社会福祉士から見た生活保護の扶養義務についてのあれこれ

せなみ氏(senami_a)さんのツイートをまとめました。
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@senami_a

生活保護における扶養義務の強化が国会への法案提出も含めて具体的な話になっていきそうな流れなので扶養義務について簡潔に少し書いておきます。

2012-06-03 13:22:12
@senami_a

扶養義務の議論については民法で定められている扶養義務にかかわる4つの考え方と生活保護における扶養援助の考え方を整理しておくといいかなと思います。まず民法上の4つの考え方とは「絶対的扶養義務関係」と「相対的扶養義務関係」、それから「生活保持義務関係」と「生活扶助義務関係」です。

2012-06-03 13:34:06
@senami_a

まず民法は730条における扶養義務の規定は「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」というものです。それから877条の1「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」がいわゆる絶対的扶養義務関係、→

2012-06-03 13:45:58
@senami_a

同条の2「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」が相対的扶養義務関係にあたるものです。

2012-06-03 13:48:55
@senami_a

別に752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められており、これと760条「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。 」あたりを加味して、夫婦間と義務教育修了以前の子に対する扶養の義務を生活保持義務関係といいます。

2012-06-03 13:56:39
@senami_a

(あ、すいません。生活保護手帳のうろおぼえで書いていますがぼく自身民法については専門的に勉強したわけじゃないので細部の解釈とか違ってるところがあるかもしれません。ざくっとした理解としてきいてもらえるとありがたいです。)

2012-06-03 13:58:31
@senami_a

「生活保持義務関係」というのは夫婦間と未成熟の子に対する親の義務でこれは「最後のパンの一切れまで分け与えるべき関係」ともいわれる強い義務関係です。ネット検索した弁護士さんのサイトには「権利者に義務者の生活程度に均しい生活を全面的に保持させる内容」と書かれていました。

2012-06-03 14:05:01
@senami_a

で、これ以外の扶養義務関係は「生活扶助義務関係」です。これは別に自分と同等の生活を保障しなければならないというわけではなく、一般的な親族間の扶助として通常は生活の単位を別にしていても何か困ったときには助け合いましょうという偶発的、一時的な比較的ゆるい義務関係ということになります。

2012-06-03 14:10:47
@senami_a

これらについての基本的な考え方は「そのような関係にある」ということであって、これを守ってないから即「違法である」とか「不正」であるとか「罰則がある」とかいうことではなく、民法の規定にのっとって適正な扶養の履行を家庭裁判所に申し立てることができるよという根拠の法令だと思います。

2012-06-03 14:16:12
@senami_a

で、これらひっくるめて生活保護が親族の扶養についてどう考えているかというと①特別に認められる事情がない限り同居している親族は基本同一世帯としてその収入はすべて世帯の収入として算定してその上で一家として生活保護を受ける必要があるかどうかという判断をします。 →

2012-06-03 14:23:34
@senami_a

②逆に言えば同居してない親族は「生計を一にするもの」とみなされないので、Aさんが生活保護を申請しているからあるいは受けているからといって別世帯で別の生活をしている親族の収入がいくらあろうと自動的に「Aさんが当然受けられるべき扶養の分」として生活保護費を差し引かれたりはしません。

2012-06-03 14:28:28
@senami_a

生活保護制度は国が憲法に基づいて保障する生存権の具体的な実現であり、命にかかわる最後のセーフティネットとして絶対にまず飢えてる人を助けなきゃいけないし生活困窮している人を見捨てるわけにはいかないからです。生活保護法第一条に国家責任を明記していることは伊達じゃないわけです。

2012-06-03 14:32:56
@senami_a

生活保護法の最も根幹となる四原理というのがあってそれは①「国家責任の原理」②「無差別平等の原理」③「最低生活維持の原理」④「補足性の原理」ということになります。で、この中の④「補足性の原理」が生活保護法上、扶養義務を求める根拠となるところなので次に引用しておきます。

2012-06-03 14:38:59
@senami_a

第四条  保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。 →続く

2012-06-03 14:40:51
@senami_a

2  民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。 3  前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

2012-06-03 14:41:29
@senami_a

そうは決まっているものの実際には目の前で飢えてる人の生存保障のほうが優先するべき事項なので、役所としては別居(別世帯)の親族に対しては、①仕送りをもらっていればその分の金額を差し引いた生活保護費を支給し、②もらってなければ扶養義務の履行を求めるアプローチを行うことになります →

2012-06-03 14:50:52
むすっぴさん @musutapiki01

横槍ですがこれは正確ではないです。 RT @senami_a: ②逆に言えば同居してない親族は「生計を一にするもの」とみなされないので、

2012-06-03 17:58:48
むすっぴさん @musutapiki01

例えば単身赴任の夫、2世帯住宅、「分離することにより何方かが生活保護基準に陥る場合」には、世帯分離は認められず、生計同一とみなしますRT @senami_a: ありがとうございます。世帯認定と世帯分離についてかなりざっくり簡略化しているのでよかったら補足ツイートお願いします。

2012-06-03 18:24:32
@senami_a

厳格な審査と申請段階での強力なふるいかけによって保護費の抑制を実現し厚生労働省から「生活保護行政の優等生」「厚生労働省の直轄地」とまで言われていた北九州市で2007年に起こった「おにぎり食べたい事件」以降、行政のそのような抑制姿勢は水際作戦として厳しく批判されるようになります。

2012-06-03 18:37:01
@senami_a

以降は厚労省も度々通知を出し今の考え方として保護申請段階において困窮した状況にありかつ身内からの援助を実際に受けていない受けられない状態にあるなら「きょうだいがいるから」「親が金持ちだから」というような<扶助を受けられる可能性>をもって申請を断ることはできなくなっているはずです。

2012-06-03 18:46:36
@senami_a

ひとつひとつの自治体がどのような扱いをしているか、中にはそうじゃない対応をしているところもあるかもしれませんが、厚労省的にははっきりそういう見解で、では保護の申請が出た後、役所が何をできるかというと、文書や電話や面談で扶養義務者に扶養援助を求めその可否を確認することになります。

2012-06-03 18:50:32
むすっぴさん @musutapiki01

厚労省は申請権の侵害は絶対にしないように厳命してますし、扶養義務は第4条の補足性の原理において、他法他施策などと違い「優先される」レベルなので、保護要件ではないのです。 RT @senami_a: <扶助を受けられる可能性>をもって申請を断ることはできなくなっているはずです。

2012-06-03 18:52:30
@senami_a

別世帯と判断された扶養義務者に対してはどれだけ収入があろうとも、どのような裕福そうに見える生活をしていようともそれぞれの家の事情や家計の実態などは分からず身内の関係性も様々なのであくまで<実際に経済的援助が行なわれるか否か>だけを問題にし保護を受ける人の最低生活保障をまもります。

2012-06-03 18:59:58
@senami_a

実際に受けられるかどうかもわからない身内からの援助に制度が依拠してしまうことは非常に危険なので「扶養援助関係にあたる親族が存在するから」という理由をもってではなく「現実に扶養が行なわれるかどうか」で判断することは命にかかわる最後のセーフティネットとしてまっとうな姿勢だと思います。

2012-06-03 19:03:32
@senami_a

以上を踏まえて今回の騒動についていくつかまとめておきます。

2012-06-03 19:05:49