唐木英明: “放射能の「幽霊効果」” (『安全の科学の必要性』より)

『日本学術会議: 学術の動向 2012年5月号 http://amzn.to/Q9Cc4B 』掲載、 唐木英明氏の原稿『安全の科学の必要性』より、“放射能の「幽霊効果」”
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ala @w_ala

「日本学術会議・哲学委員会が2011年9月18日に行なった公開シンポジウム “原発災害をめぐる科学者の社会的責任 ~科学と科学を超えるもの” の講演とパネル討論を再編集したもの」という『学術の動向 2012年5月号』掲載原稿だが、「元にした各人の新たな原稿」というのが相応しい

2012-09-06 06:23:36
ala @w_ala

その『日本学術会議: 学術の動向 2012年5月号 http://t.co/cUTi724P 』掲載、唐木英明氏(倉敷芸術大学学長、食の安全・安心財団理事長)原稿『安全の科学の必要性』より、“放射能の「幽霊効果」”について、以下抜粋引用  http://t.co/uHrktFiP

2012-09-06 06:25:18
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唐木 英明(からき ひであき)
内閣府 食品安全委員会 専門委員

wiki より
日本の獣医師、農学者(獣医薬理学)。学位は農学博士(東京大学・1971年)。日本学術会議副会長、東京大学名誉教授、世界健康リスクマネージメントセンター国際顧問、食品安全情報ネットワーク代表者。
東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長(第10代)などを歴任した。

ala @w_ala

唐木英明・幽霊1: 放射能の「幽霊効果」は大きいが、その原因は主に、原子爆弾などの核兵器が引き起こした負の歴史に由来する。

2012-09-06 06:26:19
ala @w_ala

唐木英明・幽霊2: 1945年に広島と長崎に原爆が投下され、多数の死傷者を出し、1954年には米国がビキニ環礁で水爆実験を行い、焼津の漁船「第五福竜丸」の乗組員23名が被ばくして、一人が死亡した。この事件をきっかけに原水禁世界大会(1955)が開催され、

2012-09-06 06:27:10
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唐木英明・幽霊3: 1956年に衆参両院で「原水爆実験禁止決議」が採択された。1950~60年代は米、ソなどが大気中で核実験を数100回も繰り返し、膨大な量の放射性物質が大気中に放出され、

2012-09-06 06:27:48
ala @w_ala

唐木英明・幽霊4: 1957年にノーベル化学賞受賞者のボーリング博士が「核実験による死の灰で10万人の胎児・幼児が死ぬだろう」と警告し、恐怖が広がった。そして1963年に米、英、ソ3国間で「部分的核実験禁止条約」が締結され、大気中の放射性物質は徐々に減少した。

2012-09-06 06:28:11
ala @w_ala

唐木英明・幽霊5: 一方、1950年代以後、被ばく者の調査から放射線が、がんのリスクを高めることが明らかになり、これが反原発運動の根拠になった。「放射能は怖い。」これは原水禁運動や反原発運動の重要な主張であるだけでなく、

2012-09-06 06:28:50
ala @w_ala

唐木英明・幽霊6: 核保有国が「核の抑止力」を強化する材料としても有効であったため、これを利用したという指摘もある。 このように、「原爆の悲惨さ」は周知の事実であり、これに関する学校教育も行われてきた。

2012-09-06 06:29:30
ala @w_ala

唐木英明・幽霊7: しかし一方で、自然界・日常生活に存在する放射線やそのリスクに関する科学的な教育は行われず、正しい理解を広める機会はなかった。このことが、「量を問わず放射線は恐ろしい」という、いわゆる「放射能恐怖症」が拡がった要因の一つと考えられる。

2012-09-06 06:29:53
ala @w_ala

唐木英明・幽霊8: 昨年の福島原発事故により大量の放射線が放出され、今なお避難を余儀なくされる現状は痛ましい限りだが、そのような状況においても、放射線にも「量と作用の関係」が存在するという科学的な事実を理解する必要がある。

2012-09-06 06:30:20
ala @w_ala

唐木英明・幽霊9: 福島以後、文部科学省は遅ればせながら「放射線等に関する副読本」をウェブに掲載した。 福島以前は「放射能恐怖症」が大きな問題になることはなかったが、福島以後、環境中の微量の放射性セシウムと何年間か付き合っていかなくてはならない状況が生まれ、事情は変わった。

2012-09-06 06:31:05
ala @w_ala

(cf. 放射線等に関する副読本: 平成23年11月 文部科学大臣 中川正春 http://t.co/0A1tn40M

2012-09-06 06:31:15
ala @w_ala

唐木英明・幽霊10: 「自然の放射線は減らせないが、放射性セシウムは人工物質なのでゼロにすべきだ」といった意見は心情的に理解できるものの、自然放射線以下のわずかな放射性セシウムを恐れないければならない「検証された科学」に基づく根拠は存在しない。

2012-09-06 06:35:19
ala @w_ala

唐木英明・幽霊11了: そして、そのような感情的な主張が生み出すリスクへの配慮の欠如が、福島周辺の農産物に深厚な風評被害を及ぼし、被災地がれきの広域処理に影を落とし、被災した住民に二重、三重の苦難を強いている。

2012-09-06 06:35:25

(上記に続く、結び)

おわりに

リスク管理とは不確実性との戦いである。十分なデータがない中で、対立する多くの意見を俯瞰的な見方に立って調整することが必要である。その拠り所とすべきものは個人差が大きい感情や倫理観、あるいは検証を経ない「科学」ではなく、検証を経た科学であり、そのような対話を助けるものが「安全の科学」である。日本学術会議「日本の展望2010」は以下のように述べている。
 『リスクには発生予測が困難で原因や今後の展開が不明なものもあり、そのようなリスクに対しても、その時点での最善の科学を駆使して不確実性を縮減しつつ、早急に対策を立てる必要がある。さらに、リスク評価、対策の効果と実施にかかる予算的人的コストの事前評価、政策の事後評価や、これらの過程に関係者の意見を取り入れ、理解を得るためのリスクコミュニケーションにも、科学的理論による基礎づけと手法の開発が求められる。このような安全政策を総合的に支えるための「安全の科学(リスク管理科学:レギュラトリーサイエンス)」は、自然科学と人文・社会科学の緊密な連携が必要である。』