「いじめ」かどうかの閾値

淘汰圧って具体的にどういうものなんでしょう
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内田樹 @levinassien

共同通信の取材だん。お題は「いじめ」でした。大津のいじめ防止条例について。こういう条例を制定しなければならないという状況そのものが切ないですね。でも、「いじめ」と「たちの悪いいたずら」の境界線は限りなくグレーです。

2012-11-12 15:49:06
内田樹 @levinassien

そして「これは『いじめ』ではなく『度の過ぎたいたずら』だ」とみなすことから、加害者も、傍観者も、担任も、そして被害者も「利益」を得るという構造があります。

2012-11-12 15:51:15
内田樹 @levinassien

被害者もまた「自分はいじめられているわけではなく、悪質な(だが、願わくは一過性の)いたずらの対象であるに過ぎない」という楽観的な見通しについしがみつきます。

2012-11-12 15:51:42
内田樹 @levinassien

精神的肉体的な苦痛がこの閾値を超えたら「いじめ」と認定されるというデジタルな境界線は存在しません。そして、この閾値をできるだけ高めに設定することから、関係者の全員が利益を得るように「いじめ」は構造化されている。

2012-11-12 15:52:54
内田樹 @levinassien

条例は「いじめ」が刑法上の犯罪と同じく外形的に特定可能であるという立場をとっています(当然ですが)。でも、実際には誰かが「これはいじめだ」と訴えても、簡単には事実認定されません。関係者全員が「いじめが存在しない」ことを願っているからです。

2012-11-12 15:57:54
内田樹 @levinassien

いじめをなくすためには何をすればいいのか。僕にもわかりません。ほんとうは子供たち自身の中から「そういうことをするのは止めなさい」という制止の言葉を口にできるものが出現してきて、それを複数の級友が支持して、子供たちの中で収束が計られるというのがベストなのでしょう。

2012-11-12 16:00:28
内田樹 @levinassien

「やめたまえ」という発言をするこの「金太郎タイプの子供」だけは例外的に「いじめを早期に、低い閾値の段階で発見することから利益を得る」ことができます(おのれの倫理的優位性を確認できるから)。

2012-11-12 16:03:11
内田樹 @levinassien

でも、過去20年間の日本社会はまさに「君たち、そういうことをするのは止めたまえ。人間として恥ずかしくないのかい」というタイプの「きれいごと」を自己責任で発することができるタイプの子供を根絶するように淘汰圧をかけてきたのでした。

2012-11-12 16:05:15