川上稔さん(@kawakamiminoru)のライブ小説「総統閣下の塔」
することは山ほどあるので、飽きないと言えば飽きないのはいいですねー。始発あたりで帰りたいところですが、会社の閉め方手順をかなり忘れてるのでどーだろーか的な。
2010-08-13 23:18:53まあ今夜はコミケ準備とかで徹夜の人も多かろうし、金曜だしで、そこらへんの人達はテキトーにお付き合い宜しく御願い致します。
2010-08-13 23:21:04それは戦争が始まる前のことだった。総統閣下は国の各地に巨大な通信塔として自分の像を建て、てっぺんに仕込んだ通信施設から各地の情報を行き来させていたんだ。当然、戦争が始まったら通信の要になったけどね。
2010-08-14 03:11:02総統閣下は自分の像のてっぺんから見る風景が大好きらしく、各地をデカイ黒の車で行き来しながら、寝泊まりするときはその像の中と決めていたらしい。防備にも優れた施設ってわけだ。僕の住む町、近くの丘上にもそれはあったとも。
2010-08-14 03:11:53さて、当時の僕達は元気のいい中等部。僕には気になる娘がいたけど、ボーイッシュな彼女は町の人気者で、当然のように僕には近所という以外の接点がありません。どうしたもんかというところさ。
2010-08-14 03:13:12僕達の町には総統閣下の像というか通信塔があるため、当然のように通信系の機械や部品が多く出回るようになった。そして僕達は当然のように自分達でレディオを作り、あるものを聞いた。それは戦前から各地で起きていたレジスタンスの抵抗放送だ。
2010-08-14 03:14:11レジスタンスの大将は、総統閣下の友人だったと言われる男。彼が、そして彼の仲間達が、各地で夜の音楽を流す。「ヘロー ヘロー 少年達、少女達、今日も悪いおじさんが抵抗の曲を聴かせよう。あの馬鹿をもう一度起こすために」
2010-08-14 03:14:59僕達は学校で言われたり、町の掲示板にて告げられるレジスタンス放送の傍受禁止命令なんざ聞く耳当然持ってない。そりゃそうだ。堅めのヘッドホンつけてれば音は漏れないしスイッチ一つでヘルツは変わる。足なんか掴めない。
2010-08-14 03:16:50大体、レジスタンス放送自体が不定期だ。夜の十二時というのは決まっていたが、毎晩ではなかった。数日開き、一週間開きもザラにあった。だから僕達は引き寄せられ、語り合った。次はいつになるのか、と。そして放送の翌日は、”英雄”が生きていたことを喜んだ。
2010-08-14 03:18:21友人が、レジスタンスと会ったとか、大将らしき人が近くの町にきたとか、そういう噂で僕達は盛り上がる。場所は教室の窓際。レジスタンス放送の口まねは評価の対象になったし、そこにはいつもあの娘がいた
2010-08-14 03:19:21だが、男連中は、彼女達がよってくると澄まして格好つけたがる。これは男の仕事なんだ、ってね。ああ、僕もやった。何しろレジスタンス放送には男しか出ない。口まねも、女の声では格好つかない。そんな声色の違いだけが僕達の優越だ。
2010-08-14 03:21:00しかし僕達は中等部の上級生になって、もう一つ上の優越を手に入れた。友人が「隣町でレジスタンスの関係者という露天商から売って貰った」と、もうインチキくさい図面を持ってきたんだ。
2010-08-14 03:22:47だけどそれが確かに僕達を優越させた。それは何故なら通信機の設計図だったから。あ、通信機といっても、単に海賊レディオ用の放送機ってやつだ。今ならそこらの店で売ってるアレな。いや、アレよかもっと音も何も悪いしどうしようもないものさ。
2010-08-14 03:24:29でも僕達はそれで始めた。何をって「レジスタンス放送」さ。何しろ「関係者から買った図面」なんだ。文句は無いだろう? 僕達は選ばれたんだ、ってね。
2010-08-14 03:26:05通信は毎晩、十二時に行われた。レジスタンス放送が無い夜、皆で代わりをやってやるのさ。それは当然、僕達の町中にしか通じないことだったけど、用心のために僕達はいつも複数人が同時に放送を行い、攪乱したつもりになっていた。大人達が寛容だったんだろうけど。
2010-08-14 03:27:32さて、あるとき僕は彼女に呼び止められた。「うちの近所のあの放送、貴方でしょう」って。おっと、例え恋人や家族でも正体を知られてはならないのがレジスタンスだ。だから僕はしらばっくれたさ。
2010-08-14 03:28:49「貴方が一番、口まねが上手いと思うんだけど」っておだてても僕は乗らない。しかし彼女は言うんだ。「だったら、そんなの関係無しで”放送局”を私にも作ってよ」ってね。お安い御用過ぎるとも……! 浮かれたから二日で作って四箇所火傷したね。
2010-08-14 03:30:14で、だ、僕が彼女に”放送局”を渡した翌日、不意に彼が来た。総統閣下だ。総統閣下は噂通り、多量の護衛をつけて黒のデカイ車でやってきて、その像に入っていった。他国との交渉の途中とのことで、午後から町は静かな、しかし騒ぎの状態になった。
2010-08-14 03:31:35何故なら、総統閣下が「セーケンホーソー」をすることになっていたからだ。それも夜の十二時に! だったら僕達がそれを潰すしか無いじゃないか。無論、出力では雲泥なので、重ねる形で騒ぎ立てようってことだったけど。
2010-08-14 03:32:47