「キョート・ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#6

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第2部「キョート殺伐都市」より:「キョート:ヘル・オン・アース」急「ラスト・スキャッティング・サーフィス」#6

2012-09-04 13:24:56
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海水にまみれたガンドーは、自らの探偵事務所の中で自覚的に目覚めた。 1

2012-09-04 13:25:48
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懐かしいレトロ調の家具の手触り。まだシキベがいた頃の事務所。チューニングがズレているのか、錆び付いたノイズ混じりのオスモウ・レディオ音声が聞こえていた。 2

2012-09-04 13:28:07
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「オイオイオイ、俺のベッドが……」クスリ切れか、あるいはアルコールから来るいつもの頑固な偏頭痛を噛み潰して、ガンドーは立ち上がる。シャツハンガーが空っぽだ。 3

2012-09-04 13:29:27
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推理机の横を通り、助手のUNIXルームに出る。実際は仕切りのない広い事務所だが、そう呼ばれていた。「……何だ、シキベ=サン、いねえのか」ガンドーはメインUNIXの前、いつもシキベが座っていた場所に、マグカップのようにちょこんと置かれたサボテンを見ながら拍子抜けしたように言った。4

2012-09-04 13:37:29
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UNIX画面のログを覗き込むと、深刻なエラーからの強制切断が起こっていた。彼自身はそのような概念を知らないが、ここはガンドーがニューロン内に構築したローカルコトダマ空間であり、彼が初めてダイヴし視覚化した危険なグローバルコトダマ空間からの一時避難所であった。 5

2012-09-04 13:40:55
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ナンシー=サンは巧くやった。彼はそう直感して愉快そうに笑った。さて、俺の仕事はここまでだ。ぐしょ濡れの服を着替えたら、ズバリテキーラでも飲んで、オスモウ・サルサでもつまんで、寝っころがって、ガンドー探偵事務所は営業終了だ。 6

2012-09-04 13:43:09
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不意に、探偵事務所のドアがノックされる。ガンドーは眉根を潜めた。厄介事の臭いがする。探偵の勘というやつだ。「押し売りか、借金取りか、狂言強盗か……どちらにしろ、お呼びじゃねえぞ……」ガンドーは49マグナムの重みを頼りにしながら、ドアへと向かう。リズムが聞こえる。 7

2012-09-04 13:54:04
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暗号だ。それを知っている人間は少ない。ままよ。ガンドーは鍵を開いた。バチバチバチと、外の探偵事務所カンバンを照らすかさ付きタングステン電灯が明滅し、レトロ調ストライプ探偵スーツの男を照らし出す。背丈はガンドーよりも少し低く、痩せぎすの伊達男。ハットで目元は見えない。 8

2012-09-04 14:05:57
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彼は短い顎髭をかきながら、ノックの続きで鼻歌を歌っている。「なんであんたが帰って来るんだ、クルゼ所長」ガンドーは唖然としていた。しかも彼は若い。ガンドーと出会った頃の……二度とは来ない黄金時代のポートレイト。 9

2012-09-04 14:09:13
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ガンドーはしどろもどろになる。「ウェイッ!ウェイウェイウェイ!俺はもうあんたの助けなんて……!」「修行のやり直しだ、バカタレめ。……イヤーッ!」クルゼ・ケンは有無を言わさずガンドーの巨体をトモエ投げした!ワザマエ! 10

2012-09-04 14:17:49
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「ブッダ!?」ガンドーは探偵事務所から放り出され、01ノイズの浮かぶ白い光の中を抜けてから、残留ZBRの残り香めいた虹色の空の世界をスカイダイビング姿勢で下降した!ナムアミダブツ!「ウワーッ!ウワーッ!ウワーッ!」キャニオンが眼下に迫る!風圧に顔が歪む! 11

2012-09-04 14:18:44
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「ウワーッ!ウワーッ!ウワーッ!」ガンドーは叫び……着地する。ここはセキバハラ荒野だ。大西部めいた灼熱の太陽が照りつけ、バイオハゲタカが旋回する。「オイオイオイオイ、どうなってんだ!オイオイオイオイ!」 12

2012-09-04 14:34:26
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黄色いキャニオンの間……地上数十メートルの場所に長大な丸太が渡され、その上にクルゼとガンドーは横並びに立っていた。遥か下の砂漠では、ピンク色の象が落下者を求めてのし歩いている。鮮烈な記憶と脳内UNIXとケミカルな幻覚が入り交じった、悪夢のようなローカルコトダマ空間だった。 13

2012-09-04 14:48:41
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「銃を抜け」クルゼ・ケンは有無を言わさず言い放った。そして両手に中口径マグナムを構え、虚空に向かって腰だめ姿勢で左右のパチスを交互に繰り出し、ピストルカラテの基本ムーブを繰り返した。ガンドーも慌ててそれに従った。かつてのように、黙々と、脇目も振らず、一心不乱に。 14

2012-09-04 14:54:09
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「「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!……」」 …… 15

2012-09-04 14:54:46
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「ポータルを……広い場所で……お願い!」ナンシーは顔面蒼白で、まるで冬の海から救い出されたタラバーカニ漁船員のように震えていた。だが言葉の響きは決断的であった。ディプロマットとキンギョ屋は目を見交わした。「アンバサダーと繋ぐのか?」とディプロマット。「しかし……」 17

2012-09-04 15:25:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「違う」ナンシーは即座に否定した。「出口は要らない。通路から引きずり出すの!」「通路から?」ディプロマットは眉根を寄せた。ナンシーは頷いた。「説明している時間は無い……そのまま聞いて、実行して。ポータルはコトダマ空間を経由して現世の二地点を結ぶ。今回はコトダマ空間に扉を……」18

2012-09-04 15:39:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何じゃア?」キンギョ屋がドアの外を見て驚愕の声をあげた。彼はライトを照らした。水?地面を大量のタール状液体が滑ってゆく!顔を上げると、洞窟の天井部のあちこちから黒い液体がボタボタと染み出してきているのだ。地下水か?「何かマズイぞ!マズイ事になっとる!なりかかっとる!」 19

2012-09-04 15:50:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……!」ナンシーは車内のアサルトライフルを取り、サブマシンガンをキンギョ屋に投げた。「……貴方は?」「スリケンだな」ディプロマットは真面目くさって答えた。ナンシーの指示を聞き返しはしない。「フラグもあるぞ」キンギョ屋は手早く手榴弾をジャケットのフックに吊るし始めた。20

2012-09-04 15:57:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「地上へ」ナンシーは気力をふるい、バンから飛び降りた。「ここでやる事はやった。あとはポータルを!」「とにかく生き埋めはゴメンじゃぞ」とキンギョ屋。三人は黒い水を跳ね散らし、庭園につながるエレベーターへ走る。ザブザブと音をたて、黒い水は後方へ流れてゆく。 21

2012-09-04 16:04:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュグン!エレベーターが動き出した。頭上に円い穴が開き、竪穴の壁を不気味な黒い流れが伝い、滑り落ちてくる。「……」三人は互いの目を見交わす。やがてエレベーターは庭園地表に辿り着いた。彼らは呆気に取られた。 22

2012-09-04 16:16:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン……噴水に偽装したこの秘密エレベーターを、クローンヤクザが既に包囲しているのだ。「これはこれは。ネズミのほうから出て参ったか」指揮官らしき馬上のニンジャが尊大にアイサツした。「ドーモ。チマチマと偽装しおって。貴様はディプロマット=サンだな?」 23

2012-09-04 16:37:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。ナイトメア=サン。……ディプロマットです」東の塀の向こうでは、白夜めいて明るく照らし出された空、本丸の周囲を花火めいて飛び回る光と、地から噴き上がっては砕けて散る黒い濁流。あちらこちら天に向かってそそり立つ黒い柱。イクサだ。地面を流れるいく筋もの黒い水はそこからか。24

2012-09-04 16:43:38
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