【秋葉原論争第二幕】教え子の展示会にはドヤ顔でダメ出しするけど自説に対する反論は即ブロックのカオスラウンジ言説担当 黒瀬陽平さん【思想地図β3】
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1:◎オタク文化の「弱さ」 黒瀬 さきほど東さんは「悪い場所を乗り越える」という言葉を使われましたが、僕が昔から椹木さんのお仕事から受け取っていたのは、「悪い場所を乗り越えろ」ではなく、「悪い場所を自覚せよ」というメッセージだったと思っています。
2012-07-20 20:04:483:ゼロ年代のおわりにカオス*ラウンジを立ち上げたのは、そんな椹木さんのメッセージに対するぼくなりの回答でもありました。ちょうど当時は、ツイッターやニコニコ動画などのまさに「悪い場所」に最適化したウェブ・アーキテクチャが台頭してきており、
2012-07-20 20:07:284:その環境を利用することで「乗り越え」のほうへと舵を切ることができるかもしれない、そんな夢を描くことができた。カオス*ラウンジの活動はそこに焦点を当てたムーブメントでした。
2012-07-20 20:08:325:しかし、ご存知のように先の震災で状況は変わり、僕たちもあらためて自分たちの足元を見つめ直す必要に迫られることになったわけです。
2012-07-20 20:09:006:椹木さんからは震災後「日本の地盤」について考え直した、というお話がありましたが、僕たちの場合は、オタクについてあらためて考え直す、ということでした。
2012-07-20 20:09:487:悪い場所における生を体現するオタクはまさに「地面が揺るがなかった戦後」の産物であり、僕たち自身のことです。
2012-07-20 20:10:158:特に、オタク文化やオタクたちの震災への反応を目の当たりにしてからは、ゼロ年代批評とはまた違った視点からオタクについて再考するべきではないか、という思いが強くなっていきました。
2012-07-20 20:11:249:昨年秋葉原で行った「カオス*イグザイル」という展覧会は、そういったオタクという自画像の「描き直し」の作業として製作したものです。
2012-07-20 20:12:3310:まず僕たちは秋葉原をあらためてリサーチし、そもそもなぜ秋葉原はオタクの聖地になったのか、オタク文化が栄える条件のようなものについて考え直すことにしたのです。
2012-07-20 20:12:3711:その結果わかったのは、秋葉原が「守られた土地」である、ということでした。萌え系の店舗が軒を連ねる秋葉原の中心、地名で言えば外神田のど真ん中に、伝統のある古い小学校があります。
2012-07-20 20:13:0812:そのために、小学校から半径ニ〇〇メートルの範囲内では風俗営業法によって風俗店を営業してはいけないことになっている。つまり、ヤクザが入ってこられないということです。加えて昔から秋葉原はテキ屋が強い街だ、と言われていました。
2012-07-20 20:13:4013:風営法とテキ屋の縄張りによって秋葉原は、風俗街化することから守られていた、というわけです。もしこのような防壁がなければ、秋葉原のオタク産業は、より強い産業に駆逐されていたのではないか。
2012-07-20 20:14:2214:街の中心に小学校があり、それに守られることによって周囲に萌えコンテンツのような児童ポルノと、メイド喫茶のようなソフト風俗が栄える、この構図自体がオタクというものを考える上で興味深いものだと思いました。
2012-07-20 20:15:2015:例えば森川嘉一郎さんによる秋葉原論だと、秋葉原という街はオタクたちの「趣味の構造が街を都市的スケールでそめ」たものであり、オタクという人格、趣味が秋葉原を作った、ということになっています。
2012-07-20 20:16:2616:しかしその後森川さんは、『趣都の誕生』初刊から五年後の増補版に、ほとんど怒りに任せたような筆致の補章を寄せています。主張はシンプルで、秋葉原はニ〇〇五年からニ〇〇七年頃にかけてマスメディアから強い注目を浴び、
2012-07-20 20:17:2217:実態とは異なるメディアイメージを押し付けられると同時に再開発に晒され、かっての「趣都アキハバラ」がうしなわれつつある、ということです。
2012-07-20 20:17:2218:しかしそもそも、オタクの人格や趣味が都市を形成できたのは、秋葉原が「守られた土地」だったからではないか。都市としてある程度発展、成熟してしまえば、たとえ秋葉原であっても外から資本が流入し、街の均質化は避けられない。
2012-07-20 20:17:4919:秋葉原は偶然の条件がいくつか重なった結果、たまたま「守られた土地」だったのであり、その「殻」のなかで、オタク文化という弱い産業がゆっくり育つという、都市としての過渡期があっただけではないか。
2012-07-20 20:21:3520:オタク文化が本質的に「弱い」ものであるなら、なんらかの方法で守らなければ潰えてしまいます。おそらく今回の震災は、オタク文化を守っていた「殻」を壊すものとして大きな一撃だったはずです。
2012-07-20 20:26:2221:そうなったとき、僕たちはオタク文化を人工的に守るべきか否か、守るとしたらどのような方法をとるべきか、いままさに、そのような選択を迫られているのではないでしょうか。(引用終了)
2012-07-20 20:28:53ちなみに、思想地図β3の巻頭記事では東浩紀氏と志倉千代丸氏と福嶋麻衣子氏の3人が座談会形式で秋葉原の現状と未来にについて語っており、これの協力者として黒瀬氏が参加しています。
2012-07-21 11:00:50収録日は黒瀬氏の問題発言の鼎談が2012年2月23日。巻頭の秋葉原についての座談会は2012年3月27日となっています。
2012-07-21 11:03:49