西住殿の戦車講話#1 「装甲と砲弾の歴史」

我らが隊長による戦車の装甲と砲弾の歴史のお話であります。 戦車の運用思想の変化や技術の進歩によってこの2つは大きな変遷を遂げて行ったのですねぇ。 続きはこちら(http://togetter.com/li/431429
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西住みほ @Miho_Nishizumi

ちょっとだけ戦車について呟いてみます。装甲と砲弾の歴史です。

2012-12-15 04:36:36
西住みほ @Miho_Nishizumi

初期の戦車は、戦車同士の砲撃戦を想定していませんでした。なので、砲弾は基本的に榴弾(炸薬を内蔵して、破片を周囲にばらまく砲弾)を撃てればOKでした。

2012-12-15 04:37:58
西住みほ @Miho_Nishizumi

しかし、戦車が戦場に投入されてしばらくすると、戦車を駆逐するために戦車が使われるようになります。当初は戦車に対戦車砲を搭載するなどしていましたが、戦車砲にもAP弾(徹甲弾)が用いられるようになります。

2012-12-15 04:39:34
西住みほ @Miho_Nishizumi

AP弾は、基本的には「重くて堅い砲弾を叩きつけて装甲を貫通する」という思想で設計されました。そして、初期の戦車にはそれが実際に有効でした。傾斜装甲が登場するまでは、です。

2012-12-15 04:41:01
西住みほ @Miho_Nishizumi

装甲も砲弾の発達と共に新たな物が研究・実用化されていきます。まず、装甲表面の硬度を高めてやることと、装甲に傾斜をつけてやることが行われました。傾斜装甲の登場です。

2012-12-15 04:42:53
ぷっちょの森 @diggy194

@Miho_Nishizumi 傾斜装甲は当時としては革命的だったかもしれませんね

2012-12-15 04:44:15
西住みほ @Miho_Nishizumi

傾斜装甲はAP弾に対して非常に有効でした。60度の傾斜をつけてやることで、実際の装甲厚の2倍に相当する防御力を実現することができ、なおかつ高度の高い装甲表面にAP弾が着弾したときに、弾体そのものが破壊されたり、弾かれたりするという効果が期待できました。

2012-12-15 04:45:28
西住みほ @Miho_Nishizumi

傾斜装甲を突き詰めていくと「避弾経始」という概念に到達しました。これは砲塔などにカーブをつけることで、AP弾を弾いてしまうという考え方でした。戦後の第二世代戦車までは、この設計思想が強く表れています。

2012-12-15 04:47:14
西住みほ @Miho_Nishizumi

ところが、徹甲弾の方も新たな物が使われるようになりました。APDS(装弾筒付徹甲弾)と、その発展型であるAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の登場です。これらに対して、傾斜装甲は有効ではありませんでした。

2012-12-15 04:50:01
西住みほ @Miho_Nishizumi

具体的に言うと、避弾経始を重視したT-72の砲塔上面に浅い角度で命中したM1A1のAPFSDSが、弾かれることなく装甲を浸徹し、結果T-72を撃破してしまうということが湾岸戦争で発生しました。

2012-12-15 04:52:06
西住みほ @Miho_Nishizumi

現代の戦車ではAPDSやAPFSDSに対しては複合装甲か、あるいは増加装甲によって対処することが多くなっています。レオパルド2が登場したとき、その装甲は垂直に立ったもので、「これでは避弾経始の効果が期待できない」と酷評されました。

2012-12-15 04:55:31
西住みほ @Miho_Nishizumi

しかし、実際には複合装甲により、十分な強度が得られ、避弾経始に頼る設計は過去の物になってしまった、というのが現実です。もちろん、現代の戦車でも複合装甲と同時に避弾経始を考えた設計を取り入れた戦車も存在します。

2012-12-15 04:57:29
西住みほ @Miho_Nishizumi

今日は徹甲弾とそれに対する装甲の「追いかけっこ」について呟きましたが、砲弾の種類には他にもHEAT(対戦車榴弾)やHESH(粘着榴弾)などがあり、装甲もそれに対応した発展をしています。それについてはまたいずれ。

2012-12-15 05:00:08
西住みほ @Miho_Nishizumi

@diggy194 そうですね。戦後第二世代戦車までその思想が受け継がれていたのが、傾斜装甲の有効性を示していると思います。

2012-12-15 05:06:03
ぷっちょの森 @diggy194

@Miho_Nishizumi 傾斜装甲を強く意識しているのはやっぱりロシアの戦車ですかね?戦中も戦後も

2012-12-15 05:07:32
西住みほ @Miho_Nishizumi

@diggy194 陸上自衛隊の61式戦車、74式戦車も意識してますね。ロシア戦車も現在では一部複合装甲を使用したりしているようですが、丸い砲塔に爆発反応装甲などを貼り付けた状態で使われていますね。

2012-12-15 05:12:50
ぷっちょの森 @diggy194

@Miho_Nishizumi ふと思ったのですが爆発反応装甲ってAPFSDSに対処できるんですかね?

2012-12-15 05:14:42
西住みほ @Miho_Nishizumi

@diggy194 従来型の爆発反応装甲はAPFSDSには効果がなかったようですが、ロシアの『コンタークト5』は一定の効果があるようです。

2012-12-15 05:17:57
ぷっちょの森 @diggy194

@Miho_Nishizumi なるほど、あのホタテガイなら効果ありなんですね.....いや~、勉強になります。

2012-12-15 05:21:02
西住みほ @Miho_Nishizumi

遅くなっちゃったけど、そろそろ寝ますね。夕方から寝ちゃったから眠気がやっときました。それではみなさん、おやすみなさい。

2012-12-15 05:30:27
西住みほ @Miho_Nishizumi

あ、APDSに対してはAPFDSDより傾斜装甲(避弾経始)は有効です。なぜかといいますと、APFSDSにくらべてL/D比(砲弾の全長と直径の比)が大きくとれず、跳弾を起こしやすいためです。追加訂正させていただきます。

2012-12-15 14:54:01
西住みほ @Miho_Nishizumi

砲弾の浸徹理論については、言葉だけじゃなくて数式を使って説明しなきゃいけないんだけど、そこまですると「楽しみながら聞く」っていうレベルじゃなくなっちゃうと思うので、言葉だけで簡単にすませることにします。

2012-12-15 15:08:15
西住みほ @Miho_Nishizumi

今見たんだけど、秋山さんがまとめてくれたわたしのつぶやき、5200ビューを超えてたよ……。ほんとうはもっと詳しくつぶやくべきだったのかも……。

2012-12-18 00:43:46
西住みほ @Miho_Nishizumi

HVAP弾についてもつぶやけばよかったな。これは『砲弾の貫徹力は速度の二乗に比例、質量に比例して大きくなる』という原理を逆手に取った砲弾です。どういうことかというと、質量を減らすことで砲口初速を上げてやり、結果として貫徹力を上げました。

2012-12-18 00:47:51
西住みほ @Miho_Nishizumi

特徴は近距離では高い貫徹力を発揮しますが、距離が離れると質量が低いために急激に威力が減少し、ある程度の距離からは通常の徹甲弾より貫徹力が劣るようになります。

2012-12-18 00:50:00