MOT美術館講座「“共感覚”の魅力～なぜ芸術家、教育者、心理学者は惹きつけられてきたのか－二つの世紀転換期におけるいくつかの事例を中心に－」

高橋　裕人 @seibishou

東京都現代美術館「アートと音楽」関連MOT美術館講座「"共感覚"の魅力～なぜ芸術家、教育者、心理学者は惹きつけられてきたのか」に行ってきました

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二つの世紀転換期における共感覚ブームを、事例を取り上げながら解説していました。

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講師の眞壁宏幹氏（慶應義塾大学文化部教授）はドイツ教育思想史が専門。事例もドイツから。教育的関心から子どもの絵画に言及したものが多かったです。

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共感覚ドイツの旅は、ワイマールから始まりました。

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ここで扱う共感覚はどちらかというと、広義の緩やかな共感覚でした。

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ローレンス・マークス言うところの「弱い共感覚」、感覚横断的な連想に基づく緩やかな感覚モード間の結びつきです。

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例えば高い音を聞いて、黄色や明るい色を想像する、ちょっとした経験が挙げられるでしょう。

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研究によれば、共感覚を自覚的に標榜したカンディンスキーも、MRIで証明されるような狭義の共感覚者ではなかったらしいとのこと。勿論、芸術性を否定する指摘ではありません。

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さて、話はバウハウスつながりでパウル・クレーにうつります。

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バイオリンを弾き、室内楽を楽しんだクレー。「赤のフーガ」などは音楽と美術の実験を思わせる時間性やリズムが感じられます。

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クレーは自作をカタログ化しナンバリングしたことで知られますが、それは子ども時代から始まっています。しかし、ギムナジウムの頃のリアリスティックな絵は含まれていない。

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クレーは、線描のもつ表情の面白さに関心を持っていたのではないか。バウハウスでは「散歩する線」「仕事で歩く線」などと呼んでいたらしいです。

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クレーの子ども時代の回想で、叔父のレストランのテーブルの模様を鉛筆でなぞることに夢中になったことが書かれています。

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また息子の成長を記録した「フェーリクスカレンダー」には、言語発達への関心が見てとれます。

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直感的な擬音語、擬態語に手の動きをつけて表現する。約定的言語獲得前の個人的言語が動きと視覚を伴う、「あいだの世界」を漂うのに子どもは自由です。

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大人があいだの世界へ行くには、作為的暴力が必要となります。

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クレーが作品を複数同時作成したり、切り裂いたりするのはこの行為にあたるという分析です。

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分離化によって意味のある世界を壊すことが、「色彩が私をとらえた」という有名な言葉につながるといいます。

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カッシーラーが『シンボル形式』で述べた「線描の表現性」、単に幾何学的な構成要素ではなく、内的な生命性（表情性）に触れるということの体現なのです。

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クレーと同時期、バウハウスで音楽教師をしていたゲルトルート・グルノーという人物がいます。

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バウハウスでは音楽教育がカリキュラムの基礎に位置付けられていました。

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グルノウの『感性調和化論』では、音を感受すると自然にそれに応じた動きをとるものだとされました。

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姿勢や色彩を体験する音楽の授業は、感覚統合を目指す実践であり、すべての造形活動の基礎でした。

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グルノウと共同研究をしたのがハインツ・ヴェルナーです。ここから話題はハンブルクへ。

高橋　裕人 @seibishou

グルノウとヴェルナーはハンブルク大学で、子どもを被験者として「共感覚実験」を行っていました。（資料は戦火で焼失）