カオス理論

アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

カオス現象：多くの物理現象は、少なくとも非常に高い精度で、決定論的な法則に従う。それ故に原理的には将来の振る舞いが予測可能である。しかし「初期条件への敏感な依存性」のために、実際問題として将来の予測が不可能になることも少なくない。大雑把に言えば、これが「カオス現象」である。

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地球の大気圏という系を二つ用意する（たとえばフロリダとマダガスカル）。同じ法則に従うこの二つの系の状態がほとんどそっくりだった（が正確には同じではなかった）にもかかわらず、わずかな時間の後には、両者の状態が似ても似つかなくなってしまうということが起こりうる。

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フロリダとマダガスカルの二つの系のうち、今日マダガスカルで蝶が羽ばたき、フロリダでは羽ばたかなかったとする。それ以外には何の差もない系であった。ところが三週間後にはフロリダの方でハリケーンを引き起こした。もちろん「蝶が羽ばたいたからハリケーンが生じた」というのではない。

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（つづき）「一方で蝶が羽ばたき、他方で羽ばたかなかったという差しかなくても、それから三週間後の気候は、ハリケーンがあるかないかというほどにまで大きく異なってしまいうる」ということである。このような事情の現実的な帰結として、数週間以上の天候が予報できる希望はほとんどないといえる。

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初期状態が不完全にしか分かっていない決定論的な系。この初期データの不正確さが系の未来の予測の質に反映する。一般に、時間が経つほど予測は不可能になっていく。不正確さの増加の〈仕方〉は、系によってゆっくりと増加するものもあれば、非常に速いものもあり、異なっている。

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（続き）ゆっくりと増加する方の系（以下「第一の型の系」）は線型あるいは時間の累乗の程度で時間とともに増える。非常に速い方の系（以下「第二の型の系」）は指数関数的であるという。

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ある指定された予測が欲しいとして、「予測することがどのくらいの間要求した精度を保ち続けるかの時間範囲」を問う。技術的改善によって初期条件についての知識の不正確さが半分になったとする。第一の型の系では、この技術的改善によって要求精度で系の状態の〈予測可能時間範囲〉は二倍になる。

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これに対して第二の型の系では、〈予測可能時間範囲〉はある一定の時間だけ増加するのみである。第一の型の系をカオス的でない（カオティックでない）系、第二の型の系をカオス的（カオティック）な系という。

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カオス的な系では、予測可能性がはっきりと限定されている。初期データの精度が二倍になったとき、なんらかのあるカオス的な系で〈予測可能時間範囲〉が一日延びるとしても、精度を千倍にすることは、〈予測可能時間範囲〉を十日近く延ばすにすぎない。百万倍にしてもそれは二十日程度である。

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ただし、カオス的な系であっても初期測定精度を二倍にすることによる〈予測可能時間範囲〉の延長量が、大部分のカオス的でない系よりも非常に長いということもありうる。惑星の軌道などはカオス的な挙動をするが、この場合の一定の長さは数百万年のオーダーである。

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カオス理論をめぐっての三つの混乱。1.理論から得られる哲学的な結論についての混乱　2.「線型」「非線型」という言葉の比喩的な用法からの混乱　3.性急な応用や拡大解釈に伴う混乱