『西洋美学史』twitter読書会 16章~18章(最終回)

小田部胤久著の『西洋美学史』を、なんとなく集まった専門バラバラ文系民で読み進めた読書会の試み第七回まとめ(9/1)だいたい一ヶ月かかったんですね、短いようであり長くもあり。TLではお騒がせしました。次にこの本を手に取る方、twitter読書会をやる方の参考になりますように。
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16章ハンスリック 形式主義 質料・内容へのアンチテーゼとして

jabrafcu @ja_bra_af_cu

それでは「第16章 形式主義――ハンスリック」始めます。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:29:25
jabrafcu @ja_bra_af_cu

本章では形式主義の祖としてのハンスリックを中心に論じ、ついでそれを引き継ぐ議論としてヴェルフリンの「視覚の発展」論とグリーンバーグの論が検討されている。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:29:45
jabrafcu @ja_bra_af_cu

ハンスリックに先立つ「形式」に関する議論にカントのものがある。カントは「形式」を「質料」の対概念として用いており、感覚内容に対比されるものとしての形式(色彩/線描、音響/構成)と形式が合目的的かどうか(別なものを意味するかどうか)に関するものとの2つがある。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:30:31
jabrafcu @ja_bra_af_cu

@twidokusho 例えばある種の文様は別段ほかの何かを指し示すという目的があるのではない。シラーはこれをさして「アラベスク」と呼んだ。なお、この議論は前章のヘーゲルや次章のメルロ=ポンティの芸術の自律性に関する議論とも関連すると思われる。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:30:41
jabrafcu @ja_bra_af_cu

カントによる二重の意味での形式概念はハンスリックに受け継がれている。『音楽的に美しいものについて』のハンスリックの形式主義的音楽観は次の3点にまとめられる。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:31:32
jabrafcu @ja_bra_af_cu

第一は音楽の自然模倣説からの脱却。バロック音楽においては、特に声楽と関連して、感情の模倣が追求された(情緒論、音型論、調性格論)のに対し、ハンスリックは器楽を音楽の代表とした。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:32:32
jabrafcu @ja_bra_af_cu

ここから第二に「音楽の内容とは鳴り響きつつ運動する形式である」というハンスリックの主張が導かれる。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:33:02
jabrafcu @ja_bra_af_cu

ここでいう形式はソナタ形式などの楽式を意味するのではなく、音形やハーモニーの構造などの音響構造を指している。外部に指し示す意味内容を持つのでなく、それ自体の美しさを問う点で先の「アラベスク」に譬えられる。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:33:51
jabrafcu @ja_bra_af_cu

第三に、「響きつつ動く形式」は音響という素材を離れては存在し得ないので、ハンスリックにおいては素材・媒体としての音響が高く評価される。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:34:38
jabrafcu @ja_bra_af_cu

美術史研究において形式主義的な見方を確立したのがヴェルフリンである。彼以前には美術史はある精神内容の表現として捉えられていたが、ヴェルフリンは形式の内的な発展として美術史を捉え、「アルカイック→古典的→バロック的」という発展段階を提唱した。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:35:53
jabrafcu @ja_bra_af_cu

ヴェルフリンの「形式」は内的形式と外的形式にわかれる。外的形式は通常の作品に現れた「かたち」のことであるが、内的形式とは「ある内容がある一定の形体を取ることを可能にするものの見方」のことであり、美術史の発展はこれに基づくとされる。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:37:00
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

絵画でいうと支持体に本質をみているような議論かな #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:37:05
jabrafcu @ja_bra_af_cu

内的形式の発展においては一見個人が捨象されるようである。が、内的形式は「新たな視覚」を生み出す必要条件にすぎず、偉大な天才だけがその歴史法則にかなった展開を可能にする、というようにヴェルフリンは個人の役割を位置づける。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:37:52
jabrafcu @ja_bra_af_cu

20世紀に形式主義を受け継いだのがグリーンバーグである(第10章参照)。彼のアヴァンギャルド論では、抽象芸術は自己反省的となり、〈何を〉から〈いかに〉表現するかに問題が移るという。そのためアヴァンギャルドでは素材・媒体が重要となり、再評価される。#西洋美学史読書会

2012-09-01 22:40:17
jabrafcu @ja_bra_af_cu

このように形式を内容に対比している点でグリーンバーグのアヴァンギャルド理論はハンスリックの音楽論と共通する側面を持つ。カントによる器楽曲が概念的規定から自由な美であるという規定を想起すると、カント-ハンスリック-グリーンバーグが一連の過程と捉えられる #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:41:21
jabrafcu @ja_bra_af_cu

形式はそれだけで存在しうるものではなく、一種の媒体ではないかということを指摘し、ジンメルとアドルノを引き合いに出して本章は〆られている。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:44:43
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

ハンスリックEduard Hanslick(1825~1904)チェック人の音楽評論家。ワーグナーの批判者にしてブラームスの擁護者だが,門外漢ながらこの時代の人は割りとその二項対立の傾向がある気はする。テーマ性ではない,音楽の自律性を主張したのは本書の通り。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:45:52
jabrafcu @ja_bra_af_cu

@twidokusho Wikipediaのハンスリックの項目見るとワーグナーなどと起こしたトラブルがいっぱい載ってて笑えるw #西洋美学史読書会 http://t.co/1ANoH5zy

2012-09-01 22:47:43
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

ヘルバルトJohann Friedrich Herbart(1776~1841)哲学者,教育学者。哲学者としてはカントの影響が強く,教育学者としてはペスタロッチの影響が強いという,あの時代の二大スターの影響を受けまくった人。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:46:26
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

ツィンマーマンRobert von Zimmermann(1824~98)vオーストリアの哲学者・美学者。主なソースがドイツ語版Wikipediaくらいしかないが,ヘルベルトの影響下で,逆にルドルフ・シュタイナーに影響を与え神秘思想家の歴史では出てくるっぽい。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:47:19
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

なお,vonを付けないと同姓同名多数なので検索注意。Robert Zimmermannの同姓同名としては画家・造船エンジニア・サッカー選手・自転車の選手がいる。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:47:47
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

ヴァザーリVasari(1511~74)本書では意外にも初出。イタリア・フィレンツェの画家。ルネサンス画家の伝記集『芸術家列伝』が余りにも有名だが,本書はヘロドトス的な記述法であるため良くも悪くも伝説やゴシップ的な内容もある。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:48:13
DG-Law/稲田義智 @nix_in_desertis

本人も画家として一流で,マニエリスムに属す。上野の国立西洋美術館の常設展にも作品があるので,皆見に来てね。 #西洋美学史読書会

2012-09-01 22:48:25
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