ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター #6

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ファスト・アズ・ライトニング、コールド・アズ・ウインター」 #6

2012-09-25 18:20:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「両陣営入場です!」司会者がハウリング気味の拡声器に声を張り上げると、タイコ・ドラムロールが観衆の大歓声を引き出した。向かい合ったテントからそれぞれのスシシェフが姿を現す。東のテントからはワザ・スシ組。アキモトとエーリアスの二名。西のテントからは……「イヨォー!」「イヨーッ!」1

2012-09-25 18:27:43
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ジョギング集団めいたイタマエ達が二列でテントから駆け出す。12人もいる!彼らはそのまま軍隊の演習めいて規則正しい隊列を組んだ。そして見よ!彼らに迎えられ、ゆっくりとテントから姿を現した威圧的なスシシェフの姿……ウェルシー・トロスシ社長、イタマエ、そしてニンジャ!メイヴェンだ! 2

2012-09-25 18:30:40
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「ワオオーッ!」道路上に設営された段差付き観客席、そしてそれに収まり切らない立ち見の人々が、スシ・バトルへの期待に拳を振り上げ、声をからして叫んだ。東西のスシシェフは一斉にオジギした。「プログラムは三種!タマゴ、マグロ、フリースタイルです!」司会者が宣言した。「ワオオー!」 3

2012-09-25 18:33:41
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「審査員はこちらです!」司会者は金色布で覆われた長机の四人を指差す。「スシ作家、カスマ・タイタイ=サン!」「ドーモ」「ワオオーッ!」「マーケティング評論家、タケチ・キベタ=サン!」「ドーモ」「ワオオーッ!」アキモトとエーリアスは石のようなしかめ面だ。メイヴェンの用意した審査員!4

2012-09-25 18:41:56
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「エー、ワザ・スシが要請していたナバツカ・ロクロ=サンですが、急遽出られなくなりましたので、かわりに副町会長のファンダ・ジモ=サンが三人目を務めます」「ドーモ!ドーモ」「ワオオーッ!」ナムサン!副町会長はこのストリートにウェルシー・トロスシの出店招致を行った急先鋒である! 5

2012-09-25 18:49:19
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「最後に、スシ・マウンテン・ドージョー師範、ユノモ・アツシ=サンです」「ドーモ!」「ワオオーッ!」アキモトが呼んだ審査員!古傷まみれの逞しい腕、気骨の男である事の証明であろうか?(アキモト=サン!久しぶりだな。ハンパなスシを出したら容赦なく切り捨てるぞ!)その隻眼が無言で語る!6

2012-09-25 18:58:41
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(よい。もとより不正など望まぬ)以心伝心。アキモトは頷く。エーリアスは額の汗を拭った。四人中三人が敵の手の者。「審査員の皆様だけではつまらないですね?」司会者が観衆に問う。「ワオオーッ!」「指定席の皆さんにも参加していただきます!多数決で五人目の審査員扱いだ!」「ワオオーッ!」7

2012-09-25 19:01:34
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「エー、東西陣営はそれぞれに野外設営のこの調理施設を自由に使っていただいてですね。皆さんにスシを!握っていただきますのでね!」「ワオオーッ!」司会者のもとに、メイヴェンの部下のイタマエがしめやかにオリガミ・メールを持ち来った。司会者はそれを読み、驚いてみせた。「何とすごい!」8

2012-09-25 19:07:09
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観衆が固唾を飲んだ。司会者は叫んだ。「審査に参加できない立ち見の皆さんにはウェルシー・トロスシからオーガニック・マグロのネギトロが無料配布されます!」「ワオオオーッ!?」「審査に関係ない皆さんへの振る舞いだ。ワイロにはあたらない」メイヴェンは腕を組んで頷いた。「楽しんで下さい」9

2012-09-25 19:09:46
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「なんだと!」エーリアスが気色ばんだ。「てめェ!そのマグロは」「やめろ!」アキモトが肩を摑んで制した。エーリアスは奥歯を噛み締めた。メイヴェンが進み出、至近距離からアキモトを見下ろした。「ウチのマグロをどうしようと、ウチの勝手だからな」「ああそうだ」「余って余って仕方ない」 10

2012-09-25 19:15:37
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「そうよな。あれだけ必死で買い占めればな」「フン」メイヴェンは鼻で笑った。「私はマクロ・スケールの戦場に立っている。貴様を潰すのは確定事項だ。潰す過程で我が社の株価をさらに上昇させ、さらなる追い風を呼ぶ。それだけだ。貴様が身の程知らずにも相手するのは巨大な帝国なのだ」11

2012-09-25 19:23:48
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メイヴェンはアキモトの右腕にわざとらしく注目した。「イタマエともあろうものが、利き腕を負傷か。心得足らずもいいところ」「殺せんで残念だったな」「フン」メイヴェンの瞳が残虐な輝きを宿す。「考えてみれば、貴様の死で試合が流れてはエキジビジョンに成りきらんところだ。いや良かった」12

2012-09-25 19:38:23
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「負け惜しみだな」エーリアスが口を挟んだ。「お前はアキモト=サンが怖いんだ。だから汚ねえ手を使って潰そうとした。残念だったな、試合に持ち込まれてさ!」「アキモト=サン」メイヴェンは無視し「まさか、これが握るのかね?貴様のかわりに」「そうだ」「ハッハッハッハッハー!……ハーァ」13

2012-09-25 19:48:08
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メイヴェンは肩をすくめ、戻って行く。司会者は両者を見比べ、やがて宣言した。「ではタマゴです!」「ワオオーッ!」「どうしました?」司会者がアキモト達を見た。アキモトはしかめ面で言った。「タマゴは棄権だ。ネタが無い」「なんと?」「棄権です」「ブーッ!」観衆から怒涛のブーイングだ!14

2012-09-25 19:51:54
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「何ーッ?」副町会長のファンダが腰を浮かせた。「勝負をナメとるのかね、君ィ!」センスをパタパタと動かす。「最初から、なに……棄権?え?これは心証が悪過ぎるよ君ィ!困ったよ実際!」「本当にダメだ」タケチが同意する。「ちなみにこれはマーケティング的にもあり得ない事ですね!」15

2012-09-25 20:02:06
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「確かにこれは、いけないなあ。どう思います?ユノモ=サン」スシ作家のカスマが師範代のユノモに水を向けた。ユノモは腕組みして苦々しく言った。「不覚悟を指摘されるのは当然ですな。あらゆる状況を想定すべきだ」「そう!実にそうです!」カスマが繰り返し頷いた。16

2012-09-25 20:14:07
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「ブーッ!ブーッ!」「皆さんお静かに!」メイヴェンが威圧的な声を張り上げ、ブーイング観衆を黙らせた。「彼らがスシを出せずとも、我々のタマゴのワザマエは当然お見せします。ご安心ください」「ワオオーッ!」歓声の中、メイヴェンは部下を振り返った。「はじめよ!」 17

2012-09-25 20:22:44
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「サーイエッサー!」部下達が一斉に叫び、高火力ホットプレート上に巨大なフライパンをかざした。「焼くべし!」「サーイエッサー!」ガン!ガン!ガン!ガン!激しい腕遣いでコンロとフライパンが衝突する音が鳴り響き、タマゴの黄色と白がホクサイ・ウキヨエの波しぶきめいて渦巻いた。 18

2012-09-25 20:36:32
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渦巻くタマゴはフライパン上でオムレツめいて跳ねながら形を整えられてゆく!そしてイタマエはフライパンを打ち振る、「イッチョ!」黄色く長く焼き上げられたタマゴが宙を飛び、メイヴェンが待ち構えるまな板上に落下した。「イヤーッ!」メイヴェンが包丁を高速で動かし、タマゴ切断! 19

2012-09-25 20:40:01
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「ワオオーッ!」「イッチョメ!」時間差で他のイタマエ達が次々にタマゴを焼き上げ、跳ね上げて供給!「イヤーッ!イヤーッ!」「イッチョメテ!」「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」タマゴを切断し続けるメイヴェンの包丁遣い!ゴウランガ!観衆の視線を釘付けにするパフォーマンス・ムーヴ! 20

2012-09-25 20:42:24
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「イヤーッ!」メイヴェンの腕が閃き、大量のスシを握ってゆく!「ノリ!」「サーイエッサー!」イタマエ達は電子コンロからまな板のスペースめがけ一斉にダッシュし、メイヴェンが握り終えるタマゴに総出でノリを巻いて行った。「イッチョアガリ!」「イッチョ!」「ワオオーッ!」 21

2012-09-25 20:47:37
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一方、ワザ・スシは何を?……エーリアスはアキモトと向かい合い、ザゼンしていた!観衆はメイヴェンのワザマエに魅せられ、一方でこの二人のゼンめいた静寂の光景を訝しんだ。「なにやってるワケ?」「ミスティック?」「ハッタリじゃない?」「やる事無いんだろ」 22

2012-09-25 20:53:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アグラ・メディテーションめいて目を閉じる二人は、その姿勢から両手を互いに伸ばし、手の平同士を合わせている。観衆には知る由も無い。これはエーリアスのユメミル・ジツ。彼らは互いのニューロンを接続、脳内の神秘的ローカルコトダマ空間内のドージョーに並び立ち、最後の特訓に突入していた。23

2012-09-25 20:59:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

二人はイタマエテーブルの前に並んで立っている。「自信満々のバカのおかげで時間が稼げた」エーリアスは減らず口を叩く。「黙ンなさい!」アキモトはピシャリと言った。「アンタ、流石ニンジャだ。スポンジみたいにワシのメソッドを吸収したな。商売上がったりと言いたいところだが、まだ足りん」24

2012-09-25 21:04:50