ICRPタスクグループ84 要約レポート:日本の原子力発電所事故で明らかになったことと、放射線防護システムの改善への提言(訳)

原文 『Report of ICRP Task Group 84 on Initial Lessons Learned from the Nuclear Power Plant Accident in Japan vis-à-vis the ICRP System of Radiological Protection』 http://www.icrp.org/docs/ICRP%20TG84%20Summary%20Report.pdf 同様のまとめがこちらにもあります。 続きを読む
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Flying Zebra @f_zebra

ICRPタスクグループ84 要約レポート  日本の原子力発電所事故で明らかになったことと、放射線防護システムの改善への提言

2012-12-08 23:52:51

【本文】

Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】福島事故の後、ICRPはこの事故でのICRPの放射線防護システムに関する課題を明らかにするため、タスクグループを招集した。事故の影響を受けた人々は放射線被曝から概ね適切に防護され、致死量の(または被曝による健康影響を受けるほどの)放射線を被曝した人はいなかった

2012-12-08 23:53:59
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】それ故、ICRPはこの未曾有の事故で明らかになった事項を要約しておくことは重要だと考える。以下に示す18の事項が注意を要するものとして抽出された。関連するICRPの勧告を注意深く見直し、新たな提言をまとめた。

2012-12-08 23:54:50
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】このレポートで言及されている順番については特に意味はない。重要なのは、ここで論じられていることの多くは2011年3月よりも前に既に言及され、さらなる解析が必要と指摘されていたことである。 1. 放射線リスクの予測(及び通常のリスク係数に対する誤解)

2012-12-08 23:55:49

1.放射線リスクの予測(及び通常のリスク係数に対する誤解)

Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】事故の後、実際の放射線被曝リスクはICRP勧告の通常リスク係数より遙かに高いとする主張がいくつかのグループやメディアから成された。

2012-12-08 23:56:44
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】特にICRPが低線量での放射線被曝を推定する際に用いる線量・線量率効果係数について、メディアで疑惑が広がった。とりわけ、日本で広く視聴されている、あるテレビ番組の影響が大きかった。

2012-12-08 23:57:00
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】放射線防護に用いられる通常リスク係数の基本概念の背景となっている、生物学、疫学、倫理学の膨大な研究の積み重ねが日本では公衆から誤解されている。残念なことに、メディアがその誤解を広めている。線量・線量率効果係数(DDREF)については特に理解されていない。

2012-12-08 23:58:05
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】その理由の一つは、この単語が英語ですら言葉として複雑で、日本語や他の言語に訳された際には更に分かりにくいことである。

2012-12-08 23:58:31
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】電離放射による健康リスク情報を生物学的、疫学的にレビューした結果、ICRPの新しい勧告では過剰癌リスクと遺伝的影響についてのこれまでの推計を再確認し、従来通り実効線量1シーベルト当たり5%とした。

2012-12-08 23:59:05
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】この値は国際的な放射線リスクの推計、例えば原子放射線の影響に関する国連科学委員会の推計と整合したものであり、それ故ICRPが放射線リスクの推計を過小評価しているとの批判は根拠を欠くものである。

2012-12-08 23:59:18

2. 低線量被曝での放射線効果

Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 2. 低線量被曝での放射線効果 事故以来、事故による将来的な犠牲者の数について仮定に基づく様々な推計が出されてきた。これらは、査読論文での数十件程度というものからメディアが出す50万人といったものまで幅広い。

2012-12-09 00:07:53
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】こうした人騒がせで根拠のない計算は、日本の公衆に過酷な精神的苦痛を与えている。

2012-12-09 00:08:23
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】放射生物学、放射疫学の科学に対する認識論的限界と、それが低線量被曝状況の健康影響の要因推定に与える影響についてはしばしば無視される。これについての明確な説明は不可欠である。

2012-12-09 00:14:40
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】それなしには、概念的で僅かな個人の実効線量推計を加算して放射線被曝状況における集団の健康影響(過去についても将来についても)を推定することがなぜいけないのか正しく説明できない。

2012-12-09 00:21:12
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】にもかかわらず、意思決定者は低線量であっても被曝による概念的なリスクを想定し、防護策を取る必要に迫られるかもしれない。

2012-12-09 00:28:18

3.放射線被曝の定量化

Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 3.放射線被曝の定量化 事故の余波の中で、個人の被曝線量の定量に用いられる量の概念や単位(の分かりにくさ)は深刻なコミュニケーション上の問題を引き起こした。以下にその例を示す。

2012-12-10 19:48:27
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 ・それぞれの量の違い(の意味するところ)が十分に説明されず、教育を受けた人々の間ですら正しく理解されなかった。

2012-12-10 19:48:55
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 ・放射線防護(radiological protection)体系で用いられる量と、放射線測定(measurement)の実務で扱う量の違いは更に理解が困難で、これは用語の語義が分かりにくいことも一因である。

2012-12-10 19:49:18
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 ・ある臓器に対する等価線量と、全身への実効線量で同じ単位が用いられ、どちらを指しているのか明示しないまま使われたことで、更に混乱が増した。

2012-12-10 19:49:43
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 ・高線量被曝に対する加重線量(radiation-weighted dose、放射線加重係数とは区別した効果加重)の公式な値が決められていないことは、幸い今回の事故では必要なかったとはいえ、未解決のままである。

2012-12-10 19:50:07
Flying Zebra @f_zebra

【ICRPレポート】 ・放射線防護において、なぜこれほど多くの量が定義されているのかと言うことについてはほとんど理解されていない。

2012-12-10 19:50:16
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