【W杯】スアレス(ウルグアイ)のハンドと、目標に対する異なるアプローチ。

ワールドカップ準々決勝ウルグアイvsガーナ。延長後半ロスタイムでのゴールを守るための意図的なハンド(反則)でウルグアイ勝利。 物議を呼んだこのハンド問題から、プロフェッショナルファールと目標に対するスタンス、アプローチの違いについての個人的なメモ。 こういう話は『コードギアス』など、フィクション(物語)全般の構造と交えて考えると面白いので、「スポーツ」の枠組みだけで考えるのはもったいないと思います。
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ワールドカップ。スアレスのハンド問題についてメモったら長い。相変わらずメモじゃない。申し訳ないのですが、久しぶりに固め打ちさせていただきます。それではいきます。

2010-07-05 22:00:18
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【W杯】ウルグアイvsガーナ戦の延長後半ロスタイムに、FWスアレスがゴール前でハンド→PK戦の末、ウルグアイが勝利。このプレイは論議を呼んでいるが、こういう極端な例はとても良いサンプルになるので、みんな色々考えてみるといいんじゃないかな。http://bit.ly/9NisNJ

2010-07-05 22:00:38
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最初にスポーツ上の観点から。バスケやサッカーなど流れの中で接触があるスポーツには、戦略上有効と判断されて意図的に行う「プロフェッショナルファール」というものがあります。反則をするのですが、暴力や報復が目的ではなく、プロフェッショナルな判断で行われる反則です。

2010-07-05 22:01:34
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実は私自身、サッカーファンになってから、最初にひっかかったのはこの「プロフェッショナルファール」。反則でしか止められないのであれば、それはゲームルールがおかしいし、それを悪用するように意図的にファールをする選手もおかしいと思っていた。でも考えは変わっていきました。

2010-07-05 22:01:52
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「プロフェッショナルファール」で分かりやすくて納得しやすいのは、カウンターを防ぐときのファールでしょうか。相手陣内に攻め入ったがボールを奪われた。このままではカウンターを食らう。このときボールを持つ相手にプレスをかけて侵攻を少しでも遅らせ、味方が自陣に戻る時間を稼ぐ。

2010-07-05 22:02:23
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しかしそれでもダメなときは、意図的でもファールをしてゲームを止める。ファールなので相手のフリーキックとなるが、カウンター失敗となり攻撃は組み立て直し。味方は仕切り直しの間に、自陣に戻って態勢を立て直すこともできる。こういったファールは日常的に行われている。もちろん日本代表でも。

2010-07-05 22:02:49
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何がプロフェッショナルなのか。反則をするリスクとしないリスクを見極め、正しい判断とプレーをしているから。反則するリスクは、相手FKになること、カードをもらう可能性。しないリスクは、抜かれて数的不利となりカウンターを食らうこと。これらに点差、残り時間や試合の流れ等の要素も加わる。

2010-07-05 22:03:33
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また、どのみちこの後でファールをする危険性があるのだとすれば、ファールは自陣ゴール前でなく敵陣内でした方がカードの危険性は低い。よって位置関係もリスク判断の材料となる。反則を「しないリスク」より「するリスク」の方が低いのであれば、ファールは選択肢になりうる。

2010-07-05 22:04:00
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ただし、その判断ができても、カードももらわず、相手もケガさせないようなスマートな「ファール」ができなければいけない。目的は「ファール」だけで、暴力や報復ではないのだから。「判断」と「プレイ」両方出来て、本当の「プロフェッショナルファール」だと私は思っています。

2010-07-05 22:04:29
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「ロベルトノート」に書かれていたように、サッカーは自由なスポーツ。そこにはリスク計算の上で反則する自由もある。「絶対に意図的なファールをしない」というのは、このリスク計算による判断を放棄して、状況での選択肢(自由)を自ら失っている。相手側にすればやりやすいでしょうね。

2010-07-05 22:04:59
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ここでスアレスのプレイに戻りましょう。トーナメント戦の延長後半ロスタイム。ゴールされたら確実に負けの場面。ここでハンドしてゴールを守るかどうかのリスク計算。

2010-07-05 22:05:30
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まず「する」場合。確実にレッドカード(退場+次試合出場停止)。さらにPK。しかし、このPKを止める機会を得られる。それが奇跡的に成功したとしてもPK戦。それに勝っても代えの無いエースを欠いて準決勝。さらにガーナと遺恨を残し、世界的にも非難を受けるかも知れない。

2010-07-05 22:05:47
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次に「しない」場合、延長後半ロスタイムで1点をリードされる。負け確定といっていい。でも言ってみればそれだけ。ただ負けるだけでそのほかのものは何も失わない。でもスアレスはハンドした。つまり、これは「負けないために、どれだけのものを支払う気があるのか」という問題だと思う。

2010-07-05 22:06:18
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はっきりいってこの場面でのハンドは、失うものがあまりに大きすぎる。ただ負けないための方法がこれしかなく、スアレスは受けるペナルティやデメリットを分かっていたのにも関わらずあれをやった。つまり、あの場面において「負けないこと」が他の全てより優先して選択されている。

2010-07-05 22:07:06
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だからスアレスについて意見を述べるなら、その人はスタンスを決めなければいけない。勝利のためにどこまでやるべきか、というスタンスを。ゲームルールを破っても、勝利のために取るべき選択肢があるなら全て使うのか。それともスポーツとして勝利よりも価値を持つものがあるのか。

2010-07-05 22:07:33
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目標に対するアプローチの違いとみれば、これは、いわゆる黒主人公と白主人公。ルルーシュ「結果を出さねば意味がない。そのためにはいかなる手段でも使う」vsスザク「正しい手続きを踏まない勝利に価値は無い」みたいなもの。サッカーに興味なければそう考えても面白いでしょう。

2010-07-05 22:07:59
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これはサッカーカルチャーの問題であり、国民全体のコンセンサスの問題。ウルグアイはスアレスを英雄とするだろう。しかし例えば、日本で全く同じ場面で本田が同じことをしたら?自国なのにかなり批判的な意見が出るのではないか。好みとして日本人は好きではないだろうから。美しい敗者が好きだしね。

2010-07-05 22:09:23
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逆にいえば、スアレスは成功したときに自国の国民だけは支持してくれると分かっているからあれができる。代わりに、目標ベスト4と公言しながらPKはずしてベスト16で帰国した代表を温かく迎えるようなことはしないかも知れない。スアレスはまさにベスト4のためにあれをやったわけだし。

2010-07-05 22:09:58
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だからこそ大切なのはその国がどのようなサッカーを好ましいと思うか、という全体のコンセンサスだと私は思う。日本でスアレスに対する嫌悪感が多く出るのは驚かない。では、その代わり、どういうサッカーが好ましく、勝利に対してどのスタンスを取るべきなのかいろんな意見を出し、話しあえばいい。

2010-07-05 22:10:42
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「そういうヌルいことを言っているから勝てない」という人も皆を説得すればいい。でも「感動をありがとう」でよいと国民の大多数が言うのであれば、勝利至上主義でなく、(いろんな意味で)フェアなサッカーを積み上げていくのは、それはそれで価値があるかも知れない。国際的にもね。

2010-07-05 22:11:16
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W杯の面白いところの一つは、同じスポーツなのに、文化として、代理戦争として、国のコンセンサスとして、サッカーのとらえ方がこうも違うから。そして、日本が残念なのは、その部分が弱いということ(キャラ立ちが弱い)。だから、こういう機会に考えてみるときっと面白いはずですよ。

2010-07-05 22:11:40
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サッカーに興味が無くて、フィクションが好きな人も、先ほど書いた「アプローチの違いによる対立」あたりを掘り下げるのと面白いと思います。全力で目標を達成するときに、ルール破りを含めた全ての選択肢を出した上で、どう選択するかという葛藤は非常に魅力的なはずだから。

2010-07-05 22:12:30
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以上です。ここからもっとフィクションの話に持っていこうと思いましたが、ただでさえ長いので止めました。長々と失礼しました。

2010-07-05 22:13:53
マヒロ:舞尋 @giorno_5

@highland_view スアレスのハンドは延長後半ロスタイムという"もう後がない"状況でなら『有り』で、試合序盤だったら『無し』と思っていたけど、もしあれが本田選手だったら『エェ〜ッやっちゃった〜』と失望したと思います。自分はやっぱりミーハーだな〜と痛感しました。

2010-07-05 22:48:45
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@giorno_5 全くそれで構わないと思います。「勝つためだからって、あれをやって欲しくない」というサッカーを日本に希望していけばいいんです。私は極端な話「自国ならOK、他国は全てNG」というダブルスタンダードすら、スタンスとしてはありだとすら思っているくらいなんで。

2010-07-05 22:56:33