エースコンバット04×アイドルマスター2次創作「高槻やよいと黄色の13」

エースコンバット04とアイドルマスターの合体事故。空戦の墜落機により家族を失い、バーで歌うことで日銭を稼いでいた彼女に、ギターをあわせてくる男がいた。その男こそ、彼女の家族を事故とはいえ奪ったパイロット「黄色の13」だった……。というところから始まるお話。
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現場猫教授 @Dr_crowfake

バー「スカイキッド」で夜な夜な日銭のために歌声を披露する高槻やよい、そこにギターであわせてくる男がいた。彼はエルジア空軍のエース「黄色の13」だった……。という出会いから始まるAC04+アイマス2次創作を誰か。

2013-01-01 08:06:18
現場猫教授 @Dr_crowfake

黄色中隊に家族を殺されたにもかかわらず、黄色の13に心を寄せていく高槻やよい。しかし逼迫する戦局と、侵略者と戦災孤児という立場の違いが決定的な決裂を招く……(´;ω;`)ブワッ

2013-01-01 08:08:55
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしは「黄色の13」を前にした時、したためた殺意が崩れていくのを感じてしまった。「どうしたお前、歌わないのか?」そう云って、黄色の13はギターを取り出し、旋律を奏でた。「約束」。千早さんのために、みんなで一生懸命作った曲。彼がそれを弾くのに合わせて、あたしも歌い始めた。

2013-01-01 08:12:05
現場猫教授 @Dr_crowfake

「いい歌だ」黄色の13ははにかんだように笑った。「このズタズタになった世界でも、前にすすめる勇気を与えてくれる。お前の歌も気持ちが乗ってた。明日からこの店に来い。飯くらいならおごってやる」「ほんとですか!」「嘘はいわんさ」

2013-01-01 08:14:10
現場猫教授 @Dr_crowfake

そうやってスカイキッドに入り浸り、黄色の13と一緒に歌っている間に、あたしはこの人への殺意が薄れていくのに気づいた。代わりに胸に忍び込んできたのは寂しさだった。お父さんや兄弟たちを、事故とは云え殺した彼も、同じ血の通った人間だ。なのに、なんで殺し合いをしないといけないんだろう。

2013-01-01 08:17:59
現場猫教授 @Dr_crowfake

そして、あたしはそんな彼と慣れ合ってしまえる自分の都合の良さにも違和感を覚えていた。憎むことも許すこともできない宙ぶらりんの場所に、あたしは立たされていた。だけど、そうじゃない人もいた。

2013-01-01 08:19:44
現場猫教授 @Dr_crowfake

ある日、スカイキッドの閉店時刻を過ぎて出ていこうとする時、奥の部屋で店主が何かしてるのを見かけた。気になって覗いてみたら、店主はISAFの衛星通信でエルジア軍の情報を報告してるところだった。呆然とするあたしの後ろから、喉元にナイフがつきつけられた。

2013-01-01 08:22:10
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ここで見たことを、誰にも話さないで」店主の娘の声は冷たかった。「話さないよ……」「あんた、黄色の13と仲がいいじゃない。話すかもしれないから、ここで殺してしまったほうがいいかもね」彼女の台詞には憎しみがこもっていたが、ナイフの切っ先は震えていた。

2013-01-01 08:23:58
現場猫教授 @Dr_crowfake

「絶対に話しません。だから、ナイフしまってください」あたしがそう云うと、店主の娘は私を突き飛ばした。「さっさと出て置いき。あんたが深入りするようなことじゃないんだ」その通りだった。あたしは憎むことも許すこともできない中途半端さのまま、敵と関係を深めていたから。

2013-01-01 08:26:18
現場猫教授 @Dr_crowfake

その後もあたしは黄色の13と歌い続けた。彼が弾くギターは物悲しく、あたしが歌う歌すら、彼の前ではどこか悲しいものになってしまった。「どうしてそんなに寂しそうにギターを弾くんですか?」あたしは黄色の13に問うたことがある。「この戦争で、多くの友を失った。友達がいなくなれば寂しいさ」

2013-01-01 08:28:37
現場猫教授 @Dr_crowfake

その答えを聞いた時、あたしは思わず叫んでいた。「あたしも、家族を失ったんです。あなたの撃墜した飛行機が、家に落ちて!」黄色の13は愕然とした表情を見せた。そしてしばらく沈黙した後、あたしの方に手を置いていった。「すまんな。大人の勝手な争いに、お前たちを巻き込んでしまって」

2013-01-01 08:30:56
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしは黄色の13にすがりついて泣いた。彼の責任じゃないことはとっくの昔にわかってた。だけどあたしには彼を憎むしかなかったし、でもわかってたから憎みきれなかった。そして寂しかったからこそ、同じ寂しさを抱える黄色の13に惹かれたのだと、いまさらながら気づいた。

2013-01-01 08:32:46
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしはそれ以後、黄色中隊のマスコットになった。自分の気持に整理がついたから、というのもあるし、黄色の13が真実を吐露してなおあたしを遠ざけようとしなかったこともあったからだ。今思えば、それは彼なりの贖罪だったのかしれない。それでも、居場所を得られたあたしは、しばし幸せだった。

2013-01-01 08:34:23
現場猫教授 @Dr_crowfake

しかし、その時間は長く続かなかった。「こいつはいい腕だ、時間があればもっと成長するだろう」黄色の13がそう評したISAFのエース、メビウス1が活躍し始めたからだ。僚機の「黄色の4」を彼に落とされてから、黄色の13はは寡黙になり、ギターを引くことも少なくなった。

2013-01-01 08:38:04
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしは掛ける言葉を知らなかった。大事な人を失う気持ちがわかりすぎてたから、というのもあるけど、黄色の13がなにか真剣に覚悟を決めているように、そしてそれはあたしのような子供が立ち入るべきことでないように、その時は思えたから。

2013-01-01 08:39:43
現場猫教授 @Dr_crowfake

やがて解放軍がサンサルバシオンにやってくることになった。宿屋の娘はISAFの攻勢と連動したレジスタンス活動を行うつもりみたいだった。だけどあたしはそれに付き合えなかった。家族のいない故郷より、第2の家族である黄色中隊に付いて行きたかったからだ。

2013-01-01 08:41:37
現場猫教授 @Dr_crowfake

だけど「黄色の13」は首を振った。「お前は子供だ。ここから先、ずっと俺達の居場所は戦場になる。連れて行けん」「あたしにはもう居場所なんてないんです!」「だとしてもだ。解放軍が来れば、お前たちは保護される。この戦争はもう俺達の負けだ。ついてきても、いいことなんかない」

2013-01-01 08:43:40
現場猫教授 @Dr_crowfake

「あなたは……そうやって2度もあたしから家族を奪うんですか!?」あたしはそう詰った。「もうあたしにとっては黄色中隊のみんなが家族なんです! だから、置いて行かないでください!」そう主張するあたしに「黄色の13」は着ていたジャンパーを羽織らせ、そして云った。「お別れだ。元気でな」

2013-01-01 08:46:24
現場猫教授 @Dr_crowfake

「待ってください!」あたしは声を張り上げた。だけど脚は前に進まなかった。彼は今から死ににいくのだと。このまま付いて行けば、あたしはまた家族の死を目前にするのだと。それが怖くて、踏み出せなかったのだ。

2013-01-01 08:47:42
現場猫教授 @Dr_crowfake

そして黄色中隊は去り、あたしはサンサルバシオン解放軍に拾われた。ISAFの人たちに保護され、孤児院へと送られた。その後、黄色の13がファーバンティで戦死したと聞かされたが、不思議と涙は出なかった。なにか、紙切れに書いた絵空事に思えたからだ。

2013-01-01 08:49:12
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしにとっての「黄色の13」の思い出は、思いの丈を伝えた時に肩に載せられた手のひらの大きさ、連れて行ってくれと頼んだ時に羽織らされたジャンパー、そして一緒に歌った「約束」のメロディ、それに集約されていた。命は尽きても、思いは残る。それがある限り「黄色の13」は生きてると思えた。

2013-01-01 08:52:07
現場猫教授 @Dr_crowfake

あたしは時々、彼を思いながら「約束」を口ずさむことがある。「歩こう、果てない道。歌おう、そらを超えて。祈りが届くように、約束しよう、前を向くこと「Thank you for smile」」それはあたしと彼との間の約束、前を向いて、笑って、思いを通じ合わせることを誓った歌だった。

2013-01-01 08:58:59