- boppggun2012
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【洋書千一夜0051】Harry Mathews, Tlooth (1966)。ということで、あの毒舌Thomas M. Dischも褒めているTloothがこれ。タイトルからして、どう訳したものか…。 http://t.co/qInxd7mn
2012-12-29 14:53:12ちなみに、わたしはたしか高校のときに受けた職業適性検査で、文字盤を三段重ねにして回転させるという設定の問題だけ飛び抜けて好成績を獲得したため、「旋盤工」が向いているという結果が出たことを憶えている。現在の職業は、その潜在的な才能を活かしきれていないと言うべきか。
2012-12-29 19:07:04【洋書千一夜0052】Theodore Sturgeon, Case and the Dreamer (1974)。未訳で残っている中篇集。このうち傑作"When You Care, When You Love"を訳してみたい。 http://t.co/UwjA8lMy
2012-12-30 13:10:13【洋書千一夜0053】Vladimir Nabokov, Ada (1969)。あけましておめでとうございます。今年はなんとかこれが訳了できますように。まんまんちゃん、あん。 http://t.co/x9emV6uX
2013-01-01 02:58:49平石貴樹さんが3月に東大定年退官後は、専業で探偵小説家になるとか。テレビドラマ化されてガッポガッポ儲けるのだそうな。いいなーいいなー。わたしも定年退官後は、専業で詰将棋作家になって…全然儲からない。
2013-01-01 15:39:49【洋書千一夜0054】Denton Welch, Brave and Cruel (1948)。Sarah WatersのThe Night Watch(邦題『夜愁』)を読んで初めて知った作家。これは彼の遺作になった短篇集。 http://t.co/ahpcuD3I
2013-01-01 15:49:58『アーダ】の翻訳を抱えていると、いろいろしゃべりたいことが出てくるわけで、ときどきここでつぶやくことにする。
2013-01-02 00:49:37原書Adaの第1部の終わり、第43章の最後の一文はこうである。 When in early September Van Veen left Manhattan for Lute, he was pregnant. ええっと思うかもしれないが、この文章は誤植ではない。
2013-01-02 00:52:11この第43章では、主人公のヴァンが初めて本を書こうと思い立ち、それが出産の比喩で語られる。アイデアを思いつくのが「懐胎」で、それが「妊娠」へとつながるわけだ。そうして孕んだものは、第4部で講演というかたちで「出産」(delivery) される。
2013-01-02 00:58:02ちなみに、この第1部の最後の文章は、『ボヴァリー夫人』第1部の最後の文章「三月にトストを出発したとき、ボヴァリー夫人は妊娠していた」のパロディである。それにしても、男性が妊娠するとは、とんでもないひねり方ですね。
2013-01-02 01:01:29ところが、そこでとんでもないことが起こった。Penguinでペーパーバックになったとき、この最後の一文が誤植されて、he was pregnantの部分がshe was pregnantになってしまったのである!
2013-01-02 01:03:24どうしてそういう珍事件が起こったのか、理由は審らかではないが、想像してみれば、Penguinの編集者がhe was pregnantを明らかな誤植だと思い込み、おそらく勝手に、heをsheに直してしまったのではないか。
2013-01-02 01:06:32しかし、珍事件はこれで終わったわけではなかった。かつて出ていた邦訳『アーダ』は、おそらくこのPenguin版を底本にしたと思われる節がある。そこでPenguin版に従えば、この第1部の終わりは「彼女は妊娠していた」となるはずだ。
2013-01-02 01:13:05ところが、ここで訳者は悩んだらしい。「彼女」といっても、その女性はいったい誰だろうか、と。そこで女性の登場人物たちを眺めまわした結果、訳者は「コーデュラ」というキャラクターに白羽の矢を立てた。その結果、「コーデュラは身ごもっていた」という訳文が生まれた。かわいそうなコーデュラ!
2013-01-02 01:18:39邦訳は上下巻の二冊本で、ちょうど上巻の終わりがそこに当たる。いちばん目立つところに、誤植をもとに生まれた誤訳という珍奇なものが残ってしまったのだから。邦訳を読んだ読者は、コーデュラが生んだはずの子供はどうなったのだろうと下巻を探しただろうが、当然ながら何も出てこない。
2013-01-02 01:23:24翻訳史に残る珍事件ではないかと思う。誤植や誤訳の話が大好きなナボコフに聞かせたら大喜びしたと思うが、残念だ。
2013-01-02 01:27:37河出文庫から『ナボコフの文学講義』が再刊されました。担当者の話では、売り上げが好調なら『ロシア文学講義』の再刊も考えたい、ということなので、ぜひ売り上げにご協力のほどを。そこで、個人的な『文学講義』キャンペーンをここで少しやってみます。
2013-01-02 15:23:15ナボコフが『文学講義』の原稿を書いていたのは、コーネル大学で世界文学の講義を担当することになった1950年以降。そして、ちょうどその年に、『ロリータ』の執筆に着手します。つまり、『文学講義』と『ロリータ』は執筆時期が重なっているわけです。
2013-01-02 15:26:39そのような事情から、『文学講義』で取り上げられている作品(と、ナボコフの読み方)は、『ロリータ』にも直接的あるいは間接的な影響を及ぼしているように見受けられます。早い話が、『ロリータ』と一緒に読むと、『文学講義』は倍以上に楽しめる、というのがわたしの意見です。
2013-01-02 15:29:46影響関係がわかりやすいのは、『ボヴァリー夫人』、『失われた時を求めて』、『ユリシーズ』。これはいずれも『ロリータ』の中で直接的に言及されたり、もじりになったりしています。(たとえば、ハンバートの叔父さんはギュスターヴ、とか。)
2013-01-02 15:33:20『ジキル博士とハイド氏』も、考えようによってはハンバートのキャラクタリゼーションそのままかもしれません。昼は謹厳実直な大学教師、夜はいかがわしいニンフェット狂なのですから。(昼は大学教師、夜は詰将棋作家も似たようなものか…。)
2013-01-02 15:38:14すぐには影響関係が見えないのが、オースティンの『マンスフィールド・パーク』。しかし、『ロリータ』の根本にあるテーマが、実は『マンスフィールド・パーク』論の中に書いてあることがわかります。くわしい説明は省略しますが、ヒントとして、「スターン」とだけ言っておきましょう。
2013-01-02 15:45:06実は、わたしがおもしろいなあと思っているのは、ディケンズの『荒涼館』との関係。この小説で有名なエピソードの一つは、クルックという怪しげな登場人物が、人体自然発火(spontaneous combustion)という怪奇現象で死ぬというくだり。
2013-01-02 15:51:11