東アフリカの牧畜民ダサネッチの戦争様式について

タイトルどうりです
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@bukrd405

東アフリカの牧畜民ダサネッチの老人に、銃が流入してくる以前の戦いについて質問をしてもくわしい話を聞くことはできなかった。彼らが青年期に参加した戦いでは、すでに銃が頻繁に利用されていたためである。

2012-06-28 19:34:28
@bukrd405

彼らが父親などから聞いた話によると、槍で戦う場合はふつう一対一で「オーオー」と声を出しながら戦った。槍は木製の盾で防いだが、力の強い人物の攻撃は盾をも貫いた。戦いで死者が出ることはあったが、銃流入後の戦いに比べるとその数は少なかった。

2012-06-28 19:35:49
@bukrd405

その一方で、銃を利用した戦いとは違い、槍での戦いは相互に体を接近させて行う身体的により厳しいものであった。また銃で殺す場合と違って槍やナイフでは音が立たないため、深夜にこっそりと相手の集落に忍び込めば、近くに他の人がいても気づかれないままに多くの相手を殺すことができた。

2012-06-28 19:37:41
@bukrd405

なお、現在でもダサネッチは銃弾を使い果たした場合には銃剣で戦うことがあるし、銃を持たずに戦いへ向かうこともある。

2012-06-28 19:39:09
@bukrd405

昨晩、『戦争における「人殺し」の心理学』http://t.co/Dn19VmYAがTLで話題に上っていたが、やはり銃を使う場合と槍を使う場合では、後者のほうが身体的に厳しいようである。

2012-06-28 19:41:29
@bukrd405

東アフリカのいくつかの社会では、人々が伝統的な武器である槍と新たに持ち込まれた銃との間に異なる文化的価値を付与し、槍による殺人と銃による殺人は、異なる社会的帰結をもたらすと考えられていることが指摘される。

2012-06-28 20:01:47
@bukrd405

たとえばウガンダのカリモジョンでは、槍の力は鉄の霊から生じ、その霊が死者の魂を祖先霊がくらすブッシュへと解放し、その魂が祖先霊となって社会の正義を司っていた。しかし銃にはそのような霊的力はなく、死者の魂を適切な場所へ連れていくことができないため、

2012-06-28 20:03:22
@bukrd405

(承前)人々は既存の社会のあり方が崩壊していると考えている。それに対して、ダサネッチでは槍から銃への変化が、彼らの「殺人観」に変化をもたらしたという語りは聞かれなかった。

2012-06-28 20:04:43
@bukrd405

ダサネッチは、カラシニコフ銃のことを「危険な銃」と呼ぶ。これは引き金を引き続けるだけで、そのまま弾倉に入った30発すべてを撃ち続けてしまう銃だからである。またとくに老人は、自動小銃を「臆病者の銃」と呼ぶこともある。

2012-06-28 20:10:20
@bukrd405

旧式の銃の時代は、人々は敵を目にしても気分を動顛させることなく、じっくりと狙いを定めて一発ずつ銃を放っていた。しかし自動小銃を手にした最近の若者は「臆病」であるため、敵の姿を目にするとすぐに乱射してしまう。

2012-06-28 20:12:01
@bukrd405

そのことと関連させて老人は、自動小銃の流入以後は銃を撃つ技術的能力も低下していると述べる。

2012-06-28 20:12:16
@bukrd405

エチオピアでは、1974年の革命によってハイレ=セラシエは廃位させられ、マルクス・レーニン主義に基づいた統治を謳う軍事政権が誕生した。この政権は、一般にはアムハラ語で「評議会」を意味するデルグ政権と呼ばれる。

2012-06-29 07:29:09
@bukrd405

デルグ政権から現政権にいたる時代、この地域の集団間関係には大きな変化が起きた。変化をもたらしたもっとも大きな要因は、カラシニコフ銃(AK-47s)やG3に代表される自動小銃の流入と普及である。

2012-06-29 07:31:10
@bukrd405

そのきっかけとなったのは国家レベルの内戦や政変、つまり1979年のウガンダにおけるアミン政権の崩壊、1983年のからの第二次スーダン内戦の勃発、1991年のエチオピアでの政権交代とソマリア内戦の開始などである。

2012-06-29 07:32:48
@bukrd405

これらにともなって、国家の治安部門により管理されていた武器が、軍人や商人、避難民などの手を通じて民間部門へ大量に流出し、とくに子っ許付近の牧畜社会へ流れ込んだ。

2012-06-29 07:34:34
@bukrd405

自動小銃は社会を無秩序化するのか―東アフリカ牧畜民の民族間関係を事例に―http://t.co/Mr3jVVEN エチオピア西南部のスリ社会において、自動小銃を手にした若者が年長者の権威に従わなくなり、また近隣民族との戦いでも従来の「戦争のルール」が破られつつあると指摘し、

2012-06-29 07:36:57
@bukrd405

一般的に戦争は、「異なる政治体間でなされる組織化された暴力的紛争」として定義される。ダサネッチ語において、「敵との暴力的紛争」と意味する語はスッラ(sulla)とオース(osu)の二つである。

2012-06-29 07:42:39
@bukrd405

両者は、敵を殺すこととその家畜を奪うことをその主な目的としている点で共通しているが、暴力行使の規模や組織化の度合いに違いがある。スッラは、数人から数十人の10代や20代の若者が、夜のダンスに集まった機会などに相談してそのまま敵地へ出向くものである。

2012-06-29 07:44:03
@bukrd405

スッラにはほとんどの場合明確な戦略はなく、敵と遭遇しないままに帰還することもよくある。また敵と遭遇しても相手が多数のために銃を放つことなく引き返すことはしばしばだし、少人数の敵と戦うことになっても接近戦になることは稀で、遠距離からの銃撃戦が展開することが多い。

2012-06-29 07:54:06
@bukrd405

そのため殺害される人数、略奪される家畜ともに少ない。それに対してオースは、最低でも70~80人、多いときには1000人以上の男性が戦闘に参加する。戦いへ向かう前には集落などで会合を開いて、攻撃する集落や時間帯などの戦略を大まかに決定する。

2012-06-29 07:55:57
@bukrd405

また戦場ではほとんどの場合に銃撃戦で死傷者が出て、家畜の略奪がなされる。スッラは一部の男性による場当たり的な攻撃であるのに対して、オースは幅広い年齢の男性によって構成され、より明確な目的に動機づけられた、また議論を通して計画づけられた組織的な戦いである。

2012-06-29 07:58:47
@bukrd405

ダサネッチの現在の戦いの武器は主に銃、とくに自動小銃である。2006年に163人の成人男性を対象に聞き取り調査をおこなった結果、その48%が銃を所有しており、所有者の87%はカラシニコフ銃などの自動小銃を所有していた。

2012-06-29 08:01:56
@bukrd405

男性は子供のころから銃の使い方を学んでいく、集落で大人が銃を分解して掃除をしている所に、4~5歳の男の子が集まって見学している姿はよく目にする。このような機会を重ねることで彼らは銃の仕組みを覚えていく。

2012-06-29 08:04:24
@bukrd405

家畜の放牧に向かう7~8歳になると、少年はしばしば放牧先で年長の男性が携帯している銃を持たせてもらい、撃つ格好の真似をする。さらに成長すると、父親らとともに銃の技術を習得する訓練も行い、「あれが敵だ」といわれて木を撃ったり、家畜キャンプで野生動物を狩猟するようになる。

2012-06-29 08:06:26
@bukrd405

佐川 徹 助教 Toru Sagawahttp://jambo.africa.kyoto-u.ac.jp/member/sagawa.htmlこれまでわたしは、牧畜民間の紛争が頻発するエチオピア、ケニア、スーダン国境付近で調査をおこない、地域の民族間関係を主題とした研究を続けて

2012-06-29 08:10:13