牧眞司氏のSF思い出話
- kokada_jnet
- 14027
- 0
- 14
- 0
初版の事情、もとい諸般の事情で、Twitterはじめました。読んだ本の感想文はmixiで書いているので(全体公開)、こちらでは乾燥文でもやりましょうかね。
2010-07-26 21:26:42いっぱつでその作家に惚れてしまう体験がたまにある。いまでも忘れられないのが、中学一年のとき、メリル編『年刊SF傑作選』で読んだ「七日間の恐怖」。それ以来いまに至るまで、ラファティはぼくのいちばん好きなSF作家だ。
2010-07-26 21:44:28SFM1975年9月号の「愛はさだめ、さだめは死」も強烈だった。これがティプトリー初体験ではないが、以前の邦訳2作も慌てて再読し、このひとは凄い、SFでこんな表現ができるのかと痺れた。いまでも「愛は~」は、ぼくのオールタイムベストSFの上位を占める。
2010-07-26 21:52:421975年のSFM。ビショップ「キャサドニアのオデッセイ」、クラーク「太陽の風」、ラファティ「みにくい海」、カルヴィーノ「ただ一点に」、スワン「薔薇の荘園」、ライバー「ビート村」、ウルフ「アイランド博士の死」、マッキンタイア「霧と草と砂と」、エムシュウィラー「グリンディ」……。
2010-07-26 22:00:22凄いでしょ。粒揃いじゃないですか。で、当該年度の星雲賞海外短篇部門、なにが受賞したと思いますか? その当時、現役だったひと、おぼえていますか? ぼくは忘れません。びっくりしたもの。チャンドラーの「濡れた洞窟壁画の謎」!
2010-07-26 22:08:52「濡れた洞窟壁画の謎」なんて、誰がおぼえてますか。ぼくはあまりのことに題名は、忘れたくても忘れようがありませんが、内容なんてカケラもおぼえてませんよ。forgettableな小説とは、これのことです。
2010-07-26 22:11:38賞なんて水ものとはいえ、これはあまりに酷すぎる。綺羅星のごとく傑作がひしめくなか、よりによってこんな愚作が受賞するなんて。なにかの間違いだと、ぼくは思いましたよ。
2010-07-26 22:18:40だから、星雲賞の勧進元である日本SFファングループ連合会議の議長(当時就任したばかり)の門倉純一さんに言いました。これでいいのか、って。
2010-07-26 22:20:38そうしたら「これでいいのだ!」だって。そのうえ、野次馬のような言いがかりは止めたまえ。不満があるなら、キミが星雲賞の実務をやってみろ、と。
2010-07-26 22:23:38血気盛んなころでしたからね。「やってやろうじゃないですか、ええ、やりますよ、オレがやりますよ」、売り言葉に買い言葉ですよ。これが、ぼくが連合会議の事務局長になったいきさつ。正確に言うと、すぐに事務局長になったわけじゃなくて、一年間は事務局員という曖昧な役職でした。
2010-07-26 22:26:20つまんないんですよ、事務局長の仕事。だって、ファン活動とは言え、SFとは直接関係ないんだもの。連絡したり会計したり票を数えたり。とんだ回り道でした。まあ、人生経験にはなりましたが。あと人脈がちょっと。
2010-07-26 22:28:28あ、そうそう。なんでチャンドラーの愚作が受賞したのか。若いみなさんが、この結果だけみると、その当時のSFファンは気が変だったと思うでしょうね。この年の日本SF大会の実行院長が野田昌宏さんだったんですよ。 「濡れた洞窟壁画の謎」を訳したのは、このひと。ようするにご祝儀ですな。
2010-07-26 22:32:48星雲賞はこのほかオカシな話がいろいろあるんですが、おおぴらに言うのはよくない(まだ乾ききっていない)ので、よっぽど親しいひとにだけ口頭でお話ししますよ。
2010-07-26 22:44:56あ。みっつまえの書込に誤字。「実行院長」→「実行委員長」。ついでに言うと、野田さんが喜んだのはよいことだと思いますよ。チャンドラーも日本びいきしてくれて、国際親善で万々歳。それでも、「濡れた洞窟壁画の謎」に投票するくらいなら、ぼくはSFファン止めるね。
2010-07-26 22:55:09いっぱつで惚れた話に戻ると、SFMのバックナンバーを集めはじめてすぐに出会った「猿とプルーとサール」もガツンときました。ぼくがニューウェイブ支持派になったのも、この作品が強く影響している。バラードやエリスンよりもロバーツのほうがずっと上だと思っていた。
2010-07-26 23:10:24ちょっと間をおいてだけれど、メリル編で「スーザン」を、NWSFで「神の館」を読み、ロバーツさん、あんたについていくよオレと思いました。むりしてThe Chalk GiantsやAnitaを読んだ。
2010-07-26 23:15:03ちょっと脱線するけど、ぼくが原書で小説を読むのはよっぽどのことです。資料本はけっこう読むけれど、小説はスピード感とか文章の機微がとれないので、もどかしくてなさけなくてションボリするので、敬遠してしまう。洋書1冊読むあいだに翻訳10冊以上読めるんだもの。その程度の読解力。
2010-07-26 23:18:28このあいだ、SFの例会で「洋書の小説でまるごと読み通したのは、これまで10冊くらいしかない」と言ったけれど、訂正。30~40冊くらいは読んでいます。エバれる数じゃないけれど。チャップブックは数えない。
2010-07-26 23:21:45で、話を元に戻してロバーツのこと。The Chalk Giantsは傑作だと思うし、Anitaも面白かったけれど、それ以外にポツポツ読んだ(SFMで追悼特集をやるというので)作品はどうもまどろっこしくて。日本では、このひとの評判がちょっと先走りしている観も。
2010-07-26 23:26:08ロバーツと逆のケースがM・ジョン・ハリスンじゃないかな。このごろチャイナ・ミエヴィルたちが傾倒しているというのが伝わってきて、感度の高い日本のファンにも見直されている(再発見?)けれど、本来ならばサンリオSF文庫時代にもっとちゃんと紹介されて、しかるべき評価を得ていい作家だった。
2010-07-26 23:30:42無理矢理読んだA Storm of Wingsの濃密な空気感(陳腐な表現ですんません)は忘れがたい。そのデカダンなムードは、ムアコックよりも好きだった。
2010-07-26 23:35:53.@ShindyMonkey @frswy そういえばシマックは自分がゲストオブオナーのワールドコンで「踊る鹿の洞窟」がヒューゴー賞だった…。GoHと実行委員長では違うけど、もしや洞窟SFでご祝儀受賞が狙えるの法則!?(原題は違うとかいろいろ無理です)
2010-07-27 00:38:32.@ShindyMonkey 惜しい(?)、マキャフリイとノヴェラ部門を同時受賞のファーマーがGoHでした(A・バウチャーの予定だったが大会数カ月前に亡くなり、その代理)。初出の『危険なヴィジョン』人気もあるとはいえ、「紫年金…」なんて難解作の受賞がむしろご祝儀っぽい?
2010-07-27 01:02:08