同志社大「アフガニスタンの和解と平和構築」会議の裏方

アフガニスタンの正規政府とタリバンが同席した会議の裏方や内情の話を中心に、 @masanorinaito さんのツイートをまとめました。
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masanorinaito @masanorinaito

同志社大学での「アフガニスタンの和解と平和構築」に関する国際会議について。こういう極めてセンシティブな会議を開催するには、教員だけでなく、ロジを担当するスタッフの献身的努力が欠かせない。終わってから考えてみると、なぜ、こんなことが同志社大学でできたのか、いくつかの理由が思い浮かぶ

2012-07-05 02:20:10
masanorinaito @masanorinaito

直接、タリバン側と接触できる専門家がいたこと。それがなければ、我々はタリバンとの接触もできない。そして、神経を使う会議の開催に慣れているCISMORスタッフと、見事に外交的な交渉と事務手続きを粛々と進めた助教の存在。さらに、会議の意義を理解した研究科事務室の献身的協力

2012-07-05 02:24:35
masanorinaito @masanorinaito

同志社大学一神教学際研究センター(CISMOR)のスタッフは、会議後の懇親会の場に、お世辞にも豪華とは言い難い京町家風居酒屋を選び(もちろん酒は出さない)、二階を貸切にして、女性スタッフは別室に陣取り(これが後に、礼拝の時刻になると礼拝部屋と化した)

2012-07-05 02:26:59
masanorinaito @masanorinaito

さらに、この暑いのに店に鍋料理を特注した。ディン・ムハンマド師、ザイーフ師、バヒール師、スタネクザイ大統領顧問のすべてが、たたみに座り、同じ鍋を囲んだ。それまで、日本食ににほとんど箸をつけなかった彼らが、鍋の登場と同時に、わっと手を伸ばした。

2012-07-05 02:28:36
masanorinaito @masanorinaito

この光景は目に焼き付いている。たしかに、タリバンと大統領顧問は、政治的な直接対話は一切しなかった。しかし彼らは同じ鍋を囲み、歓談し、ともに隣室で祈った。礼拝の導師を元タリバン駐パキスタン大使のザイーフ師が務め、スタネクザイ大統領顧問も、ともに祈った。

2012-07-05 02:30:38
masanorinaito @masanorinaito

それだけのことだが、彼らが根源的に兄弟であることの証でもある。それでいいではないか。政治的立場は異なる。国内では敵対する勢力を代表している。しかし、彼らはそこにいた。決して相手を罵るでもなく、冷たい視線を送るでもなく。我々にできることは、そこまでである。

2012-07-05 02:32:53
masanorinaito @masanorinaito

「東京会合」に関連して開かれる、ある会議の通知をみていたら、出席者のプロフィールに「タリバンと政権側を仲介する人物」と書かれていた。私は、こういう人物を呼ぶ会議を信用しない。事情通のように、こういう会議を仕切る学者も信用しない。

2012-07-05 02:34:48
masanorinaito @masanorinaito

我々が大学としてすべきことは、当事者に場を提供すること、学生さんに参加してもらって、当事者が語ることにじっと耳を傾けて自ら判断してもらうこと。それに尽きる。何か、意味ありげなことを企画して、考えたふりをすることではない。

2012-07-05 02:36:35
masanorinaito @masanorinaito

懇親会の居酒屋はたたみだった。会議で司会をつとめたパレスチナ人の学生さんが、それを喜んでいた。たたみにすわり、立膝をして食卓を囲み、刻限になれば隣室で礼拝することができた。それが良かったと彼はうれしそうに語った。

2012-07-05 02:38:38
masanorinaito @masanorinaito

懇親会の用意をしてくれた事務スタッフが、そうしてくれたのだが、何回か、おなじようなお客人をもてなした経験があればこその気遣いであった。

2012-07-05 02:39:51
masanorinaito @masanorinaito

懇親会のアレンジと会議の目的と何の関係がある、と思うなら、こういう会議はできない。もしこれが、高級ホテルで、たとえハラールだとしても銘々がフォークとナイフで食べるような食事だったら、空気は乾いていただろう。

2012-07-05 02:42:19
masanorinaito @masanorinaito

東京では、こういう会議ができないと、以前から私は思っていた。雑音が多すぎる。国立大学でもできなかった。タリバンは国立大学では来なかっただろう。京都の私学に移籍できたことが、今回の会議開催につながったことは間違いない。

2012-07-05 02:43:55
masanorinaito @masanorinaito

きのう、某国の大使が電話をしてきて、会議のプログラムを至急欲しいという。おそらく、本国から、事前に情報を得ていなかったことを叱責されたのだろう。必死だった。東京では、こういう会議ができないのは、この種の介入があるからである。

2012-07-05 02:51:47
masanorinaito @masanorinaito

今回、同志社大学の会議では、一切、政府関係者を招待していない。日本も外国もである。要請があっても入れないつもりだったが、東京で開催していたら、そんなことは不可能である。

2012-07-05 02:53:57
masanorinaito @masanorinaito

話が前後するが、会議の司会に敬虔なムスリムであるパレスチナ人の学生さんをお願いしたのには理由がある。私は、アフガニスタンのダリ語を離せない。アラビア語がとうに忘れてしまった。タリバン代表をはじめ、反政府側はみなアラビア語を解する。

2012-07-05 02:56:36
masanorinaito @masanorinaito

会議言語は英語にしたが、司会者は、アラビア語で丁重に礼を尽くして基調講演をする代表団を檀上に招いた。英語だけでは、そういう礼儀は尽くせなかったからである。それが、それほどの意味をもったか、私にはわからない。しかし、当事者に自分の声で語ってもらうことも、大変なことである。

2012-07-05 03:00:06
masanorinaito @masanorinaito

できるだけ、緊張をやわらげることを試みなければ、みな各々にリスクを背負って京都まで来てくれた基調講演者に対して申し訳ない。

2012-07-05 03:01:25
masanorinaito @masanorinaito

こういう会議のロジはおそろしく大変である。事務方は、膨大な経費の計算と書類作りにあたってくれている。事務スタッフは研究科長が指揮することはできない。事務長が指揮命令する。だからこそ、事務長にも事務スタッフにも会議の意義を話し続けてきた。

2012-07-05 03:09:29
masanorinaito @masanorinaito

教員が、事務は黙って仕事をしてくれればいい、という態度で接したら、こんな会議など絶対に実現できない。しかし、事務方に、聴く耳がなければ、こういう会議は、やはりできない。その点で、今回は非常に恵まれていた。

2012-07-05 03:11:54
masanorinaito @masanorinaito

若い事務スタッフまで、会議の内容や招聘された人物に関心をもってくれて質問してくれた。長い教員生活で、こういうスタッフを得たことは幸いである。

2012-07-05 03:13:07
masanorinaito @masanorinaito

タリバン代表団や他の代表たちを最初に大学に迎えたとき、茶菓でおもてなしするにあたって、彼らが何を食べてくれるだろうかと心を砕いてくれた。駄菓子の山盛りを出してくれたのだが、雷おこしとチロルチョコを召し上がったと報告したら喜んでくれた。

2012-07-05 03:16:44
masanorinaito @masanorinaito

前にカルザイ大統領が同志社大学を訪問したときにも、事務スタッフは同じよう心を尽くしてくれた。アフガンでの滞在経験のある院生さんが、「フルーツバスケットにきゅうりを」と進言したので、すかさずきゅうりを注文してくれた。

2012-07-05 03:18:58
masanorinaito @masanorinaito

中東では、きゅうりは暑い夏の盛りの水分補給のため、屋台でもきゅうりを売っている。私にも想像がついたのだが、それを即座に注文してくれるスタッフがいることは重要である。馬鹿馬鹿しいと一笑に付されたら、会議の、どこか一角が欠けるからである。

2012-07-05 03:24:38
masanorinaito @masanorinaito

もっと重要なことは、タリバン代表団であれ、ザイーフ師であれ、事務スタッフは誰一人として「危ない人間」視しなかったことである。ザイーフ師など、うちの事務室にはファンがいる。いかめしい顔をしているが、あいさつしたときの笑顔が実にカワイイと事務長は言う。

2012-07-05 03:28:49
masanorinaito @masanorinaito

これがもし、したり顔で、「先生、そんな人呼んで大丈夫ですか」などという事務方だったら、到底、こんな会議のロジは任せられない。「なんで、大学でこんなことできるんですか」だの「なんで同志社でできるんですか」などと聞いてきた人たちよりはるかに意義を理解してくれていた。

2012-07-05 03:31:33