『雨の記憶:パイロット版絶筆』『小景』『雨の記憶』

備考録。ベース:DOC/規定:BLなので苦手な人は尻尾ぐるぐる巻きで逃げるように
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犬子 @27000hz

雨は嫌いだ。雨に濡れるのも嫌いだ。湯を使うことは決して嫌いじゃないことを考えれば、物理的な事象そのものではなく、多分に心象によるのだろう。あまりに雨を忌避する自分を「名は体を表すっていうけど」と、儚げな外見を裏切る猛禽の魂を持つあの子はどこか嬉しそうに表すのだが #雨の記憶

2012-11-13 12:16:27
犬子 @27000hz

「今日は休みなんでしょう?ねえ日暮れまではずっと此処にいてくれるんでしょう?」自分の休日が潰れてしまうのに何故こんなに喜ぶのか。「そういうもんだよ?」と館の主人に呆れ顔で問いに返されたことがあった。多分自分は「自分」だけの一種なのだろうなとこんなときにふっと思う #雨の記憶

2012-11-13 12:24:50
犬子 @27000hz

いてもそうやることは夜と変わることもないのだが、さしあたっての満足がまだ近しいうちには選択肢に入らない。かといって、うっかり本を開けば午睡の後には総糊付けや墨塗りになるだろう(この前も再入手にいらぬ手間をかけた)と思えば5分後の罵倒をやり過ごしつつの睡眠くらいだろう #雨の記憶

2012-11-13 12:29:30
犬子 @27000hz

多分被害に遭った本は10冊を軽く超えていると思われます(痛い目遭ってもあんまり困らないので忘れる。武器屋さんが優秀で結局再入手できるから)。というか一人で寝こけるから怒られるのであって、抱き枕にくらいしてやればいいんだよ赤猫よ #雨の記憶

2012-11-13 12:33:59
犬子 @27000hz

誰もが皆「此処は地獄の標本」だと言う。それは人が弱さによって支配されるからで、弱い人間ほど支配関係にすがる。生命維持のための満足度と、人間的な優しさとやらが一切関係がないことを思い知らされるからだ。逆光の中、微笑む。対峙する。互いに何も云わず #小景

2012-11-15 23:36:57
犬子 @27000hz

此処が地獄だとするのなら、そう思う本人が『とっくに堕ちた』から此処にいるのだ。相手は何も言わず肩を竦め、手にした林檎を放った。逆手に、器用にそれを受け取る。此処が地獄だと言うのなら、楽園など人と交わす笑顔のしかないんだろう。低く微笑む。優しい声が出た #小景

2012-11-15 23:41:49
犬子 @27000hz

「さァね。アンタは生まれてくる前何かしでかしたりやしなかったかなぁ。覚えてはいないけれど」相手の視線が僅かに泳ぐのを捉える。「生まれてくる前のことなど知るか」原罪をもたらしたという曰くつきの果物をひと齧りして楽しそうに云う。「じゃあ、生まれた後のことはどうだろう、ねぇ?」#小景

2012-11-15 23:47:01
犬子 @27000hz

赤猫。私の中ではだらだら系。感覚キャラだから、性根のところでは快楽に弱いタイプで、そういう自分が面倒くさいなって思っている。だけどこのとおり結構な理屈屋で、言葉を弄ぶのも好きなタイプ。なんとなく浮かんだのでメモ  #小景

2012-11-15 23:51:20
犬子 @27000hz

外は雨が降っている。雨は嫌いだ。濡れるのも勿論だが、雨だれの音がどうしようもない過去を思い出させるどころか、さらに穿つから。雨は嫌いで、濡れると始末はおっくうで、おあつらえ向きなことに今日は非番だ。問題はここが自分の部屋ではないということだった。#雨の記憶

2012-11-22 23:19:43
犬子 @27000hz

だが、この寝床の主が自分を追い出すという確率はかなり低く、このまま居所寝を決めることにする。雨は嫌いだ。雨の日は何故か右肩がしくしく痛む。まるで失われた腕を恋しがって泣くように。その日もこんなただ静かなくせに否応なく染み入る降りかただったと思い出してしまう #雨の記憶

2012-11-22 23:28:01
犬子 @27000hz

『アレ』は望む世界を諦める代わりに、と自分の腕を望んだ。ひきちぎった自分の腕をひどく大事そうに抱いたまま事切れた。自分の行為を愚かだと誰もが責め、呆れ、あざ笑ったが、これでよかったのだと自分には「解った」。少々不便にはなったが、後悔はしていない #雨の記憶

2012-11-22 23:33:11
犬子 @27000hz

望んだものをつかみかけて、それを放棄し、代わりにと願われたこと自体は「なんとも思えなかった」。だが元通りに再生することは本気で要すれば恐らくは可能だったはずなのだが、そうする気にはなれなかった。取り戻してしまうことで何かを裏切ってしまうような気がして #雨の記憶

2012-11-22 23:37:33
犬子 @27000hz

そのくせ裏切るかもしれない何かが「何」であるかを突き詰める気もなかった。つきつめたら「いけないのだ」と留めるものがあった。そしてそれに従うべきだと解ってしまった。だからそれらを「扉の向こう側」に仕舞ってしまった、はずだったが、時に思い出してしまう、思考を向けてしまう #雨の記憶

2012-11-22 23:42:35
犬子 @27000hz

だから雨は嫌いだ。無くしたものが知っていた体温があることを、そこになにかしらの感慨があったことを、考えさせずにはいられない。うずくような右肩を下敷きにして横向きに丸まる。外界に向く側の耳を左手でふさぐ。自分のものではない寝具をかぶる。だが音は指の間をくぐり、心を揺らす #雨の記憶

2012-11-22 23:48:13
犬子 @27000hz

そんな自分を観察していた寝床の持ち主は「ああ…猫みたいに」とくつくつと低く笑う。彼はすでに寝床を抜け出していたのだが、出戻ることにしたらしい。もう一戦を危惧し、さらに丸まるとぷっと吹き出した。「ばかだね」とため息のように吐き出すと、そっと両手で両耳を覆ってきた #雨の記憶

2012-11-22 23:58:14
犬子 @27000hz

常には「一緒にいるのに!」と、休日返上でまとわりつくのがどうにも理解できず「別に自分の予定をこなしていていいのに」と提案しては逆切れされ、枕を投げつけられたり、押し倒されて『喰われたり』ということになるのだが。添うようにただ傍にいる体温の存在を得がたく感じた #雨の記憶

2012-11-23 10:04:34
犬子 @27000hz

常には触っていなければ、とにかく話しかけてくる(世間話に結構重要な情報を混ぜてくるが、そんなに自分の成果を安売りするなとたしなめれば、それにまた怒るのだった)彼は、ただ黙って両手で耳を包む。そういえば雨にまつわる話を彼にはしたことがない #雨の記憶

2012-11-23 10:09:30
犬子 @27000hz

様子を伺うように腕の長さの距離分、かろうじて吐息の感じられる距離分離れて、黙ってこちらを見つめている。そうやって守ってくれようとしながら、踏み込むその一歩を自分からとめてくれている、と知っている。彼は優しい。彼が自分の「真の花」だったなら、と心のどこかで思うくらいに #雨の記憶

2012-11-23 10:15:16
犬子 @27000hz

「眠っていいよ」トーンを下げて、しかし雨だれとして聞こえる音の中に、暖かい響きが一滴落ち、ためらうような吐息の後に低くやわらかくひかえめな、つぶやくような歌声が続く。「これしか知らないから」それは子守唄。自分のことを話さない程度に、彼のことも知らないと思い至る #雨の記憶

2012-11-23 10:21:24
犬子 @27000hz

子守唄を覚えるくらいには誰かに愛された記憶を持っているのだろう、ということにどこか安堵する。愛された思い出を持っている人間は強いから、もし『自分がいなくなっても』彼は大丈夫だろう。ひとフレーズを終えて「うるさい?」と少し不安げに聞いてくるのに「もう少し」と促してみる #雨の記憶

2012-11-23 10:25:56
犬子 @27000hz

子守唄とは無償の愛情、といつか誰か話していたと思い出しながら肩から力が抜けてくる。無心さを先のひとフレーズより幾分か増した歌声にそっとまぶたをおろし、目覚めるまではこの雨の記憶から守られるのだという安心を感じながら、暖かく香り始めた闇に意識をそっと沈めた #雨の記憶

2012-11-23 10:32:45
犬子 @27000hz

完全に赤猫が寝入ったら、百舌はすかさず胸に引き寄せだっこして、しばしの満足を得ると思われます(笑)。赤猫が雨が嫌いと知ってからは、館に赤猫がやってくると、るてるて坊主をそっと窓辺にぶらさげておく百舌なのでした。来てなくて降っているとしょんぼりします(かわいいね!)#雨の記憶

2012-11-23 10:38:04
犬子 @27000hz

雨の音が聞こえなくなるくらい、この心臓が脈打てばいい。自分の声と吐息と脈動以外、聞こえなくなればいい。雨の日だけじゃない、いつだってどこだって。雨の日に何があったかなんて知らない。だけど記憶などに、この気持ち、邪魔はさせない と百舌は思っていたわけです、さすが猛禽類 #雨の記憶

2012-11-23 10:42:27
犬子 @27000hz

赤猫は自分のことを自分から話すことは少ないのですが、聞かれたことなら端的に話します。失くした右腕については「痴情のもつれ、かな」と話したようです。並同僚相手だと「なんでだと思う?思ったのと思っていていいよ」というと思うので、リジルさんあたりの上位者にだと思われます #雨の記憶

2012-11-23 10:45:54
犬子 @27000hz

赤猫は雨は嫌いですが、傘で手をふさぐような無防備なことは嫌うので、雨宿りをしたがります。が、一度濡れると「もういいや」と思うひとなので黒コートをずぶずぶにして徘徊します。そのまま勤務先に戻って入ってくるのでお掃除班には地味に嫌がられています多分 #雨の記憶

2012-11-23 10:51:01