「科学報道を殺さないために-研究機関へお願い」の続き

続き (不完全)
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まとめ 科学報道を殺さないために-研究機関へお願い 科学記者の方の立場からのつぶやきです 古田さんは日経サイエンスの記者をしています 127119 pv 1724 245 users 453
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

先日の連ツイ、何がまずかったか少しわかってきた。研究者さんの受け止め方が、分野によってかなり違ったから。

2012-10-28 08:12:25
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

医学分野では、記者はとかく研究者が忙しい時ほど取材したがる。例えば新型インフルエンザの時、ウイルス解析を進める研究者に取材に行き、何時間も粘ったり、しょっちゅう電話をかけたりする、と想像したら、怒るに決まっている。

2012-10-28 08:13:20
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

取材を受けて頂けたら事前に論文を読み、質問を送り、最小時間で取材できるようにするのは当然。私もそうした。

2012-10-28 08:13:56
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

緊急時でなくとも、医学なら原則、論文か総説を読んで行く。日ごろ取材している分野なら何とか読めるし、少なくとも実験・検査方法と結果はわかる。とはいえ何が本質かはやっぱり判断つかないし、誤解もするから、取材は必須で最重要。できるだけ発表者以外にも取材し、見方を聞きたい。

2012-10-28 08:15:04
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

ただ記者は大学図書館にアクセスがないから、Nature, Science以外に載った医学論文取るのは難しいんだよねえ。物理みたいにプレプリントサーバがあるといいんだけど。あと、まったく新しく取材する分野は、医学でも歯が立たないことは多い。

2012-10-28 08:15:44
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

一方、物理や数学では、そんな取材はできない。例えば、ある研究者が論文を出す。一般受けする話じゃないのでマスコミ発表はしていないが、研究会では質疑が盛り上がってたし、プレゼンが面白かったので訪ねていく。そういうことはしばしばあるが(あ、物理の話。数学の研究会に出たことはない)

2012-10-28 08:17:48
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

論文は、物理ならアブストと考察眺めるだけ。数学はどうせ何もわからないので見ない。でもこの辺の分野では、研究者であっても専門分野が違えば論文は読めないそうなので、記者に論文を読んでくることを期待する人もまずいない。私が想定していたのはこっちの方。

2012-10-28 08:18:27
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

こんな風に独自で取材に行くと、たまに何かのきっかけで互いにスイッチが入ってしまうことがある。研究内容だけでなく、分野全体の話や教育論に話が広がり、果ては「科学とは何か」みたいな議論になって、気が付けばすっかり夜が更けている。

2012-10-28 08:19:41
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

私は「ザラ」と書いたが、もちろん毎日そんなことが起きるわけではない。年に十数回だろうか。昨日もそれに近かった。互いに「すいません」と言いながら引っ張り続け、終わったのは夜の9時半。先方は若手の理論物理学者さん。

2012-10-28 08:20:33
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

たまに、何人もこんな風にスイッチが入ってしまう分野がある。そうなるとこっちもは面白くなり、ますます取材に行き、知識が増え、業界の事情に詳しくなる。先方ももっと詳しい話をしてくれるようになり、取材時間に正のフィードバックがかかる。

2012-10-28 08:21:27
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

別に物理だけじゃなくて、どんな分野でも起こる。私の場合、かつては終末期医療、HIV、EBMがそうだった。今は量子情報と量子の基礎論がそうなっている。最初の取材時に若い分野だったものが多い。

2012-10-28 08:22:37
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

すると欲が出る。例えば海外の論文を報じたくなる。英語での電話取材では、「こう言ってもいいですか?」という表現の確認ができないので、下手すると誤報になりかねず、とかくためらってしまう。でも「この論文なら、そこはXX先生に訊ける」と思うと踏み切れる。

2012-10-28 08:24:20
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

XX先生に迷惑と言えばその通りだが、もう気心も知れているし、こちらから提供できるネタもある。独自取材を続けていると、そういうネットワークができる。会見だけでは無理。

2012-10-28 08:26:56
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

これまで、そんな感じのツイートをしばしばしているので、フォロワーさんの多くや物理系の人は後者を想像したと思う。でもツイッターって幅広い分野の方が見ているし、普通は取材と言えば前者を想像するだろう。そこに気づくべきだったと反省。

2012-10-28 08:28:49
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

私は物理(磁性実験)修士と医療経済学MScだけど、仮に博士を持ってても、今取材している理論物理と整数論の論文には歯が立たないと思う。だから博士号は不要って意味じゃないですよ。勿論方があった方がいい。でも問題の本質はそこではない。

2012-10-28 09:18:42
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

科学記者の役目は、論文に書いてあることを解説することではないと思う。それなら研究者がやった方がずっといい。記者の役目は論文には書いてないことを、本人やほかの人から取材して、それを織り込んでわかりやすく、面白く書くことだ。論文読めるのは武器にはなるが、取材の代替にはならないよ。

2012-10-28 10:07:24
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

だって論文ってもともと、その分野が最高に面白くて、スリリングで、わくわくして、重要だと思ってる人向けに書いてあるわけで。そのままかみ砕いたって、一般人にはどこが面白いのかわからない。最大のハードルは中身を理解してもらうところじゃなくて、それが重要で面白いってことを伝えるとこだから

2012-10-28 10:18:26