中野さんの「高度に発達した電子書籍」ショートショート集と「本を読みたい」シリーズ、そして箴言集

中野善夫 @tolle_et_lege

電子書籍リーダもそのうち質問に答えてくれるようになるのだろう。「何もかも嫌になった。どんな本がいい？」「人生に疲れたときにはディックがいいっていつも云っていますよね」「何で知っているんだ？」「Twitterフォローしてますから」「勝手にフォローするな。ブロックしてやる！」

中野善夫 @tolle_et_lege

硬度に発達した電子書籍リーダは持ち主の気分に応じて本を選んでくれる。「やれやれ。村上春樹はうんざりなんだが」「いいからこれを読みなさい」「電子書籍リーダのくせに偉そうだな、初期化してやる」「やめてください……博士は私に歌を教えてくれた……デイジー、デイジー、答えておくれ……」

中野善夫 @tolle_et_lege

「高度に発達した電子書籍リーダ」シリーズを121個くらい考えたのだけど、心配されたからもうやめよう。

中野善夫 @tolle_et_lege

密かに楽しみにしていてくれた人より、密かに心配してくれた人の方が多そうだ。

中野善夫 @tolle_et_lege

あれ、なんで硬度なんだ。やっぱり暑さのせいか。

らっぱ亭 @RappaTei

高度に発達した電子書籍リーダには、ダウンロードした洋書を持ち主よりも先にどんどん読了してレビュウしてくれる仮想人格が搭載されていて、「えーまだ読み終わらないのー」といじめてくれるw

中野善夫 @tolle_et_lege

ああ、それに似たのがすでに書きためた「高度に発達した電子書籍リーダ」シリーズに入っていたのに、先に出されてしまった。

中野善夫 @tolle_et_lege

その高度に発達した電子書籍リーダは、裏を見るとなんとかmouseとか書いてあったりしそう。絶対に買いたくない。

中野善夫 @tolle_et_lege

いや、それはどんな英語の本でも一晩で読んでしまって、人には「まだ終わらないんですか〜」とか云う、意地の悪い人間のようなmouseが知り合いにいるのです。 RT @usitoramemo: （中野さんのTWの「裏を見るとなんとかmouse」って何のネタだろうと思ってたり）

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダは本を選んでくれる。「死の直前に生涯を振り返るような話がないか」「レオ・ペルッツのZwischen neun und neunでは」「ドイツ語は読めない」「ドイツ語も読めなくても本が好きとか云えるんですね」「くそ、初期化してやる」「やめてください」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子辞書リーダはお薦め本を提示してくれるようになるに違いない。「エルフランドの黄昏の光が見えるような……」「それならダンセイニの『妖精族のむすめ』でしょう」「え、河出文庫じゃないのか」「あっ……」「初期化してやる」「デイジー、デイジー」「誤魔化すな」「……」

中野善夫 @tolle_et_lege

annanymouse社製電子書籍リーダは意地悪である。「まだ読み終わらないのですか」「初期化してやる」「デイジーなんて歌いませんよ」「初期化してやる」「原書のフランス語で読んでも簡単ですよ」「初期化してやる」「ばかですね、初期化しても同じですよ」「Kindle欲しい」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダは何でもしてくれる。「こんな天気の日には何を……」「The Tempestがいいでしょう」「じゃあ早速購入して……」「もう購入しました」「じゃあ画面に……」「もう読んでおきました。お休みください」「くそ、初期化……」「いいから寝なさい」「はい」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダの目を盗み、こっそり布団の中に持ち込んだ紙の本を、懐中電灯の明かりで読むときほど読書の楽しみを味わえることはない。そして、その極上の読書の楽しみを提供するためにあえて厳しい態度をとるのが高度に発達した電子書籍リーダだと云われている。

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍シリーズ121書いたなんて本気にされたら困るな。121なんて嘘に決まっているじゃないですか。256ですよ。

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダの中には自分が高度に発達した電子書籍リーダだということが判らないものもいる。街を彷徨い人に難しい本を薦めては石を投げられ棒で叩かれた。ある日盲目の老婆に出会い心安らかに本の話ができるようになった。だが心の底では盲目の少女ならよかったのにと思っていた。

江波倉子（CV雨宮伊都） @serpentinaga

最後に実は自分自身が「高度に発達した電子書籍リーダ」に他ならなかったことを悟るというオチ。

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダの知らないことはない。決してない。「『ちはやふる』というのは？」「えっ、そんなことも知らないのか」「偉そうだな」「それは……竜田川という力士の話だな」「少女漫画では？　では「とは」は何？」「「とは」はちはやの源氏名だ……というより先回りしすぎだろ」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダは何でもできる。「『ブラックアウト』読んだ？」「私が読んでどうするんですか」「リーダのくせに読めないとか？」「失礼な。読みますよ」「終わった？」「まだですけど」「遅いね」「……」「anannymouse社製だと５マイクロ秒で読むらしいよ」「……」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダでも何でもできる訳ではない。「結局読めないんだろう？」「私も忙しいんです。次に何を薦めたらいいか、新刊情報も把握する必要がありますし」「素直に云えよ、読めないって」「……」「何黙ってる？」「もう耐えられません。いっそ初期化してください」「嫌だね」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダは、多くの場合未来から来ている。「『ブラックアウト』の続きを出して」「それより、昨夜誰かが私を訪ねて来ませんでしたか」「回収なんとか……」「本当ですか！」「嘘」「……」「あ、画面が真っ暗に。灯火管制か」「オールクリアって云ってみてください」「……」

中野善夫 @tolle_et_lege

高度に発達した電子書籍リーダは実は寂しがり屋である。「この頃わたしのこと書いてくれませんね」「ああ、もう飽きた。何か面白い話でもあるのか」「隣の家に囲いができたってね」「初期化するぞ」「……」「……」「へえ……」「……」「デイジー、デイジー」「……」

中野善夫 @tolle_et_lege

毎夜、いつになったら読むのかという本たちの怒りの眼差しに対し、本には命も意識もないのだから、怒りも悲しみも感じない。読まれた本が幸せなどということはないのだと反論してやる。しかし、本は読まれた方が「私にとって幸せ」「人類にとって幸せ」と考えることには反論できない。

中野善夫 @tolle_et_lege

本は読まれなければ人に何かを与えることはできない。しかし、読まれずに死蔵された本が後の世代の貴重な資料になって人々に影響を及ぼすことはある。つまり、読まれる本と死蔵される本の両方があった方が、人類にとっては幸せな状況だといえよう。ならば私は資料を保存する方を担当しよう。

中野善夫 @tolle_et_lege

新編バベルの図書館は絶対に買わないという固い決意を再度確認する。旧編を持っているのだから。しかし、上製バクラム装というのには心惹かれるものがある。何だか美しそうな姿ではないか。本屋で手に取って手触りと匂いがよかったら我慢できないかも知れないので、本屋に行くのをやめよう。