■山本七平botまとめ/【普遍主義的自由主義】/普遍主義がもたらす”迷惑”とは/~西欧的普遍主義を疑え~
- yamamoto7hei
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①【普遍主義的自由主義】小田実氏が「普遍主義的自由主義」という大変に面白い言葉を使ったので、この言葉について少々考えてみたい。<『「常識」の研究』
2012-11-26 16:28:04②「普遍主義」という言葉は、それ自体としては内容が明らかではなく、いわば人類全体を律しうる普遍性をもつと信じられている主義のことだから、カトリシズムは文字通り普遍主義である。
2012-11-26 16:57:43③言うまでもないが少々古い英語では小文字でcathoricと書けば普遍的一般的の意味である。 同様にマルキシズムも、それが人類に共通する普遍性をもつ原理と主張されている点では普遍主義であろう。
2012-11-26 17:28:04④同時に自由主義も、それ自体は内容が明らかでなく、「何々からの自由もしくは解放」を意味する主義の総称のはずである。 ただ近世においては大体これは、教会法もしくは宗教法からの自由、封建的体制からの解放を意味する言葉とされている。
2012-11-26 17:57:43⑤そしてこの意味の自由主義ならそれを最も端的に表しているのはおそらくアメリカの憲法であり、それは宗教法的体制と封建的身分制を絶対に採らないことを宣言している。人は宗教宗派に関係なく国家の定めた法の前に平等で、同時に身分上の法的差別は否定され、この点でも平等とされている。
2012-11-26 18:28:00⑥そしてアメリカ人は、この自由主義を人類普遍の原理だと信じている点ではまさに普遍主義的自由主義者である。 だが、アメリカ的自由は果たして人類普遍の原理であろうか。 おそらくそうではあるまい。
2012-11-26 18:57:47⑦そう信じて、この主義を世界中に輸出しようとしたことが、アメリカの大きな誤りではなかったのか。 さらにこの自由の内容が、搾取からの自由、働く者の解放となり、それを目指すことが人類普遍の原理であるとなれば、これはソビエト的普遍主義的自由主義ということになる。
2012-11-26 19:28:02⑧従って共産化されることを解放と規定している普遍主義的自由主義とは、つまり共産主義者のことであり、それ以外に定義の方法がない。 ソビエトがこの自由、すなわち「解放」を世界中に輸出しているという点では、アメリカとは変わりはない。
2012-11-26 19:57:43⑨確かにそれが人類普遍の原理なら、世界中に輸出されて当然であろうが、これが果たして普遍性をもって、人類を解放してくれるのであろうか。 おそらく多くの人はその自由すなわち解放なるものに疑いをもっているであろう。
2012-11-26 20:28:04⑪言うまでもないが、アメリカやソビエトのような国は、その統治の原理が人類普遍の原理であると主張することによって、国内における統治の正当性を主張できるわけであって、もしそれが人類普遍の原理でないならば、それによる統治は何ら正当性をもち得ないはずである。
2012-11-26 21:28:02⑫従って外への普遍性の主張は、つまり内への統治の正当性の主張なのである。 アメリカの原理が世界の普遍的原理であり、あるいはソビエトの原理は世界の普遍的な原理であるがゆえに、正統性があるとされるにすぎない。
2012-11-26 21:57:44⑬これが常に、何らかの形でその正当性の外への主張とならざるを得ないわけである。 これは、たとえば日本やイギリスのような伝統主義的な国家となれば、その必要はない。
2012-11-26 22:28:03⑭日本国内の伝統的原理は日本にだけ通用すればいいのだし、日本人がその伝統的価値観において自由だと感じていることは、日本人だけがそう感じていれば十分なのであって、何もそれが人類普遍の原理である必要はなく、そう主張しない限り自らの原理や自由が自己の内で維持できなくなるわけではない。
2012-11-26 22:57:45⑮われわれは相対的自由主義で少しもかまわないのである。 いわば、アメリカ人がアメリカの自由で満足ならそれでよいはずで、ソビエト人がソビエト的解放に基づく自由に満足しているなら、それはそれで結構なことで、(続
2012-11-26 23:28:03⑯続>何も日本的自由を相手に押しつける気はないから、同様に他の国も他国にまで出かけていって解放してやろうなど考えなくてよいはず、とするのが相対的自由主義であろう。 普遍主義はしばしばその普遍的と称する原理原則で他国・他人に干渉する権利を主張する。
2012-11-26 23:57:44⑰小田氏が頭の中で描く普遍的自由主義が、いかなる内容を人類普遍の原理とし、いかなる状態からの解放を自由と規定しているのかは明らかでない。 もちろんそれは小田氏にとっては自由と感じられる何かなのだろう。
2012-11-27 00:27:52⑱だがそれを普遍の原理だと言って他国・他人に押しつけるならば、それは押しつけられる者にとっては自由でもなければ解放でもなく、それから逃げ出したい迷惑にすぎないかも知れない。
2012-11-27 00:57:42⑲そして、その迷惑は世界はもう十分に経験している。 われわれがその経験に立って考うべきことがあるとすれば、過去における西欧的な普遍主義なるものへの再検討であっても、その模倣ではあるまい。
2012-11-27 01:27:58