「LSS 調査から出した甲状腺癌のリスクはチェルノブイリのそれに対して過小評価である」は本当か?ちょっと考えてみた

読んで字の如くです。
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まとめ 原子力規制委員会の「住民の健康管理のあり方に関する検討チーム」第 4 回会合まとめの問題点 原子力規制委員会が開催している「東京電力福島第一原子力発電所事故による住民の健康管理のあり方に関する検討チーム 第 4 回会合」の 「これまでの議論の整理案」 について、牧野淳一郎教授が問題点を指摘したツイートです。 WHOのチェルノブイリ健康被害レポートの問題点については、ツイートにもあるとおり岩波の「科学」1月号に寄稿されている記事に詳しく論考があります。 関連まとめ miakiza20100906さん と GoITO さんの会話(エア含む) (miakiza20100906さんが同じく第4回会合まとめの問題点を指摘しています) http://togetter.com/li/430817 4807 pv 84 2

で、これの関連まとめとして挙げられているのがこれ(私にはなぜ関連まとめとしてこれを挙げているのかよくわかりませんが)↓

まとめ miakiza20100906 さんと GoITO さんの会話(エア含む) http://togetter.com/li/430769 もあわせてお読みいただければ。 9066 pv 133 2 users 1
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(引用)「チェルノブイリでの小児甲状腺がん以外の放射線被ばくによる健康影響のエビデンスの中には統計的に十分有意なものもいくつもあるが、それらは『他の要因のせいかも』と特に具体的な根拠はあげずに述べていること。」

2013-01-04 15:36:22
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

まず、「有意」=「因果関係がある」ではないよな。チェルノブイリの場合、被災者のストレスも無視できない要因としてある。例えばこれを参照→http://t.co/lYpFxkGT 。

2013-01-04 15:36:38
まとめ 放射線によらない健康への影響(チェルノブイリ) 低線量被曝の影響の大小・有無の話は別として、現在チェルノブイリ地区で起こっている健康問題の多くは、放射線によらない経済社会因子やストレスなどの精神的な因子に由来するとされています。 これらは放射能汚染に伴なうことから、放射線の直接影響と誤解されることも多いようです。 チェルノブイリの収束作業にあたった方々やその子供たちに見られる健康への影響が、放射線の影響ではなく著しいストレスによるものだというロシア語文献をもとにした論文(総説)をロシアの科学者が出していました。その中から目についた内容をまとめました。 論文を紹介してくださった @yoshisatose さん、ありがとうございました。 16684 pv 286 7 users 15
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

例えば、普通に考えれば循環器疾患などのリスク増加は飲酒や喫煙の増加と相関するだろうし、そういった交絡要因を考慮することなく、それらのリスク増加と被曝量の間に有意な相関があったとしても、それは疑似相関である蓋然性が高いわけで。

2013-01-04 15:37:00
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、あえてそういった「疫学研究上わかりきった諸々の前提」は(前提を共有している)有識者の間での議論で取り上げられるまでもない、ということも考えられるわけだ。http://t.co/oAltTVSN まあ、不親切といえば不親切だけど。

2013-01-04 15:37:17
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、それを突っ込んだら「これらの前提については既に散々議論しました」という返答が返ってきたら牧野さん達はどういったりアクションをするのかも興味深かったりするが、それは話の本筋とはあまり関係がないのでこれ以上言及はしない。

2013-01-04 15:37:37
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(引用)「チェルノブイリの小児甲状腺がんの増加も LSS 調査からの予測とは整合的でないので、これは根拠にならないと考えるべき。逆に、チェルノブイリでの小児甲状腺がん以外のものの増加は小児甲状腺がんの増加と整合的になっている。」

2013-01-04 15:37:50
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

(引用) まあ、これは、 LSS 調査から出したリスク係数は過小評価である、ということになるわけで、そんなことを認めたくない気持ちはわかる。

2013-01-04 15:38:05
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

この論文で得られている甲状腺癌のEOR(Excess odds ratio)は1.95/Sv(95%CI=0.67-4.92)、つまり1Svの被曝で大体3倍くらい甲状腺癌が被曝時年齢0(胎児含む)~30歳の集団で55~58年間で増えている、ということ。

2013-01-04 15:38:38
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

有名なものだが、チェルノブイリの小児甲状腺癌に関するCardisらの研究 http://t.co/fdvBHYcM こちらについてはhttp://t.co/4DDAcMpmでも議論されている。

2013-01-04 15:38:51
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ここでの1GyあたりのORはモデルの置き方にもよるけど、5~8、95%CIでいうと2~17くらいのところに収まる。JAMA論文はEOR(過剰オッズ比)なので、JAMA論文のEOR値+1がこちらのORに対応する。

2013-01-04 15:39:08
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

まず研究デザインはいずれも症例対照研究(なので相対リスクや絶対リスクではなくオッズ比が出てくる)、コホート研究よりエビデンスレベルが低いのは著者も承知だが、そもそもの症例数がコホート研究で扱うには少なすぎ、という問題があるので症例対照研究を選択したわけだ。

2013-01-04 15:39:32
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

そのため、マッチングに注意を払い、調整項としてダミー変数を用いたり(JAMA)、条件付ロジスティック回帰を用いて(JNCI)、可能な限りバイアスを除くようにしている。なので、得られたオッズ比はコホート研究で得られる相対リスクに対してそこそこよい近似になっていると考えられる。

2013-01-04 15:39:52
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

勿論、JAMAの論文にもデータ取得時期が被爆後長期間の後であるということに起因する問題をはじめ、突っ込みどころはあるが、それがリスクの過小見積もりにつながることはあっても過大見積もりにはならないだろう。

2013-01-04 15:40:04
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

いずれにしても業界のトップジャーナルなのでStatistical reviewも含めた査読は厳密だし(勿論だからといって額面通りに信じてよいというわけではない)、まあ質の低いコホート研究よりはよほどエビデンスレベルとしては高いだろう。

2013-01-04 15:40:15
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、JAMAの方は被爆後約50数年時点でのオッズ比増加を見ていて、JNCIの方はチェルノブイリ事故発生後の12年後くらいの時点でのオッズ比増加を見ている。

2013-01-04 15:40:30
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

オッズ比≒相対リスクであることを考えれば、http://t.co/TsvU7DgP のFig.2から見られるように JNCIの方が1.5~2倍くらい高くなるのは到達年齢の差から考えて妥当。

2013-01-04 15:40:41
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

大体JAMAのORが3くらい、JNCIのORが5~8くらい、しかもこの時点で95%CIがかぶっている、ということを考えれば、両者の結果は整合的であると言えるわけだ。

2013-01-04 15:41:00
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

はて、 「LSS 調査から出したリスク係数は過小評価である」とか、「チェルノブイリの小児甲状腺がんの増加も LSS 調査からの予測とは整合的でないので、これは根拠にならないと考えるべき」とかはどういった根拠でその主張は可能になるんだろうか?

2013-01-04 15:41:14