。そのコンピューターを開発した独立行政法人、理化学研究所です。世界各国から名だたる研究者が、連日視察に訪れています。お目当てはもちろん、スーパーコンピューター「京」。富士通と共同で、７年かけて開発されたものです。

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<ナレーション>　去年、計算速度を競う国際大会で、２位中国に４倍という圧倒的な差をつけ世界を驚かせた「京」。それまでライバルアメリカに後れをとり、最近は中国にも抜かれるなど低迷を続けてきた日本のスパコン開発にとって久しぶりの快挙でした。

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米・テネシー大教授：「京」はとても素晴らしいコンピューター。歴代のスパコンと比べてもダントツです。

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中国科学院・研究員：こんなに大きなコンピューターは、今まで目にしたことがありません。本物を見たときは、あまりに衝撃的でした。

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担当者：これが「京」の心臓部です。高性能なＣＰＵがシステム全体で８８０００個も使われています。

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<ナレーション>　世界最速の計算能力とは、１５けたの掛け算や足し算といった複雑な計算。「京」はこうした計算を１秒間に、１兆の１万倍…１京回も行います。これは全世界の７０億人が不眠不休で計算しても、１７日間かかる量です。人類が初めて手にした、ずば抜けて高い計算能力。

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<ナレーション>　それを駆使して計算するのは、ビッグデータと呼ばれる膨大な情報です。いま私たちの日常の行動は、知らぬうちにデータとして蓄積されています。それに加え、人類が残してきたあらゆる記録もデジタル化されています。これがビッグデータです。

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<ナレーション>　その量は５年で１０倍、１０年で１００倍と倍々ゲームで増え続けています。「京」はこの膨大なデータを一気に呑み込み、すさまじいスピードでしらみつぶしに計算する能力があります。「京」の登場で、あまりに計算が複雑で、これまで諦めていたことに挑戦できるようになりました。

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<ナレーション>　いま従来よりもはるかに治療効果が高い抗がん剤の開発が始まっています。これは病気を引き起こす原因となっているタンパク質。中央にポケットと呼ばれる穴が開いています。ここにタンパク質とくっついて正常に働かせる化合物、つまり薬の素を見つけるのが新薬開発で最も大切な作業。

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<ナレーション>　言ってみれば鍵穴の空いたタンパク質に、ぴったりと合う鍵をみつけるようなもの。ところが、この鍵となる化合物は、現在わかっているだけで数百万個も存在しています。さらにタンパク質自体も数万種類あります。

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<ナレーション>　これまでのコンピューターだと組み合わせを試すのに３年以上かかり、開発を断念することもしばしばでした。しかし、それが劇的に変わろうとしています。「京」を使えば３年かかっていた計算が、わずか１日で行えるようになります。

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<ナレーション>　さらには理論上数十億あるともいわれる未知の化合物も探し出し、しらみつぶしに試すことが可能になったのです。